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act.4 Another Story
彼の後悔3
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一度アルファポリスのログインを再度求められるという最悪のエラーで書いていたデータが消し飛びショックで暫く続きをかけていませんでした。こんな遅くの更新になり、もしも待っていてくれた方がいらっしゃったら申し訳ありません。アスタリスク以下、本編です。若干の残酷表現的なのがあります。
****************************************************
それから暫く後の事だ。あの後何度もヴィーに会いに行って弁明したが、彼女に僕の言葉は響かなく、悲しそうに軽く微笑むだけだった。
誤解は未だに解けていないだろう。
この時ばかりは執務で彼女と会えないのは苦痛以外の何物でもなかった。第一王女が来ているせいで執務の量は増えるばかり。確実に勘違いをされているのにそれを訂正する時間すら取れない。
そうして二週間程経った頃だろうか。その時は最悪の形で訪れた。
ヴィオレッタが王女を殺したという事実を聞いたとき、そこにあったのは目の前が見えなくなるほどの空白――――。
彼女が人を殺したという事実が信じられない。何も考えられなかった。
そうして放心しているうちに僕は貴族達や隣国、その他諸々の要因に煽られ、いつの間にか彼女は僕の手によって断頭台に上がっていた。
目の前でヴィーの首が飛ぶ。最後に瞳があった時、見えたのは僕に対する何か強い感情の籠もった瞳とそれを埋め尽くすように覆い被さる恐怖だった。何かを叫んでいたようだったが、放心していた僕にはなにも聞こえなく、ただただそれを見つめていた。
それはとても非現実的でまるで悪い夢の中にでもいるかのように信じられない光景で……僕はいつの間にか断頭台まで移動し、飛んだヴィーの首を拾い、抱えていた。
傍観していた下品な貴族や平民のざわめきが聞こえたが、もう気にならない。
彼女の顔は最後の瞬間、よほど怖かったのだろう……悲痛な表情が浮かんでいた。
「まだ、暖かい……」
暖かく、ズブズブと服に染み込んでくる血。深く吸い込むと、僕が好きな彼女の髪の匂いが鼻腔の奥にこびり付く。けれど、今は少し鉄の匂いが混ざっていて少し残念だ。僕が好きな綺麗な瞳の色も既に濁り始めてしまっている。
彼女はもう、ピクリとも動かない。
それを実感した瞬間、急に現実感が湧き上がった。彼女は死んだ。一番守りたかったはずの存在の彼女が……僕の手によって、断頭台に送られて……。
僕は何をしたかったんだ?何を守りたかったんだ……?
一番守りたかったはずの存在を自分の手で失くしてしまってから気づく。それと同時に、後悔などという軽い言葉で表せないほどの深い悔恨の渦に突き落とされた。
何故僕は王子なのだろう。こんな立場、彼女が隣に並んでくれないなら何の意味もないのに……僕はその立場で結局、彼女を殺してしまったのだ。
そうして僕はいつのまにか普段から腰に携えている剣を抜いていた。その後の事は正直よく覚えていない。
けれど、最後に僕の意識が戻った時には見渡す限りの赤が広がっていた。
醜い貴族共が肉塊になって転がっている。中にはまだピクピクとまだ動いているものもあれば、完全に人の形を失い、静物と化している物……様々だった。辺りには咽返るような血の臭いと人間が死んだ時に筋肉が緩んで出る激しい糞尿の臭い混じってとんでもない悪臭となり、漂っている。
その風景に自然と笑みが浮かんだ。そうして抱えたままだった彼女の頭と向き合う。少し唇が乾いていた。
「ごめんね。今から僕もそっちに行くから……待ってて」
そう囁き、彼女に口付けを落とすと、僕は自分の命を断った。
*************
「っ――――」
息苦しさに目が醒める。全身が嫌な汗でびっしょりと濡れて嫌な感じだ。僕は……彼女を、ヴィーを喪ってそれで――――。
「アーシュ?急に飛び起きてどうしたの?」
「え……ヴィー?」
眠そうに眼を擦るヴィーがもぞりと起き上がり、僕に心配そうな顔を向ける。
彼女は死んでしまったのでは……?一瞬そんな考えが頭をよぎるが、すぐに頭の中で否定が飛ぶ。
ヴィーはあの夢の様に死んでなどいない。僕は先日彼女との結婚式を済ませ、今は執務も全て休んでの蜜月中なのだ。即ち、今は僕の人生の中で一番幸せな時期なのだ。そんな時にあんなおかしな夢を見てしまうなんて……。
「怖い夢でも見た……?」
混乱して返事らしい返事をしていなかった僕の顔を間近で覗き込んでくる愛おしい彼女の顔。そこに思わず口づけを落とした。
「んん――――っふぅ、ん……」
啄むように唇を重ね合わせ、段々と舌を入れて行為を深めていく。ヴィーはあの夢とは違い、目の前に元気な姿でいて、今も僕の愛に必死になって応えようとしてくれる。そんな彼女に更に愛しさが募り、キスを深めながらそのまま押し倒した。
「っアーシュ……?」
「眠いだろうけど、ごめんね」
「……いいよ、来て」
