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18.凶兆①

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私はクレティアとロイに傭兵になりたいという決意を伝えたが、予想通り結果はあまり芳しくなかった。

危ないからやめておきなさい、傭兵は思っている以上に苦しい職業なんだぞ、などなど。
分かっている。この仕事は危険であるという事も、仕事をこなすことは一筋縄ではいかないという事も……今の実力ではまだまだ未熟なことも。痛いくらいによく分かっていた。
それでもやりたいと思ってしまった。なりたいと思ってしまったのだ。初めてできた、『自分のやりたいこと』を諦めたくなかった。
それを伝えると二人は黙った。やりたいようにやってみろと言い、もしも認める程の実力をつけられたその時には――認めてやらなくもない、と渋々私に答えたのだ。

だから私は今、二人に認めてもらえるように毎日のように修練に励んでいた。
それは魔法の基本的な知識だったり、戦うための武器について、魔物についての細やかな情報、そして戦略や歴史、戦略に関わってくる地理的な事、など多岐にわたった。因みにレオンには心配を掛けないためにもまだ言っていないため、クレティアとロイに認めてもらったとしても彼の方の説得にもそれなりの時間がかかるだろう。学ぶことも多く、問題も山積み。それでも不思議と『出来ない』や『諦めたい』といった負の言葉は出てこなかった。
今回は誰の力も借りずに仕事に勉強にと毎日打ち込む日々。

そんな時だった。彼がのは――。

いつも通りに受付嬢の仕事をしていると、外がなんだか騒がしい気がした。直感的に何かが起こっているのだと察した。現に先ほどまでギルド内にいたロイやクレティアといったトップから腕利きの傭兵の何人かまでもがそのまま外に出たっきり帰ってこない。
そうして1時間ほどが経っただろうか。あれだけのメンバーが行っていれば解決してない筈がない程の時間が流れた。それでも外のざわめきは収まらない。得体の知れない何かが外にいるようで怖かった。

だから覗いてしまったのだ。外へ通じる扉の隙間からその光景を。

***

外にあったのはギルドの面々や、街の住人が入り乱れる人だかり。そしてその中心、そこにはクレティアとロイと数名の傭兵、そして彼女らと対面するように一人の男が立っていた。
その隣には、深々とマントを被ってはいるが、その雰囲気から明らかに一般人などではない男2人と、更にその背後に複数の人間たちが立っていた。共通していえるのは、向こう側に立つどの人間も明らかにピリピリとしていること。

男の太陽の光を浴びて美しく輝く癖毛の強い柔らかそうな金色の髪、そしてこのギルドを射抜くように見つめるまっすぐな紫の瞳……。

「ジブリール=ラーガレット……」

そう、そこにいたのは私の母国であるラーガレット王国の第三王子にして元・婚約者の男だった。
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