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「買い占めを防止するために購入制限を設けます! 1人につきゼリーは1個まで、グミは5個までとします! それと、傷みやすいのでゼリーは今日中に、グミは明日までに食べてください! 温かい場所に置いておくと溶けてしまうので注意してください!」
俺がそう声を張り上げると、みんな少し冷静になった様子だった。
「価格はいくらですかな?」
偉い役職の人がそう訊いた。
事前に青山と相談していた値段設定では、グミは1個200ゼン、ゼリーは1個40ゼンの予定だった。しかし、この様子ならもっと強気な値段でも売れそうだ。2倍……いや3倍……いやいや、もっと高くてもいけそうだ。
「ゼリーは1個1000ゼン、グミは1個200ゼンです」
俺がそう言うと、役場の中は静まり返った。いくら何でもこの量でこの値段はさすがに高かったか? と思ったが……。
「ゼリーとグミを上限までください」
役場の偉い人が1000ゼン硬貨を2枚出してそう言った。
「ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそありがとう」
そんなやり取りを経て、役場の偉い人にゼリーとグミを渡すと、他の人達も買い始めた。様子を見ていた人も、買った人が美味しそうに食べているのを見て欲しくなったのか、結局購入してくれた。
広場に移動したときには、すでに噂が広がっていて、ゼリーとグミを載せたリヤカーの周囲に人だかりができていた。この国の人達は列を作るという意識が低いのか、ぐちゃぐちゃに集まっていた。
商品とお金のやり取りは子ども達に任せ、俺は列を形成しながら、購入制限と賞味期限と保管する際の注意事項を客に説明する係に集中することにした。
そして、奮闘すること30分。グミとゼリーが完売した。そのことを並んでいた人達に伝えると、ブーイングが起きた。
「本当にすみません! 明日もここで販売する予定なので、よろしくお願いします!」
何度もそう言って頭を下げ、やっと買えなかった人達が散っていった。
ゼリーは約200個、グミは約1000個あったので、この短時間で約40万ゼンも儲けたことになる。
疲れた……と思いながら、俺がリヤカーに寄りかかって溜め息をつくと、なぜか俺の前に子ども達が並んだ。
「まさかグミとゼリーがあんなに高いものだなんて思わなくて、今朝、お代わりしちゃってごめんなさい……」
1番年長の子が、泣きそうな顔でそう言った。詳しく話を聞いてみると、今朝、デザートに青山がグミとゼリーを出したところ、子ども達はみんな大喜びで、お代わりを欲しがり、青山に1個ずつ追加でもらっていたのだという。
「何だ、そんなことか。きみ達がいなかったら、こんなにたくさん作ることも売ることもできなかったんだから、そんなの気にしなくていいんだよ」
俺がそう言って、販売員としてのアルバイト代を渡すと、子ども達はようやく笑顔を取り戻した。
その後、俺は銀行に行き口座を開設した。身分証明書や判子は必要なかったが、代わりに両手の10個の指紋を全て押させられた。さらに、髪や瞳の色や身長など、外見的特徴まで記入させられた。暗証番号ではなく合い言葉も書類に記入させられた。そしてようやく、口座番号が記入されたカードを発行してもらえた。出金する際には口座番号以外に合い言葉も伝えて指紋を照合してもらわないといけないのだという。
とりあえず30万ゼンを入金してみたが、ウィンドウ画面の俺の所持金に変化はなかったのでホッとした。
銀行を出ると、木工職人のところに行き、ボードゲームの板を発注した。
『1の3』のグッズとして、地球ではサイリウムとかペンライトとか呼ばれている光る棒に似たものも発注した。いや、光らないから、ただの木の棒なんだけどね。棒に『1の3』というロゴマークを削ってもらい、七海、有希、心愛のイメージカラーであるピンク、パープル、オレンジに彩色するところまでやってもらえることになった。手作業なので1本につき500ゼンと高額だったが、それで契約し、前金を払った。
そして文具店でサイン色紙用の紙を買った。店主に紙を裁断してもらっているのを見ているうちに、これでトランプも作れるのではないかと思いついた。
カードゲームは、紙の繊維が荒いため、カードの裏面をよく見ると区別がついてしまうのがネックだった。ただし、それはお年玉を入れるのに使うポチ袋のようなものの表面の枠を残して切り取って、カードを袋に入れるようにすれば、問題の大部分を解決できるのではないかと思いついた。ゲームをリセットする度に、袋からカードを出して、ランダムに封入し直すようにするのだ。
それでも袋の裏面を見て区別がついてしまう問題は残るだろう。しかし、大富豪やポーカーのような、場に出した手札を手元に戻さないタイプのゲームなら、それでゲームは成立すると思った。
ポチ袋のようなものはすでに商品化されていたので、その大きさに合わせて紙を裁断してもらった。数字の判子が売っていたので、それも購入した。
市場では青山に頼まれていた食材や容器を購入し、子ども達と孤児院に戻ることにした。その途中、後ろから七海、有希、心愛の3人に声をかけられた。
「烏丸P、お疲れー」
七海が気楽な調子でそう言った。
「あれ? お前ら、新曲の練習をしてたんじゃなかったのか?」
「喉を休めるために、今は休憩中なの。その時間を利用して、化粧品を買いに行ってたんだ」
七海はそう答え、布袋を持ち上げた。
「ああ、そうだったのか。浅生さんは?」
「りっちゃんは、ヘンリーさんと演奏の練習中。ヘンリーさんに気を遣って2人きりにしてあげたのもあるけどね」
七海は意味深な口調でそう言った。
「ヘンリーとは、『エンジェルズ』で昼頃に待ち合わせてたんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、一刻も早く練習がしたいからって、孤児院まで来たんだよ。でも、あれはきっと、違う目的だよねー」
七海がそう言うと、有希と心愛も頷いた。しかし、俺には意味が分からなかった。
「違う目的って?」
「もう。烏丸Pってば、鈍いなあ。ヘンリーは律子のことが好きなんだよ」
心愛は呆れた表情でそう言った。
「えっ。そうだったのか?」
「うん。昨日の夜、私らを孤児院まで送ってくれたのも、きっと律子が心配だったからだよ」
心愛はそう答えた。
「浅生さんはそのことには気付いてるのか?」
「りっちゃんも恋愛には疎いから、気付いてないと思うなあ」
七海は悩ましげな表情でそう答えた。
「7日後には、俺達はこの世界を去ることになるんだぞ。どう転んでも、ヘンリーに待っているのは悲しい別れだけだろ? 浅生さんには婚約者がいるとか何とか適当な嘘をついて、フラグをへし折っておいた方がいいんじゃないのか?」
子ども達には聞こえないように、低い声で俺をそう言った。子ども達は俺の目が届くように、少し先を歩かせていた。
「烏丸Pって、有能だけど、効率を求めすぎるところがあるよね。こういうのはなるようにしかならないんだから、そっとしておいてあげなよ」
有希は大げさな溜め息をついてそう言った。
「うっ……。分かった。ヘンリーの件はお前らに任せることにして、俺は口を挟まないようにする」
俺はそう宣言した。
――――――――――――――――――――――
【お知らせ】
本日、作品のタイトルを変更しました。
『クラス全員が異世界に召喚されてデスゲームに巻き込まれたけど、俺は俺の道を行く』というタイトルにしていましたが、「異世界デスゲーム」をタイトルの先頭に持ってきたかったので改題しました。
俺がそう声を張り上げると、みんな少し冷静になった様子だった。
「価格はいくらですかな?」
偉い役職の人がそう訊いた。
事前に青山と相談していた値段設定では、グミは1個200ゼン、ゼリーは1個40ゼンの予定だった。しかし、この様子ならもっと強気な値段でも売れそうだ。2倍……いや3倍……いやいや、もっと高くてもいけそうだ。
「ゼリーは1個1000ゼン、グミは1個200ゼンです」
俺がそう言うと、役場の中は静まり返った。いくら何でもこの量でこの値段はさすがに高かったか? と思ったが……。
「ゼリーとグミを上限までください」
役場の偉い人が1000ゼン硬貨を2枚出してそう言った。
「ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそありがとう」
そんなやり取りを経て、役場の偉い人にゼリーとグミを渡すと、他の人達も買い始めた。様子を見ていた人も、買った人が美味しそうに食べているのを見て欲しくなったのか、結局購入してくれた。
広場に移動したときには、すでに噂が広がっていて、ゼリーとグミを載せたリヤカーの周囲に人だかりができていた。この国の人達は列を作るという意識が低いのか、ぐちゃぐちゃに集まっていた。
商品とお金のやり取りは子ども達に任せ、俺は列を形成しながら、購入制限と賞味期限と保管する際の注意事項を客に説明する係に集中することにした。
そして、奮闘すること30分。グミとゼリーが完売した。そのことを並んでいた人達に伝えると、ブーイングが起きた。
「本当にすみません! 明日もここで販売する予定なので、よろしくお願いします!」
何度もそう言って頭を下げ、やっと買えなかった人達が散っていった。
ゼリーは約200個、グミは約1000個あったので、この短時間で約40万ゼンも儲けたことになる。
疲れた……と思いながら、俺がリヤカーに寄りかかって溜め息をつくと、なぜか俺の前に子ども達が並んだ。
「まさかグミとゼリーがあんなに高いものだなんて思わなくて、今朝、お代わりしちゃってごめんなさい……」
1番年長の子が、泣きそうな顔でそう言った。詳しく話を聞いてみると、今朝、デザートに青山がグミとゼリーを出したところ、子ども達はみんな大喜びで、お代わりを欲しがり、青山に1個ずつ追加でもらっていたのだという。
「何だ、そんなことか。きみ達がいなかったら、こんなにたくさん作ることも売ることもできなかったんだから、そんなの気にしなくていいんだよ」
俺がそう言って、販売員としてのアルバイト代を渡すと、子ども達はようやく笑顔を取り戻した。
その後、俺は銀行に行き口座を開設した。身分証明書や判子は必要なかったが、代わりに両手の10個の指紋を全て押させられた。さらに、髪や瞳の色や身長など、外見的特徴まで記入させられた。暗証番号ではなく合い言葉も書類に記入させられた。そしてようやく、口座番号が記入されたカードを発行してもらえた。出金する際には口座番号以外に合い言葉も伝えて指紋を照合してもらわないといけないのだという。
とりあえず30万ゼンを入金してみたが、ウィンドウ画面の俺の所持金に変化はなかったのでホッとした。
銀行を出ると、木工職人のところに行き、ボードゲームの板を発注した。
『1の3』のグッズとして、地球ではサイリウムとかペンライトとか呼ばれている光る棒に似たものも発注した。いや、光らないから、ただの木の棒なんだけどね。棒に『1の3』というロゴマークを削ってもらい、七海、有希、心愛のイメージカラーであるピンク、パープル、オレンジに彩色するところまでやってもらえることになった。手作業なので1本につき500ゼンと高額だったが、それで契約し、前金を払った。
そして文具店でサイン色紙用の紙を買った。店主に紙を裁断してもらっているのを見ているうちに、これでトランプも作れるのではないかと思いついた。
カードゲームは、紙の繊維が荒いため、カードの裏面をよく見ると区別がついてしまうのがネックだった。ただし、それはお年玉を入れるのに使うポチ袋のようなものの表面の枠を残して切り取って、カードを袋に入れるようにすれば、問題の大部分を解決できるのではないかと思いついた。ゲームをリセットする度に、袋からカードを出して、ランダムに封入し直すようにするのだ。
それでも袋の裏面を見て区別がついてしまう問題は残るだろう。しかし、大富豪やポーカーのような、場に出した手札を手元に戻さないタイプのゲームなら、それでゲームは成立すると思った。
ポチ袋のようなものはすでに商品化されていたので、その大きさに合わせて紙を裁断してもらった。数字の判子が売っていたので、それも購入した。
市場では青山に頼まれていた食材や容器を購入し、子ども達と孤児院に戻ることにした。その途中、後ろから七海、有希、心愛の3人に声をかけられた。
「烏丸P、お疲れー」
七海が気楽な調子でそう言った。
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七海はそう答え、布袋を持ち上げた。
「ああ、そうだったのか。浅生さんは?」
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七海は意味深な口調でそう言った。
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「そうなんだけど、一刻も早く練習がしたいからって、孤児院まで来たんだよ。でも、あれはきっと、違う目的だよねー」
七海がそう言うと、有希と心愛も頷いた。しかし、俺には意味が分からなかった。
「違う目的って?」
「もう。烏丸Pってば、鈍いなあ。ヘンリーは律子のことが好きなんだよ」
心愛は呆れた表情でそう言った。
「えっ。そうだったのか?」
「うん。昨日の夜、私らを孤児院まで送ってくれたのも、きっと律子が心配だったからだよ」
心愛はそう答えた。
「浅生さんはそのことには気付いてるのか?」
「りっちゃんも恋愛には疎いから、気付いてないと思うなあ」
七海は悩ましげな表情でそう答えた。
「7日後には、俺達はこの世界を去ることになるんだぞ。どう転んでも、ヘンリーに待っているのは悲しい別れだけだろ? 浅生さんには婚約者がいるとか何とか適当な嘘をついて、フラグをへし折っておいた方がいいんじゃないのか?」
子ども達には聞こえないように、低い声で俺をそう言った。子ども達は俺の目が届くように、少し先を歩かせていた。
「烏丸Pって、有能だけど、効率を求めすぎるところがあるよね。こういうのはなるようにしかならないんだから、そっとしておいてあげなよ」
有希は大げさな溜め息をついてそう言った。
「うっ……。分かった。ヘンリーの件はお前らに任せることにして、俺は口を挟まないようにする」
俺はそう宣言した。
――――――――――――――――――――――
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本日、作品のタイトルを変更しました。
『クラス全員が異世界に召喚されてデスゲームに巻き込まれたけど、俺は俺の道を行く』というタイトルにしていましたが、「異世界デスゲーム」をタイトルの先頭に持ってきたかったので改題しました。
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