その言葉で全てを察したらしいヴィーが僕を受け入れてくれる。あんな未来はあり得ない……もしこの先何が起ころうとも、僕はもう絶対に彼女を離しはしないのだから。
甘えるように抱き着いてくる彼女を僕も抱きしめる……今度は決して離さないように。
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それから暫く後の事だ。あの後何度もヴィーに会いに行って弁明したが、彼女に僕の言葉は響かなく、悲しそうに軽く微笑むだけだった。
誤解は未だに解けていないだろう。
この時ばかりは執務で彼女と会えないのは苦痛以外の何物でもなかった。第一王女が来ているせいで執務の量は増えるばかり。確実に勘違いをされているのにそれを訂正する時間すら取れない。
そうして二週間程経った頃だろうか。その時は最悪の形で訪れた。
ヴィオレッタが王女を殺したという事実を聞いたとき、そこにあったのは目の前が見えなくなるほどの空白――――。
彼女が人を殺したという事実が信じられない。何も考えられなかった。
そうして放心しているうちに僕は貴族達や隣国、その他諸々の要因に煽られ、いつの間にか彼女は僕の手によって断頭台に上がっていた。
目の前でヴィーの首が飛ぶ。最後に瞳があった時、見えたのは僕に対する何か強い感情の籠もった瞳とそれを埋め尽くすように覆い被さる恐怖だった。何かを叫んでいたようだったが、放心していた僕にはなにも聞こえなく、ただただそれを見つめていた。
それはとても非現実的でまるで悪い夢の中にでもいるかのように信じられない光景で……僕はいつの間にか断頭台まで移動し、飛んだヴィーの首を拾い、抱えていた。
傍観していた下品な貴族や平民のざわめきが聞こえたが、もう気にならない。
彼女の顔は最後の瞬間、よほど怖かったのだろう……悲痛な表情が浮かんでいた。
「まだ、暖かい……」
暖かく、ズブズブと服に染み込んでくる血。深く吸い込むと、僕が好きな彼女の髪の匂いが鼻腔の奥にこびり付く。けれど、今は少し鉄の匂いが混ざっていて少し残念だ。僕が好きな綺麗な瞳の色も既に濁り始めてしまっている。
彼女はもう、ピクリとも動かない。
それを実感した瞬間、急に現実感が湧き上がった。彼女は死んだ。一番守りたかったはずの存在の彼女が……僕の手によって、断頭台に送られて……。
僕は何をしたかったんだ?何を守りたかったんだ……?
一番守りたかったはずの存在を自分の手で失くしてしまってから気づく。それと同時に、後悔などという軽い言葉で表せないほどの深い悔恨の渦に突き落とされた。
何故僕は王子なのだろう。こんな立場、彼女が隣に並んでくれないなら何の意味もないのに……僕はその立場で結局、彼女を殺してしまったのだ。
そうして僕はいつのまにか普段から腰に携えている剣を抜いていた。その後の事は正直よく覚えていない。
けれど、最後に僕の意識が戻った時には見渡す限りの赤が広がっていた。
醜い貴族共が肉塊になって転がっている。中にはまだピクピクとまだ動いているものもあれば、完全に人の形を失い、静物と化している物……様々だった。辺りには咽返るような血の臭いと人間が死んだ時に筋肉が緩んで出る激しい糞尿の臭い混じってとんでもない悪臭となり、漂っている。
その風景に自然と笑みが浮かんだ。そうして抱えたままだった彼女の頭と向き合う。少し唇が乾いていた。
「ごめんね。今から僕もそっちに行くから……待ってて」
そう囁き、彼女に口付けを落とすと、僕は自分の命を断った。
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「っ――――」
息苦しさに目が醒める。全身が嫌な汗でびっしょりと濡れて嫌な感じだ。僕は……彼女を、ヴィーを喪ってそれで――――。
「アーシュ?急に飛び起きてどうしたの?」
「え……ヴィー?」
眠そうに眼を擦るヴィーがもぞりと起き上がり、僕に心配そうな顔を向ける。
彼女は死んでしまったのでは……?一瞬そんな考えが頭をよぎるが、すぐに頭の中で否定が飛ぶ。
ヴィーはあの夢の様に死んでなどいない。僕は先日彼女との結婚式を済ませ、今は執務も全て休んでの蜜月中なのだ。即ち、今は僕の人生の中で一番幸せな時期なのだ。そんな時にあんなおかしな夢を見てしまうなんて……。
「怖い夢でも見た……?」
混乱して返事らしい返事をしていなかった僕の顔を間近で覗き込んでくる愛おしい彼女の顔。そこに思わず口づけを落とした。
「んん――――っふぅ、ん……」
啄むように唇を重ね合わせ、段々と舌を入れて行為を深めていく。ヴィーはあの夢とは違い、目の前に元気な姿でいて、今も僕の愛に必死になって応えようとしてくれる。そんな彼女に更に愛しさが募り、キスを深めながらそのまま押し倒した。
「っアーシュ……?」
「眠いだろうけど、ごめんね」
「……いいよ、来て」
その言葉で全てを察したらしいヴィーが僕を受け入れてくれる。あんな未来はあり得ない……もしこの先何が起ころうとも、僕はもう絶対に彼女を離しはしないのだから。
甘えるように抱き着いてくる彼女を僕も抱きしめる……今度は決して離さないように。
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