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ヴォルフクリンゲのガイダンスを終えて。
次の日には、通常授業が始まっていた。ここからは基本的にヴォルフクリンゲまたはルナフルールに本配属となり、本来の授業が始まっていく。きっと1週間後にはルナフルールのレポートに追われた生徒たちで図書館がごった返すのだろうと、以前の事を思い出した。
さて。レポートまみれのルナフルールとは対照的に、ヴォルフクリンゲは身体能力強化と魔法を学んでいくことになる。
身体能力については、ただひたすら外を走ったり、武器を振ったり、そのうち水中戦をするために水泳の訓練も始まるらしい。……とにかく体力をつけることを中心に実践を交えながら学んでいく。
魔法は、より実践的で、出力までの速度が速いかつ破壊力が高いものを中心に学んでいくらしい。ルナフルールで学ぶような『戦闘』とは関係ない、花を咲かせたり、服を着替えたりなんて変わったものを学ぶことはない。この学科では破壊こそが全てなのだ。傍から見ればあまりにも野蛮だが。
そしてそんな授業を受け続けて、1か月が経った。
1か月ともなると、各々が持つ実力が見えてくる。今日は、少し前にあった実践試験の結果発表の日だった。
体術のランク、剣術・槍術などの武器の扱い、魔法の出力・速度。様々なものが測られ、ランク付けされる。闘技場にて、皆静かにジャクリム……先生の発表を聞いていた。
「初回の結果表だ。まあ、予想の通りだな。10位以内にも入れなかった雑魚どもはこれから修練するように」
なんとなくわかっていたこととはいえ、その結果に奥歯を噛み締める。1位に堂々とかかれていた名前はカインのものだった。そして私の名前は2位。まだ、足りない。何度も彼の体術や魔法を見て分かったが、結局は実戦経験が私はまだまだ足りないのだ。
あとどれくらいなのだろうか、私と彼の間にある実力の差は。
「そうだ。来週模擬試合を開催する。実践形式でペア戦だ。来週までにペアを組んでおくように」
その言葉で、隣に勝手に並んでいたカインからの視線が突き刺さる。
あまりにも急な予告だった。しかし必要なことだろう。戦闘は個人の実力だけではない。誰かと共に魔物を討伐したりすることもある。だから今から他人と協力することに慣れておくべき。それは分かる。
でもペアだったら、私が確実にカインから申し込まれるなんてことは分かり切っているから迷惑すぎた。だが、ジャクリム先生は一応はその辺のことも考えていた……のだと思う。説明が終わった後に注意事項が付け足された。
「あ。忘れてた。1位と2位はペアを組んじゃダメだ。めんどいから、それ以外で組むように」
その言葉にカインからの視線が私からジャクリム先生の方へ向く。射殺さんばかりの視線だった。
正直、助かった。いくら実力をつけるためとはいえ、同じ学科に入ったせいで最近はかなりの時間をカインにまとわりつかれていたのだ。そのうえペアになんてなったら、もう同棲レベルで部屋に入ってこられたり、連れ込まれたりする可能性すらあった。
「好きな子と組めないからって睨むなよ、クソガキ。そんな余裕がない態度だと女に振られるぞ」
「……別に、睨んでなんて――」
「お前は所詮、まだまだ無力で青臭いガキなんだよ。全てが自分の思い通りになって、手に入るだなんて思うなよ」
なんだかカインに向けているようで、彼以外の遠くにも向けているような奇妙な言葉だった。カインは押し黙ってしまったが、言い過ぎではないか。なんだか八つ当たりをしているようにさえ見えた。
しかし、決まったことは決まったことだ。カインとのペアは確定で回避できたので、隣で落ち込んでいる彼とは対照的に、私は上機嫌で授業を終えたのだった。
次の日には、通常授業が始まっていた。ここからは基本的にヴォルフクリンゲまたはルナフルールに本配属となり、本来の授業が始まっていく。きっと1週間後にはルナフルールのレポートに追われた生徒たちで図書館がごった返すのだろうと、以前の事を思い出した。
さて。レポートまみれのルナフルールとは対照的に、ヴォルフクリンゲは身体能力強化と魔法を学んでいくことになる。
身体能力については、ただひたすら外を走ったり、武器を振ったり、そのうち水中戦をするために水泳の訓練も始まるらしい。……とにかく体力をつけることを中心に実践を交えながら学んでいく。
魔法は、より実践的で、出力までの速度が速いかつ破壊力が高いものを中心に学んでいくらしい。ルナフルールで学ぶような『戦闘』とは関係ない、花を咲かせたり、服を着替えたりなんて変わったものを学ぶことはない。この学科では破壊こそが全てなのだ。傍から見ればあまりにも野蛮だが。
そしてそんな授業を受け続けて、1か月が経った。
1か月ともなると、各々が持つ実力が見えてくる。今日は、少し前にあった実践試験の結果発表の日だった。
体術のランク、剣術・槍術などの武器の扱い、魔法の出力・速度。様々なものが測られ、ランク付けされる。闘技場にて、皆静かにジャクリム……先生の発表を聞いていた。
「初回の結果表だ。まあ、予想の通りだな。10位以内にも入れなかった雑魚どもはこれから修練するように」
なんとなくわかっていたこととはいえ、その結果に奥歯を噛み締める。1位に堂々とかかれていた名前はカインのものだった。そして私の名前は2位。まだ、足りない。何度も彼の体術や魔法を見て分かったが、結局は実戦経験が私はまだまだ足りないのだ。
あとどれくらいなのだろうか、私と彼の間にある実力の差は。
「そうだ。来週模擬試合を開催する。実践形式でペア戦だ。来週までにペアを組んでおくように」
その言葉で、隣に勝手に並んでいたカインからの視線が突き刺さる。
あまりにも急な予告だった。しかし必要なことだろう。戦闘は個人の実力だけではない。誰かと共に魔物を討伐したりすることもある。だから今から他人と協力することに慣れておくべき。それは分かる。
でもペアだったら、私が確実にカインから申し込まれるなんてことは分かり切っているから迷惑すぎた。だが、ジャクリム先生は一応はその辺のことも考えていた……のだと思う。説明が終わった後に注意事項が付け足された。
「あ。忘れてた。1位と2位はペアを組んじゃダメだ。めんどいから、それ以外で組むように」
その言葉にカインからの視線が私からジャクリム先生の方へ向く。射殺さんばかりの視線だった。
正直、助かった。いくら実力をつけるためとはいえ、同じ学科に入ったせいで最近はかなりの時間をカインにまとわりつかれていたのだ。そのうえペアになんてなったら、もう同棲レベルで部屋に入ってこられたり、連れ込まれたりする可能性すらあった。
「好きな子と組めないからって睨むなよ、クソガキ。そんな余裕がない態度だと女に振られるぞ」
「……別に、睨んでなんて――」
「お前は所詮、まだまだ無力で青臭いガキなんだよ。全てが自分の思い通りになって、手に入るだなんて思うなよ」
なんだかカインに向けているようで、彼以外の遠くにも向けているような奇妙な言葉だった。カインは押し黙ってしまったが、言い過ぎではないか。なんだか八つ当たりをしているようにさえ見えた。
しかし、決まったことは決まったことだ。カインとのペアは確定で回避できたので、隣で落ち込んでいる彼とは対照的に、私は上機嫌で授業を終えたのだった。
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