妹に罪を着せられて追放を言い渡されましたが、大人しく従いたいと思います

皇 翼

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意識が醒めた時に最初に感じたのは、全身に感じる気だるさと空腹、それと何かに巻き付かれているような感触。
脳が正常な思考をできるようになるまで5秒、意識が落ちるまでの記憶が戻るのに更に5秒、ここがあの街ではないと気付くまで追加で3秒という時間をたっぷり要してからやっと自分を拘束する何かに思考が向いた。
天蓋付きのベッドの上でしっかりと意識を向けてみると、私を後ろから拘束するナニカは暖かい。まるで生き物――。

「っ!」

魔力を探ると、底が見えない程に強力なものを背後にいるというのを感じて、あまりの唐突さに身体がビクリと跳ねた。
しかしその反応がいけなかったのだろう、背後の生き物の魔力が更に膨れ上がるのを感じた。目覚めたのだ。魔力の差故の恐怖心から、思わず息を深く吐きながら、寝ているふりをしてしまった。

「……まずいな、俺まで眠ってしまっていたのか」

背後のソレは聞き覚えのある声だった。あの時、街で私と対峙していたフード付きのマントで顔を隠していた男だと確信する。

「まだ目覚めない、か。増大した魔力に意識が追い付いていないだけか、それとも――」

頬を軽く撫でられる。どことなく悲痛な声だった。まるで私が眠っていることを悲しんでいるかのような。
そんな思考が浮かんだが、ありえないとすぐに頭の中で打ち消した。

そもそも私とあの男は記憶の限りあの後剣を交えたのだ。
私の魔力が膨れ上がった直後、自身の行動を阻害していたフードの男を最初に狙った。あの場で一番力を持っているだけでなく、自分を邪魔する存在だと直感した故の本能剥き出しの野蛮な攻撃。しかしそんな攻撃を男は全て防ぎ切った上で、私を制圧したのだ。

彼にとっては急に襲ってきたも同然な女の心配をすることなどあり得ない。というか私だったらしない。
分析しながら警戒している内に、男は部屋から出て行く。狸寝入りは上手くいったようだった。目の前の危機は過ぎ去ったと安堵の息を吐いた。
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