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結果として、カインと4位だった男子のペアに私達は勝利した。
オルトの言葉は見事に本物になったわけだ。出会った当初は3位だと揶揄いもしたが、今回は彼の実力のお陰で勝てたと言っても過言ではない。彼であればいつか本当に私やカインの実力を抜くのかもしれない。
以前オルトがカインに勝てると言った理由、そして今回本当に勝てた理由。それは彼の能力によるものだった。
オルトは、簡単に言えば『他人の魔法を強化』できるらしい。彼は魔力を他人に同調させることによって全く同じ魔力を作り出せるのだそうだ。そしてそれを使って、強制的に魔力出力機関のリミッターを解除する魔法が使えるのだと笑って言っていた。
魔導書や魔法全書でも見た事がないような珍しい魔法だ。彼の国固有のものなのかもしれない。
今回はオルトのお得意の不意打ち的にそれを交えて使った。彼の指示に従いながら、今までの私では考えられなかったような攻撃と見分けがつかないレベルのフェイント攻撃も混ぜることによって、完全にカイン達の不意を突けたのだ。
この戦いには生徒側からも感嘆の声が上がり、あのジャクリム叔父さんですら『見事だった』との感想を漏らしていた。それほどまでにお互い肉薄した戦いだった。
ギリギリで私とオルトに軍配が上がったが、再度戦えば分からない。しかし勝ちは勝ちだ。
「じゃ、勝者のオルトロス=ランドクルースとアナスタシア=シャルルメイルの両名に加点とする。で、その下のペアには点数を減らしていって加点な。3分の2より下だったやつらは精々鍛練でもしておけよ。今の内からやらねえと学年末には留年してる可能性があるぞ」
『留年』という嫌な言葉を使ってニヤニヤとした表情を浮かべるジャクリム叔父さん。彼は相変わらず性格が悪いと思う。
けれど今回1位だったからと言って、私もうかうかしていられない。カインよりも強くなることが目標だが、今下位にいる生徒が実力を伸ばそうとするのと同じ様に、今回負かしたカインはもっと実力を付けようと足掻くだろう。
ジャクリム叔父さんの言葉は下位の人間達の尻を叩くだけではなく、今回良い評価だった生徒たちもいつでも留年の危機があるという意味が込められているはずだ。
私は圧倒的な実力差をつけるまで、ずっと頑張り続けないといけない。結局、もし次の試験でカインの上にいけたとしても、私は藻掻き続けなければいけないのだ。それが生き残るということなのだと改めてここで自覚した。
なにせ私は未だ――。
「よお、シア。俺に礼の言葉は?」
「言わないわ。オルトだってカインを下せて満足したでしょう」
「っふは!それもそうだ。これからもよろしくな、相棒」
「相棒……?貴方と組むのは今回だけだけど」
「そんな冷たい事言うなよ。二人でカイン=ストレツヴェルクを下した仲だろ。最高の相性なんだからさ、俺達」
確かに戦闘面での相性は悪くはないと思う。
だがこんな厄介な男とずっと一緒にペアを組む気などない。それを向こうも思っていると考えていたのだが、その予想は外れていたようだ。
「相棒じゃない。ペア関係は今日で解消よ」
これ以上カインにオルト関連で睨まれるのもしんどい。だから、そう冷たく言い捨てて、これ以上は一緒にいないはずだった。そう。はずだったのだ――。
オルトの言葉は見事に本物になったわけだ。出会った当初は3位だと揶揄いもしたが、今回は彼の実力のお陰で勝てたと言っても過言ではない。彼であればいつか本当に私やカインの実力を抜くのかもしれない。
以前オルトがカインに勝てると言った理由、そして今回本当に勝てた理由。それは彼の能力によるものだった。
オルトは、簡単に言えば『他人の魔法を強化』できるらしい。彼は魔力を他人に同調させることによって全く同じ魔力を作り出せるのだそうだ。そしてそれを使って、強制的に魔力出力機関のリミッターを解除する魔法が使えるのだと笑って言っていた。
魔導書や魔法全書でも見た事がないような珍しい魔法だ。彼の国固有のものなのかもしれない。
今回はオルトのお得意の不意打ち的にそれを交えて使った。彼の指示に従いながら、今までの私では考えられなかったような攻撃と見分けがつかないレベルのフェイント攻撃も混ぜることによって、完全にカイン達の不意を突けたのだ。
この戦いには生徒側からも感嘆の声が上がり、あのジャクリム叔父さんですら『見事だった』との感想を漏らしていた。それほどまでにお互い肉薄した戦いだった。
ギリギリで私とオルトに軍配が上がったが、再度戦えば分からない。しかし勝ちは勝ちだ。
「じゃ、勝者のオルトロス=ランドクルースとアナスタシア=シャルルメイルの両名に加点とする。で、その下のペアには点数を減らしていって加点な。3分の2より下だったやつらは精々鍛練でもしておけよ。今の内からやらねえと学年末には留年してる可能性があるぞ」
『留年』という嫌な言葉を使ってニヤニヤとした表情を浮かべるジャクリム叔父さん。彼は相変わらず性格が悪いと思う。
けれど今回1位だったからと言って、私もうかうかしていられない。カインよりも強くなることが目標だが、今下位にいる生徒が実力を伸ばそうとするのと同じ様に、今回負かしたカインはもっと実力を付けようと足掻くだろう。
ジャクリム叔父さんの言葉は下位の人間達の尻を叩くだけではなく、今回良い評価だった生徒たちもいつでも留年の危機があるという意味が込められているはずだ。
私は圧倒的な実力差をつけるまで、ずっと頑張り続けないといけない。結局、もし次の試験でカインの上にいけたとしても、私は藻掻き続けなければいけないのだ。それが生き残るということなのだと改めてここで自覚した。
なにせ私は未だ――。
「よお、シア。俺に礼の言葉は?」
「言わないわ。オルトだってカインを下せて満足したでしょう」
「っふは!それもそうだ。これからもよろしくな、相棒」
「相棒……?貴方と組むのは今回だけだけど」
「そんな冷たい事言うなよ。二人でカイン=ストレツヴェルクを下した仲だろ。最高の相性なんだからさ、俺達」
確かに戦闘面での相性は悪くはないと思う。
だがこんな厄介な男とずっと一緒にペアを組む気などない。それを向こうも思っていると考えていたのだが、その予想は外れていたようだ。
「相棒じゃない。ペア関係は今日で解消よ」
これ以上カインにオルト関連で睨まれるのもしんどい。だから、そう冷たく言い捨てて、これ以上は一緒にいないはずだった。そう。はずだったのだ――。
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