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act.4 Another Story

彼の後悔2

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「ヴィー、どこにいるんだい?」

そう軽く声をかけながら、温室庭園に足を踏み入れる。ここは彼女と僕が“王子として ”始めて出会った場所だ。いつ来てもあの時の彼女の事を思い出して思わず笑みがこぼれる。それくらいに僕にとって嬉しい出来事だったんだ……彼女と婚約できたという事実は。

けれど今はそんなこと考えている場合ではない。
いくら王宮内と言えど今の時間は夜だ。女性一人で出歩いて良い時間ではないのだ。
入り口付近にはいなかったことに焦って、もう少し奥の方に進んで探そうとした時のことだ。

“アシュレイ様”と急に後ろから声を掛けられた。なにかあったのかと一応後ろを振り向いた瞬間、思い切り腕を引かれる。振り向いた動作に思いがけない前方力が加わったことにより、倒れはしなかったが少しバランスを崩して前のめりになる。その瞬間、唇にほのかな甘い香りと柔らかい感触が触れた。

「出会ったばかりですが、お慕いしております」
「っ!?」

その瞬間、心の底から湧いたのは大きな嫌悪感だった。思い切り第一王女を突き飛ばしてしまう。
もう外交問題などと言うような余裕はなかった。
許せない。婚約者がいることを分かっているのにこんな行為にでてくる女性も、なによりも外交問題になるからと突き放さずにいて、油断した上こんな行為をされた自分を。僕は昔から失敗してばかりだ。……と、そこまで考えたところであることに気付く。

“ヴィオレッタはこの庭園にいるのでは?”、“まさか今の行為を見られたのでは?”と。

自分でもわかるほどに尋常じゃない量の冷や汗が背中に伝う。その時には第一王女の存在など完全に忘れて、駆け出していた。

「ヴィー!!」

そう叫んで庭園の奥まで走る。彼女は少し奥まった茂みの奥で糸が切れた人形のように座り込んでいた。すぐに彼女を抱きしめようとするが、ビクリと震えられてしまい、躊躇ってしまった。
それに、ヴィオレッタは泣いていた。どんな酷い噂が立っても気丈に振舞い、いつも笑顔でいた彼女の涙は初めて視たのだ。

「私なんかが婚約者でごめんなさい……でも、私はっ――――いえ、なんでもありません」

見られていた。ただでさえ悪い噂が立って、不安を抱えていたであろう彼女に見られてしまった。

そう、確信する。その後はすぐにヴィオレッタを抱きしめて、誤解なんだと、僕の心は全て君にあるのだと、何度も……何度も弁明したが彼女に届いたかどうかは分からない。僕はなんてことをしてしまったのだろう。最近はヴィオレッタの悪い噂が持ち上がっているせいで、ただでさえ心配だった彼女の精神に更に追い打ちをかける様なことをしてしまった。
後悔してもしきれない。
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