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act.4 Another Story
彼の後悔1
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ここからはアシュレイ視点の番外編です。補足のためのお話です。書けた時点で投稿しているので、一話一話が短いです。それをご了承の上、お読みください。続きは近い内に投稿します。
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僕の婚約者は完璧な女性だ。年下のせいか少し甘えん坊なところもあるが、そこが逆に可愛い。だから僕は彼女に初恋を捧げ、今もその恋を貫いていることを後悔していない……いや、していなかったんだ。
でも僕が20歳にるかならないかの辺りで異変は起こる。貴族たちが僕の婚約者であるヴィオレッタの悪口を急に言い始めたのだ。
“ダンスがあんなに下手くそなのに、第一王子の婚約者だなんて、恥知らずな女”
“髪と瞳の色だけで選ばれた紛い物の婚約者”
“あんな平凡な女、王妃に相応しくない”
“殿下の執務室に毎日のように入り浸っている不出来な婚約者”
“婚約者としての仕事もまともにこなすことが出来ていないのに、殿下の隣にいるなんて……殿下がお可哀そう”
確かにヴィオレッタの踊りはお世辞にも上手いとは言えないが、その他の部分は根も葉もないこと……ただの嫉妬や妬みから来た誹謗中傷だろう。
でも人間というのは醜い生き物だ……特に貴族は。
嫉妬、羨望、妬み、嫉みからその相手が自分より一つでも劣っていると判断すると徹底的に叩く。
今まで何度もそんな奴らをヴィオレッタの見ていない所で潰してきたが、まるで蛆虫のように何匹も何匹も、しつこいくらいに湧き上がってくるのだ。
現にヴィーはダンス以外はちゃんとこなしてくれていた。外交やお茶会も問題なくこなしてくれるし、時には僕の執務の合間の癒しになってくれていたんだ。僕にはそれだけで十分だった。
だから彼女にも”噂なんて気にしなくていい。皆すぐに根も葉もない噂だと気付く。だから、いつも通りでいて”……そう、言い聞かせていた。
僕の言った通りにヴィオレッタは気丈に振舞ってくれていた。僕が一緒に居られない時に夜会で聞こえる様な声で悪口を言われても、気丈に……。僕が駆けつけて様子を伺うと、”皆、こんなくだらない噂すぐに飽きるはず”とこっそりと笑顔で微笑む。見てて痛いくらいだった。何度代わってあげられたら、と思ったことだろう。
それにしても今回のこの噂の出現は急すぎて、大きな違和感がある。僕やロベールがいくら噂を潰しても、何度も出所を変えて流れ出してくるのだ。
そんな風に疑問に思っていると、あの女が現れた。アルレイシャ皇国の第一王女、キャスティリオーネ=アルレイシャ。
立場がある人間というのは厄介だ。それなりの対応をしなくてはならない。しかもアルレイシャはかなり厄介な国だ。こちらが不機嫌な顔一つでも見せれば、そこから外交問題に発展しかねない。
だから僕はできる限り笑顔を作り、第一王女に対して丁寧な対応をした。他人曰く、僕は容姿はかなり良いらしいので、こういう態度を取っていれば女性は喜ぶ……筈だ。現に第一王女は僕にずっと蕩けたような瞳を向けていた。
それはダンスの時も変わらず。確かに第一王女はダンスが目を見張るほどに上手く、踊りやすい相手ではあったがずっと顔を見られていたのでは正直気まずい。踊っている間は表情金を引き攣らせないように第一王女に関係ないことをずっと考えていた。
気を紛らわすために一番に考えるのはやはりヴィオレッタの事だ。いつか彼女にもダンスを好きになって欲しいな、とか今度は彼女とどこに遊びに行こうかな、とか……とりとめのないことを考えると、自然と笑顔になれた。
けれど予想外だったのはその後だ。社交辞令に一度第一王女とダンスを踊った後のことだ。ヴィオレッタと合流しようと彼女を探してたが、会場のどこにもいなかったのだ。
近くにいた警備の兵に聞くと、ヴィオレッタは王宮の温室庭園に行ったという話だ。何故こんな時間にそんな場所に行ったのかは分からないが、ただ事ではない気がした。自分自身の誕生日を祝う夜会などどうでもいい。
何故かダンスの後着いてきていた第一王女を無視することもできずに、王宮庭園に行かなければならない事を話したのだが、何故か彼女も一緒に行くという。
