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act.1 The past
彼女の事情3
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客室の中、ヴィオレッタが目覚めると、寝ていたベッドの脇に彼女の父親である公爵が訪ねて来ていた。
「お父様…?謁見は終わったのですか?」
眠い目を擦りながらもヴィオレッタは質問を投げかけるが、公爵はよほどのことがあったのか顔が土気色で無言を貫く。
「本当にどうしたのですか……?」
「………………………………」
「お父様……?お父様!!」
一度目は優しく、しかし反応がなかったので二度目は強く呼びかける。そうすると、やっと反応が返ってきた。
「……ヴィオレッタ、すまない。……本当に、すまない」
俯いて謝罪を繰り返す公爵にヴィオレッタは戸惑う。
(王様との謁見で何があったの!!?王様の前で何か失敗しちゃったとか…?……まさかまさか、それが原因で爵位取り上げ、とか!!?)
爵位がなくなり、庶民になってしまった貴族の一生は悲惨だ、と。この前出席させられた母のお茶会で話題に上がった事を思い出す。
(あれ?でもその家は領民から法外な税金を徴収していた罰で爵位を取り上げされたって話だった気がする。私の家は比較的無駄遣いもしていないし、お父様がかなり大きい商業ギルドを経営しているからお金も潤沢。だから、税収もかなり少な目だっていうし、色んな領地を見たことのあるお兄様が他の領地に比べてもうちは領民からの信頼は厚いって言っていた気がする。それに、たまに街に降りても皆すごく優しくしてくれる………もし爵位を失っていても大丈夫じゃない??)
ヴィオレッタがそこまで考えた所で公爵が再び口を開いた。
「お前とこの国の第一王子・アシュレイ=ウィステリア様とのご婚約が決まった」
「………え?」
予想もしなかったことを言われて、ヴィオレッタの思考は凍り付く。いや、冷静に様々な事実をきちんと総合できていたら予測できたかもしれない。しかしヴィオレッタにとって、未来視の事もあり“婚約”という事象は縁遠いことだったのだ。
「ヴィオレッタ……?そんなにショックだったのか…………お前には本当に申し訳なく思っている。本当は断ろうとしたんだ……だが、あのバカお――コホン。国王がどうしてもと散々ごねてな。これしか言えんが本当に、お前には本当にすまなく思っている」
自身の父親にこれ以上ない程に申し訳なさそうに謝られて、思考が覚醒する。途中不敬罪に近い何かとんでもない事が聞こえそうになったが、そこまでショックを受けていないヴィオレッタ自身がいた。
事実はヴィオレッタが思っていたほど酷いものではなかった。だから、ヴィオレッタは婚約と言われてもそこまでショックではなかった。本来、貴族令嬢だったら親に婚約者を決められていて当然なのだ。貴族社会ではむしろ、両親の様な恋愛結婚の方が稀だ。
両親の良い所を再確認しながらも、ヴィオレッタは口を開く。
「少し…驚きましたが、私は大丈夫です。話に聞くと、殿下は人格者と言いますし……何故私が選ばれたかはわかりませんが、せっかく決められた婚約受け入れさせて頂きます」
その言葉に、公爵は安心すると同時に畳みかけるように言葉をかけてくる。なにより最近は“未来を視る”事は殆どなくなっている、そのこともヴィオレッタに婚約を前向きに受け入れさせる要因になっていた。
「でも婚約して何か嫌なことがあったらすぐに言うんだぞ!!すぐにこんな婚約破棄して、領地に戻るからな!!」
公爵の何故か婚約破棄を望むような声音は敢えて無視して、ヴィオレッタは婚約者になるという第一王子・アシュレイ=ウィステリアについて思いを馳せる。
(私なんかと婚約させられるなんて第一王子が少し可哀そうだけど……)
そんなことを考えながらも、未だにヴィオレッタの婚約について嘆く自身の父の様子を見ていた。
「お父様…?謁見は終わったのですか?」
眠い目を擦りながらもヴィオレッタは質問を投げかけるが、公爵はよほどのことがあったのか顔が土気色で無言を貫く。
「本当にどうしたのですか……?」
「………………………………」
「お父様……?お父様!!」
一度目は優しく、しかし反応がなかったので二度目は強く呼びかける。そうすると、やっと反応が返ってきた。
「……ヴィオレッタ、すまない。……本当に、すまない」
俯いて謝罪を繰り返す公爵にヴィオレッタは戸惑う。
(王様との謁見で何があったの!!?王様の前で何か失敗しちゃったとか…?……まさかまさか、それが原因で爵位取り上げ、とか!!?)
爵位がなくなり、庶民になってしまった貴族の一生は悲惨だ、と。この前出席させられた母のお茶会で話題に上がった事を思い出す。
(あれ?でもその家は領民から法外な税金を徴収していた罰で爵位を取り上げされたって話だった気がする。私の家は比較的無駄遣いもしていないし、お父様がかなり大きい商業ギルドを経営しているからお金も潤沢。だから、税収もかなり少な目だっていうし、色んな領地を見たことのあるお兄様が他の領地に比べてもうちは領民からの信頼は厚いって言っていた気がする。それに、たまに街に降りても皆すごく優しくしてくれる………もし爵位を失っていても大丈夫じゃない??)
ヴィオレッタがそこまで考えた所で公爵が再び口を開いた。
「お前とこの国の第一王子・アシュレイ=ウィステリア様とのご婚約が決まった」
「………え?」
予想もしなかったことを言われて、ヴィオレッタの思考は凍り付く。いや、冷静に様々な事実をきちんと総合できていたら予測できたかもしれない。しかしヴィオレッタにとって、未来視の事もあり“婚約”という事象は縁遠いことだったのだ。
「ヴィオレッタ……?そんなにショックだったのか…………お前には本当に申し訳なく思っている。本当は断ろうとしたんだ……だが、あのバカお――コホン。国王がどうしてもと散々ごねてな。これしか言えんが本当に、お前には本当にすまなく思っている」
自身の父親にこれ以上ない程に申し訳なさそうに謝られて、思考が覚醒する。途中不敬罪に近い何かとんでもない事が聞こえそうになったが、そこまでショックを受けていないヴィオレッタ自身がいた。
事実はヴィオレッタが思っていたほど酷いものではなかった。だから、ヴィオレッタは婚約と言われてもそこまでショックではなかった。本来、貴族令嬢だったら親に婚約者を決められていて当然なのだ。貴族社会ではむしろ、両親の様な恋愛結婚の方が稀だ。
両親の良い所を再確認しながらも、ヴィオレッタは口を開く。
「少し…驚きましたが、私は大丈夫です。話に聞くと、殿下は人格者と言いますし……何故私が選ばれたかはわかりませんが、せっかく決められた婚約受け入れさせて頂きます」
その言葉に、公爵は安心すると同時に畳みかけるように言葉をかけてくる。なにより最近は“未来を視る”事は殆どなくなっている、そのこともヴィオレッタに婚約を前向きに受け入れさせる要因になっていた。
「でも婚約して何か嫌なことがあったらすぐに言うんだぞ!!すぐにこんな婚約破棄して、領地に戻るからな!!」
公爵の何故か婚約破棄を望むような声音は敢えて無視して、ヴィオレッタは婚約者になるという第一王子・アシュレイ=ウィステリアについて思いを馳せる。
(私なんかと婚約させられるなんて第一王子が少し可哀そうだけど……)
そんなことを考えながらも、未だにヴィオレッタの婚約について嘆く自身の父の様子を見ていた。
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