妹に罪を着せられて追放を言い渡されましたが、大人しく従いたいと思います

皇 翼

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倒れた状態から回復して一ヶ月。
やっとサシャから戦闘のための鍛錬をして良いとの許可が下りた。
彼は今日まで必ず時間を設けて3食の食事は必ず一緒にとることで私に会いに来てくれたが、確実に落ちているであろう筋肉の事を考えると少しそれがウザったくなり始めてきた時期だった。早く鍛えさせてくれと身体全体が苛立っていたのだ。
私の中にあったのは、このままでは弱くなってしまうという、強さに対して焦がれて居ても立ってもいられなくなるような焦燥感。図書館の本で、この国独特の戦闘の知識を付けようとしても、それを早く実践で使いたくなるだけで気が休まらなかった。職業病とでも言うべきだろうか。毎日生きるために進んでやっていた『鍛錬』という行為は私の生活の一部になっていたようだ。

そして、今日それが渋々ながらサシャの口から許可された。だから私は朝から機嫌がとても良かった。

「アリスにはまだ療養をしていて欲しかったのだが……鍛練の許可を出しただけで、こんなに可愛い笑顔を見せられるなんて複雑な気持ちだ」
「健康な身体を手に入れるには、きちんと身体を動かすべきだから!」

ちなみにここでいう健康な身体というのは、戦うことのできる健康的な身体のことである。
それに、いつまでもサシャのいう軍神化の制御とやらが出来ないというのも嫌だった。悲しいような、照れたような顔をするサシャを放って、案内された騎士たちの修練場の端で早速久しぶりに見たこの自身の大剣を握って、素振りから始めようとした――のだが。

「待ってくれ!そんな重そうな武器を振るう気か!?」
「ちょっと!?武器を奪おうとしないで!!!」

サシャは怪我をするだの、体調に障るだのと言って私から大剣を無理矢理手放させようとしてきた。
素振りを邪魔されるのもだが、武器を持ったまま押さえつけようとしてこられると彼を斬りつけてしまいそうで怖いからやめてほしい。
あまりにも心配そうにこちらを見つめながら止めてくる彼に、棲家と食事を無料で提供されていることもあって少しこちらが譲歩した方が良いのではないかという気持ちになってくる。

「……わかった、武器を離すから、サシャも私の手を離して」
「ああ、すまない。思わず握っていた」
「で、どんな武器なら握ってもいいの?」
「言うことを聞いてくれて嬉しいよ。別の武器を渡すからついてきてくれ」

そうして案内されたのは、地下にある武器庫だった。
私の持っているものよりも更に2回りほど大きい剣や、双剣、杖や盾、斧、槍などなど数え切れないほどの武器が置いてあった。
たまには別の武器を使って、それに慣れておくのも今後の役に立つだろう。そう考えると、別の武器を振るってみるのも悪くない。何を貸し出してもらえるのだろう。少しワクワクしながら、サシャに声をかけた。

「どの武器を貸し出してもらえるの?双剣?小斧?それともボウガンや弓矢みたいな遠距離用の武器?」
「何言ってるんだ?アリスが使うのはこれだ」
「は????」

そう言って差し出されたものに目を疑って、二度見した。それは、手のひらほどの刃の長さしかない小刀だったからだ。

「あんな重い剣を持つことは許さない」

サシャはそう言って、私の手に小刀を握らせたーー。
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