わざわざ第一王女を引きはがして行く時間すらも惜しかった僕はそのまま彼女も連れて行くことにした。
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僕の婚約者は完璧な女性だ。年下のせいか少し甘えん坊なところもあるが、そこが逆に可愛い。だから僕は彼女に初恋を捧げ、今もその恋を貫いていることを後悔していない……いや、していなかったんだ。
でも僕が20歳にるかならないかの辺りで異変は起こる。貴族たちが僕の婚約者であるヴィオレッタの悪口を急に言い始めたのだ。
“ダンスがあんなに下手くそなのに、第一王子の婚約者だなんて、恥知らずな女”
“髪と瞳の色だけで選ばれた紛い物の婚約者”
“あんな平凡な女、王妃に相応しくない”
“殿下の執務室に毎日のように入り浸っている不出来な婚約者”
“婚約者としての仕事もまともにこなすことが出来ていないのに、殿下の隣にいるなんて……殿下がお可哀そう”
確かにヴィオレッタの踊りはお世辞にも上手いとは言えないが、その他の部分は根も葉もないこと……ただの嫉妬や妬みから来た誹謗中傷だろう。
でも人間というのは醜い生き物だ……特に貴族は。
嫉妬、羨望、妬み、嫉みからその相手が自分より一つでも劣っていると判断すると徹底的に叩く。
今まで何度もそんな奴らをヴィオレッタの見ていない所で潰してきたが、まるで蛆虫のように何匹も何匹も、しつこいくらいに湧き上がってくるのだ。
現にヴィーはダンス以外はちゃんとこなしてくれていた。外交やお茶会も問題なくこなしてくれるし、時には僕の執務の合間の癒しになってくれていたんだ。僕にはそれだけで十分だった。
だから彼女にも”噂なんて気にしなくていい。皆すぐに根も葉もない噂だと気付く。だから、いつも通りでいて”……そう、言い聞かせていた。
僕の言った通りにヴィオレッタは気丈に振舞ってくれていた。僕が一緒に居られない時に夜会で聞こえる様な声で悪口を言われても、気丈に……。僕が駆けつけて様子を伺うと、”皆、こんなくだらない噂すぐに飽きるはず”とこっそりと笑顔で微笑む。見てて痛いくらいだった。何度代わってあげられたら、と思ったことだろう。
それにしても今回のこの噂の出現は急すぎて、大きな違和感がある。僕やロベールがいくら噂を潰しても、何度も出所を変えて流れ出してくるのだ。
そんな風に疑問に思っていると、あの女が現れた。アルレイシャ皇国の第一王女、キャスティリオーネ=アルレイシャ。
立場がある人間というのは厄介だ。それなりの対応をしなくてはならない。しかもアルレイシャはかなり厄介な国だ。こちらが不機嫌な顔一つでも見せれば、そこから外交問題に発展しかねない。
だから僕はできる限り笑顔を作り、第一王女に対して丁寧な対応をした。他人曰く、僕は容姿はかなり良いらしいので、こういう態度を取っていれば女性は喜ぶ……筈だ。現に第一王女は僕にずっと蕩けたような瞳を向けていた。
それはダンスの時も変わらず。確かに第一王女はダンスが目を見張るほどに上手く、踊りやすい相手ではあったがずっと顔を見られていたのでは正直気まずい。踊っている間は表情金を引き攣らせないように第一王女に関係ないことをずっと考えていた。
気を紛らわすために一番に考えるのはやはりヴィオレッタの事だ。いつか彼女にもダンスを好きになって欲しいな、とか今度は彼女とどこに遊びに行こうかな、とか……とりとめのないことを考えると、自然と笑顔になれた。
けれど予想外だったのはその後だ。社交辞令に一度第一王女とダンスを踊った後のことだ。ヴィオレッタと合流しようと彼女を探してたが、会場のどこにもいなかったのだ。
近くにいた警備の兵に聞くと、ヴィオレッタは王宮の温室庭園に行ったという話だ。何故こんな時間にそんな場所に行ったのかは分からないが、ただ事ではない気がした。自分自身の誕生日を祝う夜会などどうでもいい。
何故かダンスの後着いてきていた第一王女を無視することもできずに、王宮庭園に行かなければならない事を話したのだが、何故か彼女も一緒に行くという。
わざわざ第一王女を引きはがして行く時間すらも惜しかった僕はそのまま彼女も連れて行くことにした。
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