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act.0 The prologue
プロローグ
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私は今日、大好きな婚約者の心をぽっと出の女に奪われる。
それを知ってからの四年間で“これは仕方のないこと”と諦めと共に覚悟はしてきたつもりだった。
でも、今目の前にいる彼の目が捉えるのは私ではないと思うと、寂しく悔しく恨めしい……でもなによりも悲しかった。楽しそうに話しかけてくれるあの姿も、優しく髪を梳いてくれるのも、私だけに向けてくれていたあの柔らかい微笑みも、全て今夜出会う私ではないあの女性に向くようになる。
感情を殺しきるというのは中々に上手くいかないものだ。王紋の描かれた迎えの馬車の中、彼と正面から向かい合って座っている今もドレスで隠れた足がまるで自分のものじゃないみたいに言うことを聞いてくれずにカタカタと震えていて、瞳からは涙がこぼれてしまいそう。
でも何とか泣かずに平静を保っていられるのは、今も隣についていてくれるリーシャのお陰だ。
彼女は私が昔から姉のように慕ってきた一番のメイドで、今日のドレスアップにメイクそれらは全て彼女が施してくれた…………”私はいつでもお嬢様の味方ですよ”そう言って。独りだったらもう感情の奔流に流されていたかもしれないが、こんな私にも味方でいてくれる人がいる――そう思うと、頑張らなければという感情が心の底から湧いてきた。
だから、私は彼女の愛情が詰まったこのメイクを崩さない為にも涙をこぼさずにいられるのだ。
リーシャが私の紫銀の髪に映えるといって選んでくれた純白のマーメイドラインのドレスを握って、心に次々と浮かぶ複雑な感情を堪え続けた。
そうして暫くの間馬車に揺られていると、身を前に引かれる様な感覚の後馬車が止まった。そうして、婚約者であり私の最愛の人である彼にエスコートされる…………きっと最後になるであろうエスコートを。
それを知ってからの四年間で“これは仕方のないこと”と諦めと共に覚悟はしてきたつもりだった。
でも、今目の前にいる彼の目が捉えるのは私ではないと思うと、寂しく悔しく恨めしい……でもなによりも悲しかった。楽しそうに話しかけてくれるあの姿も、優しく髪を梳いてくれるのも、私だけに向けてくれていたあの柔らかい微笑みも、全て今夜出会う私ではないあの女性に向くようになる。
感情を殺しきるというのは中々に上手くいかないものだ。王紋の描かれた迎えの馬車の中、彼と正面から向かい合って座っている今もドレスで隠れた足がまるで自分のものじゃないみたいに言うことを聞いてくれずにカタカタと震えていて、瞳からは涙がこぼれてしまいそう。
でも何とか泣かずに平静を保っていられるのは、今も隣についていてくれるリーシャのお陰だ。
彼女は私が昔から姉のように慕ってきた一番のメイドで、今日のドレスアップにメイクそれらは全て彼女が施してくれた…………”私はいつでもお嬢様の味方ですよ”そう言って。独りだったらもう感情の奔流に流されていたかもしれないが、こんな私にも味方でいてくれる人がいる――そう思うと、頑張らなければという感情が心の底から湧いてきた。
だから、私は彼女の愛情が詰まったこのメイクを崩さない為にも涙をこぼさずにいられるのだ。
リーシャが私の紫銀の髪に映えるといって選んでくれた純白のマーメイドラインのドレスを握って、心に次々と浮かぶ複雑な感情を堪え続けた。
そうして暫くの間馬車に揺られていると、身を前に引かれる様な感覚の後馬車が止まった。そうして、婚約者であり私の最愛の人である彼にエスコートされる…………きっと最後になるであろうエスコートを。
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