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act.3 Main Story
本編7
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交わしていた唇をどちらからともなく離す。
いつの間にか太陽の位置が高くなっていて、かなり長い時間二人で口付けを交わしていたという事実にお互いに赤面した。
そうして恥ずかしさを誤魔化すように取り留めのないことを話しながら森の外に向かう。
今度は手を繋いで同じペースで。
森の出口まで歩いていくと、来た時と同じ場所に兄様が待っていた。
彼は手を繋ぎながらここまで来たことを揶揄いながらも私達を祝福してくれる。揶揄われるのは気恥ずかしかったけど、兄様には感謝してもしきれない。私は彼の助言と助けがなければ私はアーシュと気持ちを通じ合わせることなど出来なかったのだから。
***
その後は目が回るくらいに忙しかった。
私とアーシュの結婚のこと、アルレイシャのこと……。
幸い王妃としての勉強面については療養中に兄様が私につけていた教師が一般常識として教育してくれていた内容がソレだったようで、これ以上学ぶことはなかった。
……ここは兄様の掌の上で転がされていた気がしないでもない。
結婚については私はもう少し先でも待てたのだが、”どうしても早く結婚したい”というアーシュの希望で父様も兄様も全面協力の元、アルレイシャの問題と同時並行で進めることになった。……とは言ってもアルレイシャの方は兄様と父様の尽力のお陰でもう殆ど片が付く目途が立って状態らしく、結婚式の方に力を注いでも問題ないそうだ。
それに結婚は元々私の気持ちが決まるまで待つという話だったようで、気持ちが完全に固まった今では進めない理由がなくなっていたから、変に気を遣わずに準備を進めて欲しいとのことだった。
ドレスやアクセサリーの準備に他国の王侯貴族への招待状の準備、来賓客への食事のメニューや引き出物、会場の装飾など決めることは多岐にわたる。ウィステリアの上層の人間の中でもかなりの数がアルレイシャの問題に駆り出されているため、本来なら私の役目ではない部分まで気を回さなければいけないのがかなり大変だった。
でもそんな大変な中、協力してくれる人たちは誰も文句を言わなかった。
アーシュはかなり人望があるようで、”アーシュの結婚式のため”となると皆進んで協力してくれたのだ。だから私も弱音を吐くわけにはいかない。だって私はもう独りではないのだから。アーシュがいてくれる。なにより彼と一緒になるための結婚式だ。その準備を共にやるとなればそれは幸せで、楽しいことに変わる。
式の予定を頭に叩き込んで、結婚式での私の一番大きな仕事である来賓たちへの挨拶を考える。
正直独りでは自信がなかったから、年上のそれも既に結婚している貴族女性たちに手伝ってもらった。私もここ数年の間、何もしていなかったわけではない。ヴァイオリン演奏で自然と作り上げられた人脈はそれなりにあったのだ。
彼女らは私の事を妹のように可愛がってくれていて、私も彼女らの事を信頼している。きっと未来視の中の私にはなかった人間関係だ。よくよく考えてみると、少しづつだが私も未来も変わっていたのだ。
私が気づいていなかっただけで……改めて私は恵まれていたんだなと感じる。
そんな周囲の手助けもありながら毎日準備をしていると、いつの間にか結婚式当日を迎えていた。
いつの間にか太陽の位置が高くなっていて、かなり長い時間二人で口付けを交わしていたという事実にお互いに赤面した。
そうして恥ずかしさを誤魔化すように取り留めのないことを話しながら森の外に向かう。
今度は手を繋いで同じペースで。
森の出口まで歩いていくと、来た時と同じ場所に兄様が待っていた。
彼は手を繋ぎながらここまで来たことを揶揄いながらも私達を祝福してくれる。揶揄われるのは気恥ずかしかったけど、兄様には感謝してもしきれない。私は彼の助言と助けがなければ私はアーシュと気持ちを通じ合わせることなど出来なかったのだから。
***
その後は目が回るくらいに忙しかった。
私とアーシュの結婚のこと、アルレイシャのこと……。
幸い王妃としての勉強面については療養中に兄様が私につけていた教師が一般常識として教育してくれていた内容がソレだったようで、これ以上学ぶことはなかった。
……ここは兄様の掌の上で転がされていた気がしないでもない。
結婚については私はもう少し先でも待てたのだが、”どうしても早く結婚したい”というアーシュの希望で父様も兄様も全面協力の元、アルレイシャの問題と同時並行で進めることになった。……とは言ってもアルレイシャの方は兄様と父様の尽力のお陰でもう殆ど片が付く目途が立って状態らしく、結婚式の方に力を注いでも問題ないそうだ。
それに結婚は元々私の気持ちが決まるまで待つという話だったようで、気持ちが完全に固まった今では進めない理由がなくなっていたから、変に気を遣わずに準備を進めて欲しいとのことだった。
ドレスやアクセサリーの準備に他国の王侯貴族への招待状の準備、来賓客への食事のメニューや引き出物、会場の装飾など決めることは多岐にわたる。ウィステリアの上層の人間の中でもかなりの数がアルレイシャの問題に駆り出されているため、本来なら私の役目ではない部分まで気を回さなければいけないのがかなり大変だった。
でもそんな大変な中、協力してくれる人たちは誰も文句を言わなかった。
アーシュはかなり人望があるようで、”アーシュの結婚式のため”となると皆進んで協力してくれたのだ。だから私も弱音を吐くわけにはいかない。だって私はもう独りではないのだから。アーシュがいてくれる。なにより彼と一緒になるための結婚式だ。その準備を共にやるとなればそれは幸せで、楽しいことに変わる。
式の予定を頭に叩き込んで、結婚式での私の一番大きな仕事である来賓たちへの挨拶を考える。
正直独りでは自信がなかったから、年上のそれも既に結婚している貴族女性たちに手伝ってもらった。私もここ数年の間、何もしていなかったわけではない。ヴァイオリン演奏で自然と作り上げられた人脈はそれなりにあったのだ。
彼女らは私の事を妹のように可愛がってくれていて、私も彼女らの事を信頼している。きっと未来視の中の私にはなかった人間関係だ。よくよく考えてみると、少しづつだが私も未来も変わっていたのだ。
私が気づいていなかっただけで……改めて私は恵まれていたんだなと感じる。
そんな周囲の手助けもありながら毎日準備をしていると、いつの間にか結婚式当日を迎えていた。
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