12 / 22
11.
しおりを挟む
意識が醒めた時に最初に感じたのは、全身に感じる気だるさと空腹、それと何かに巻き付かれているような感触。
脳が正常な思考をできるようになるまで5秒、意識が落ちるまでの記憶が戻るのに更に5秒、ここがあの街ではないと気付くまで追加で3秒という時間をたっぷり要してからやっと自分を拘束する何かに思考が向いた。
天蓋付きのベッドの上でしっかりと意識を向けてみると、私を後ろから拘束するナニカは暖かい。まるで生き物――。
「っ!」
魔力を探ると、底が見えない程に強力なものを背後にいるというのを感じて、あまりの唐突さに身体がビクリと跳ねた。
しかしその反応がいけなかったのだろう、背後の生き物の魔力が更に膨れ上がるのを感じた。目覚めたのだ。魔力の差故の恐怖心から、思わず息を深く吐きながら、寝ているふりをしてしまった。
「……まずいな、俺まで眠ってしまっていたのか」
背後のソレは聞き覚えのある声だった。あの時、街で私と対峙していたフード付きのマントで顔を隠していた男だと確信する。
「まだ目覚めない、か。増大した魔力に意識が追い付いていないだけか、それとも――」
頬を軽く撫でられる。どことなく悲痛な声だった。まるで私が眠っていることを悲しんでいるかのような。
そんな思考が浮かんだが、ありえないとすぐに頭の中で打ち消した。
そもそも私とあの男は記憶の限りあの後剣を交えたのだ。
私の魔力が膨れ上がった直後、自身の行動を阻害していたフードの男を最初に狙った。あの場で一番力を持っているだけでなく、自分を邪魔する存在だと直感した故の本能剥き出しの野蛮な攻撃。しかしそんな攻撃を男は全て防ぎ切った上で、私を制圧したのだ。
彼にとっては急に襲ってきたも同然な女の心配をすることなどあり得ない。というか私だったらしない。
分析しながら警戒している内に、男は部屋から出て行く。狸寝入りは上手くいったようだった。目の前の危機は過ぎ去ったと安堵の息を吐いた。
脳が正常な思考をできるようになるまで5秒、意識が落ちるまでの記憶が戻るのに更に5秒、ここがあの街ではないと気付くまで追加で3秒という時間をたっぷり要してからやっと自分を拘束する何かに思考が向いた。
天蓋付きのベッドの上でしっかりと意識を向けてみると、私を後ろから拘束するナニカは暖かい。まるで生き物――。
「っ!」
魔力を探ると、底が見えない程に強力なものを背後にいるというのを感じて、あまりの唐突さに身体がビクリと跳ねた。
しかしその反応がいけなかったのだろう、背後の生き物の魔力が更に膨れ上がるのを感じた。目覚めたのだ。魔力の差故の恐怖心から、思わず息を深く吐きながら、寝ているふりをしてしまった。
「……まずいな、俺まで眠ってしまっていたのか」
背後のソレは聞き覚えのある声だった。あの時、街で私と対峙していたフード付きのマントで顔を隠していた男だと確信する。
「まだ目覚めない、か。増大した魔力に意識が追い付いていないだけか、それとも――」
頬を軽く撫でられる。どことなく悲痛な声だった。まるで私が眠っていることを悲しんでいるかのような。
そんな思考が浮かんだが、ありえないとすぐに頭の中で打ち消した。
そもそも私とあの男は記憶の限りあの後剣を交えたのだ。
私の魔力が膨れ上がった直後、自身の行動を阻害していたフードの男を最初に狙った。あの場で一番力を持っているだけでなく、自分を邪魔する存在だと直感した故の本能剥き出しの野蛮な攻撃。しかしそんな攻撃を男は全て防ぎ切った上で、私を制圧したのだ。
彼にとっては急に襲ってきたも同然な女の心配をすることなどあり得ない。というか私だったらしない。
分析しながら警戒している内に、男は部屋から出て行く。狸寝入りは上手くいったようだった。目の前の危機は過ぎ去ったと安堵の息を吐いた。
967
お気に入りに追加
2,334
あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています



婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる