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第3章〜カイン学園編〜
第40話。神との対話
しおりを挟む 清人が忍を振り返る。その顔には心配と危機感が浮かんでいた。
「忍さん、峪口の双子、しばらく休ませらんねぇの? このまま伊吹に探り入れさせんのは危険だ」
智颯と瑞悠の二人は、恐らくターゲットであろうという立場を利用して、伊吹保輔を捜査する任務も担っている。
「そうだな、出雲に行かせるか」
忍が、ぽつりと呟いた。
ぽかんとする面々の顔を見上げて、顔を顰めた。
「忘れたか? 神在月だ。今年は旧暦が約一カ月ズレたから、そろそろ宴が始まる。頃合いとしては、ちょうどいい。梛木はもう向かったぞ」
「あ、そっか。もうそんな時期だ」
直桜は、ぽんと手を叩いた。
色々あり過ぎて、すっかり忘れていた。
「本当は直桜たちを先に行かせたかったんだがな。神具造りのため、大国主と少彦名命に助言をもらってきてほしかった」
神具は流離と修吾の浄化のために、護と清人が作らねばならない必須アイテムだ。
流離と修吾は根の国底の国に堕とした久我山あやめが発する「惟神を殺す毒」に今でも蝕まれている。
二人を救い出すためには、護の解毒術と清人の浄化術を神具に霊現化して、体に埋め込む必要がある。
そのための助言を薬祖の神である二柱に請う予定でいた。
「皆で抜ける訳にはいかないもんね。せめて二組には、分けないと」
「今年は新顔が多い。主と眷族はセットで行かせねばならんしな」
直桜と護、清人と紗月は必ずセット、ということだ。
助言を貰う算段を考慮に入れると、おのずと組分けが決まってくる。
「それだと組織犯罪対策室が全員抜けるけど、それはいいわけ?」
清人の問いに、忍が渋い顔をする。
「そこは分かれて行ってこい。組み分けは、こうだ」
近くにあった紙に、忍がさらさらと組み分けを書く。
最初が律・智颯・瑞悠組、次いで直桜・護組、最後が清人・紗月組になった。
「俺、初めてなんだけど、初めての二人で行かせる気? 忍さん、本気?」
清人が心細そうな声で縋っている。
本気で嫌そうだ。
「梛木が向こうにいるから、心配ないだろう。毎年一カ月帰ってこないから、向こうで会える」
「行き方すら、わかんないんだってば!」
「梛木じゃ、正直会えるかも微妙だよねぇ。普通に楽しんでそうだもん」
忍の提案は安心材料にはならなかったらしい。
清人と紗月の心配は的を射ていて反論も出来ない。
「……直桜、二回行ってこい」
苦肉の策といった表情で、忍が折れた。
「別にいいけど、俺が二回行くより忍が行く方がいいんじゃなの? 四季と二人で久しぶりに顔出して来たら?」
特殊係に入ってからは参加していなそうだったが、その前なら参加したこともあるだろう。神様レベルの仙人に声が掛からないはずがない。
「班長と副班長が揃って不在には出来ない。あの場所は、一度入ったらなかなか出てこられない」
(やっぱり、行ったことあるんだ。前に話した時は全く無関心だったけど)
何やら辛そうな表情だ。苦い思い出でもあるのだろうか。
「俺が一緒に行けば早く帰って来られますよ。抱えて出てきますので」
忍が四季を見上げる。
その目は、どこか照れているように見える。
「もしかしたら、前鬼も来ているかもしれません。久しぶりに、会えるかもしれませんよ」
さっき、ネットで検索した前鬼だろうか。後鬼である四季に会うのも、相当に久しぶりの様子だった。前鬼にも、きっと長いこと会っていないのだろう。
(自分で気が付いていなそうだけど、四季に会えてすごく嬉しそうに見えるもんな)
直桜たちには見せない顔を、四季には見せていると感じる。
「俺と護が離れるのもあんまり良くないと思うし、忍が清人を連れてってくれたら、俺は助かるけど。三日くらいで帰ってきてくれたらいいんじゃないの?」
直桜は護を見上げた。
「そうですね。主が神世に行くのに眷族が現世に残る訳にはいきませんから。忍班長、お願いします」
護に微笑まれて、忍は言葉を失っていた。
「良い部下に恵まれましたね、忍様。あの頃とはもう、随分と変わったようだ。今ならきっと、大丈夫ですよ」
四季の言葉に、忍は小さく息を吐き、少しだけ、笑った。
「そうだな。時には神世に遣いに行くのも悪くあるまいな」
そう話した忍の顔は安堵が昇って見えた。
「忍さん、峪口の双子、しばらく休ませらんねぇの? このまま伊吹に探り入れさせんのは危険だ」
智颯と瑞悠の二人は、恐らくターゲットであろうという立場を利用して、伊吹保輔を捜査する任務も担っている。
「そうだな、出雲に行かせるか」
忍が、ぽつりと呟いた。
ぽかんとする面々の顔を見上げて、顔を顰めた。
「忘れたか? 神在月だ。今年は旧暦が約一カ月ズレたから、そろそろ宴が始まる。頃合いとしては、ちょうどいい。梛木はもう向かったぞ」
「あ、そっか。もうそんな時期だ」
直桜は、ぽんと手を叩いた。
色々あり過ぎて、すっかり忘れていた。
「本当は直桜たちを先に行かせたかったんだがな。神具造りのため、大国主と少彦名命に助言をもらってきてほしかった」
神具は流離と修吾の浄化のために、護と清人が作らねばならない必須アイテムだ。
流離と修吾は根の国底の国に堕とした久我山あやめが発する「惟神を殺す毒」に今でも蝕まれている。
二人を救い出すためには、護の解毒術と清人の浄化術を神具に霊現化して、体に埋め込む必要がある。
そのための助言を薬祖の神である二柱に請う予定でいた。
「皆で抜ける訳にはいかないもんね。せめて二組には、分けないと」
「今年は新顔が多い。主と眷族はセットで行かせねばならんしな」
直桜と護、清人と紗月は必ずセット、ということだ。
助言を貰う算段を考慮に入れると、おのずと組分けが決まってくる。
「それだと組織犯罪対策室が全員抜けるけど、それはいいわけ?」
清人の問いに、忍が渋い顔をする。
「そこは分かれて行ってこい。組み分けは、こうだ」
近くにあった紙に、忍がさらさらと組み分けを書く。
最初が律・智颯・瑞悠組、次いで直桜・護組、最後が清人・紗月組になった。
「俺、初めてなんだけど、初めての二人で行かせる気? 忍さん、本気?」
清人が心細そうな声で縋っている。
本気で嫌そうだ。
「梛木が向こうにいるから、心配ないだろう。毎年一カ月帰ってこないから、向こうで会える」
「行き方すら、わかんないんだってば!」
「梛木じゃ、正直会えるかも微妙だよねぇ。普通に楽しんでそうだもん」
忍の提案は安心材料にはならなかったらしい。
清人と紗月の心配は的を射ていて反論も出来ない。
「……直桜、二回行ってこい」
苦肉の策といった表情で、忍が折れた。
「別にいいけど、俺が二回行くより忍が行く方がいいんじゃなの? 四季と二人で久しぶりに顔出して来たら?」
特殊係に入ってからは参加していなそうだったが、その前なら参加したこともあるだろう。神様レベルの仙人に声が掛からないはずがない。
「班長と副班長が揃って不在には出来ない。あの場所は、一度入ったらなかなか出てこられない」
(やっぱり、行ったことあるんだ。前に話した時は全く無関心だったけど)
何やら辛そうな表情だ。苦い思い出でもあるのだろうか。
「俺が一緒に行けば早く帰って来られますよ。抱えて出てきますので」
忍が四季を見上げる。
その目は、どこか照れているように見える。
「もしかしたら、前鬼も来ているかもしれません。久しぶりに、会えるかもしれませんよ」
さっき、ネットで検索した前鬼だろうか。後鬼である四季に会うのも、相当に久しぶりの様子だった。前鬼にも、きっと長いこと会っていないのだろう。
(自分で気が付いていなそうだけど、四季に会えてすごく嬉しそうに見えるもんな)
直桜たちには見せない顔を、四季には見せていると感じる。
「俺と護が離れるのもあんまり良くないと思うし、忍が清人を連れてってくれたら、俺は助かるけど。三日くらいで帰ってきてくれたらいいんじゃないの?」
直桜は護を見上げた。
「そうですね。主が神世に行くのに眷族が現世に残る訳にはいきませんから。忍班長、お願いします」
護に微笑まれて、忍は言葉を失っていた。
「良い部下に恵まれましたね、忍様。あの頃とはもう、随分と変わったようだ。今ならきっと、大丈夫ですよ」
四季の言葉に、忍は小さく息を吐き、少しだけ、笑った。
「そうだな。時には神世に遣いに行くのも悪くあるまいな」
そう話した忍の顔は安堵が昇って見えた。
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