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「さて、まずはお前……リーシャの命を救ったとも言える魔法。あれも複合魔法だ。通常の魔法では、あんなに簡単に分厚いモンスターを真っ二つには出来ない」
確かにあんな魔法は見たことがなかったと今更ながら感心する。
そう、あの時起きたこと。それは私に背中を向けて立っていたこのクライヴ先生の視線の先で、サイクロプスが綺麗に縦に真っ二つに割られていた。血が後から吹き出してくるくらいに見事な太刀筋だった。
その綺麗さから、とても鋭い刃物でも使ったのかと思ったが、魔法だったようだ。いや、本来であればあんな大きさのものを刃物で切断するなど不可能だとは思うのだが、あんな魔法は知らなかった故にそう思ってしまっていた。
「あれで使ったのは、3つだ。1つ目が目標に対して魔法でマーキングして追尾させる魔法、2つ目が風魔法、3つ目が速度強化の魔法だ」
「本来自身に使用する魔法、でも今回は自分から発する風魔法自体にそれを組み合わせることで、魔法自体が飛ばされる速度を速めて威力自体を上げた……ってことですか?」
「お前……理解速いな。その通りだ。補足するならば、あの時の速度としては音速と呼ばれる速度まで上げていた。そこに風魔法の威力だ。すごいだろう?俺のオリジナルだ。ちなみに特許も持っている。まだまだ研究が進んでいない分野だ。そもそも使える人間が少ないのもあるが……で、試してみるか?」
少し……ほんの少しだけ、面白いなと思った。
実は、魔法というものは数千、数万、記録されているだけでもこれらを越える位に種類が多い。教科書などに載っているのはほんの一部なのだ。
それらを複数個組み合わせる。その組み合わせだけでも天文学的な数値になる。
自分が想像もしていなかった、知らなかった『複合魔法』。正直、オリジナルという部分に惹かれた。だから、なんだか分からないが首が自然と縦に動いていた。
「よし!じゃあ、基礎的な魔法で試してみろ。まず、小さな炎の魔法を作り出す」
言われた通り、左手の上で浮かせるように掌くらいのサイズの火球を産み出す。初級魔法だ。
炎に恐怖心を抱いていると成功しないらしい。魔法は基本的に、想像力――イマジネーションの強さが物を言う分野である。だからその対象を怖がっていては想像どころじゃないし、なによりも想像するために必要な観察も上手くいかないのだろう。
授業で苦戦している人間は多数いた。
「で、そこに氷魔法をひょいっと出す」
「ひょいっ??」
急に変な効果音が飛んできて、疑問を口に出してしまう。なんだひょいって……と変なところに気を取られていると、氷魔法が変なところに飛んで行ってしまった。
「はい!失敗ー!!!ざまあ!!あれー?何をやっても上手くいっちゃうんじゃないんでちゅかー!!?」
「……大人げないって言われませんか?」
「言われる。惜しかったから、もう一回挑戦してみろ。すぐにだ。俺の直感的な言葉は別に考えなくていい。お前なりに今度はやってみろ」
そう言われて再度魔法に集中する。
まずは火球を生み出す。そしてそれを……火球を包み込んで融合するように重ね合わせた――。
確かにあんな魔法は見たことがなかったと今更ながら感心する。
そう、あの時起きたこと。それは私に背中を向けて立っていたこのクライヴ先生の視線の先で、サイクロプスが綺麗に縦に真っ二つに割られていた。血が後から吹き出してくるくらいに見事な太刀筋だった。
その綺麗さから、とても鋭い刃物でも使ったのかと思ったが、魔法だったようだ。いや、本来であればあんな大きさのものを刃物で切断するなど不可能だとは思うのだが、あんな魔法は知らなかった故にそう思ってしまっていた。
「あれで使ったのは、3つだ。1つ目が目標に対して魔法でマーキングして追尾させる魔法、2つ目が風魔法、3つ目が速度強化の魔法だ」
「本来自身に使用する魔法、でも今回は自分から発する風魔法自体にそれを組み合わせることで、魔法自体が飛ばされる速度を速めて威力自体を上げた……ってことですか?」
「お前……理解速いな。その通りだ。補足するならば、あの時の速度としては音速と呼ばれる速度まで上げていた。そこに風魔法の威力だ。すごいだろう?俺のオリジナルだ。ちなみに特許も持っている。まだまだ研究が進んでいない分野だ。そもそも使える人間が少ないのもあるが……で、試してみるか?」
少し……ほんの少しだけ、面白いなと思った。
実は、魔法というものは数千、数万、記録されているだけでもこれらを越える位に種類が多い。教科書などに載っているのはほんの一部なのだ。
それらを複数個組み合わせる。その組み合わせだけでも天文学的な数値になる。
自分が想像もしていなかった、知らなかった『複合魔法』。正直、オリジナルという部分に惹かれた。だから、なんだか分からないが首が自然と縦に動いていた。
「よし!じゃあ、基礎的な魔法で試してみろ。まず、小さな炎の魔法を作り出す」
言われた通り、左手の上で浮かせるように掌くらいのサイズの火球を産み出す。初級魔法だ。
炎に恐怖心を抱いていると成功しないらしい。魔法は基本的に、想像力――イマジネーションの強さが物を言う分野である。だからその対象を怖がっていては想像どころじゃないし、なによりも想像するために必要な観察も上手くいかないのだろう。
授業で苦戦している人間は多数いた。
「で、そこに氷魔法をひょいっと出す」
「ひょいっ??」
急に変な効果音が飛んできて、疑問を口に出してしまう。なんだひょいって……と変なところに気を取られていると、氷魔法が変なところに飛んで行ってしまった。
「はい!失敗ー!!!ざまあ!!あれー?何をやっても上手くいっちゃうんじゃないんでちゅかー!!?」
「……大人げないって言われませんか?」
「言われる。惜しかったから、もう一回挑戦してみろ。すぐにだ。俺の直感的な言葉は別に考えなくていい。お前なりに今度はやってみろ」
そう言われて再度魔法に集中する。
まずは火球を生み出す。そしてそれを……火球を包み込んで融合するように重ね合わせた――。
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