妹に罪を着せられて追放を言い渡されましたが、大人しく従いたいと思います

皇 翼

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結局。私に洗いざらい全て吐いた男にトーマスを呼びに行かせることにした。
結果から言うと、残りの襲撃者11人を人質にすることで、トーマスを連れてこさせることは成功した。
ここまでは悪くない。敵陣に乗り込むよりは呼びに行かせている間に工作をして、最低限の安全を確保したこの場所であれば、不利にはならないからだ。

そうして宿の下の階に降り、連れてこられたトーマスを見て、実のところ私は少しだけ驚いた。
連れてこられた男は一見物腰柔らかく、優しそうな平凡な老人だったからだ。けれど容姿に騙されてはいけないと気を引き締める。なにせ彼らは自分達に怪しい魔道具を付けて使役しようとしているのだ。

「面倒な問答は嫌いなので、単刀直入に言います。魔法使いたちに付けた魔道具を今すぐ外してください」
「おや、でも貴女には付いていないようですが?」

トーマスはニコリと不気味な笑顔を浮かべる。分かっていて、この男は私を馬鹿にしたように言っているのだ。何もする前から悪意があることが透けて見えた。

「自分達のために魔法が使える者に無理矢理戦わせるだなんて、この街は間違っているわ。魔法使いも貴方達と同じ、生きている人間なんですよ」
「ハッ!何を言うかと思えば。化け物を化け物と言って何が悪い。お前達魔法使いなど、所詮今だけ人間の形を取っただけの魔物だろう。死ねば人間でなくなる魔法使い化け物を実際の魔物化け物とぶつけて何が悪いんだ?」

目がカッと開き、大声で私に怒鳴りつけるように侮蔑の言葉を発する。トーマスのあまりの変わりように再び驚く。しかし主張を聞けば、そのあまりにも醜悪で自己中心的な考えだった。
魔法使いは死ねば最終的に強い魔物となるという部分は何を示しているのか意味が分からないが、彼の主張があまりにも魔法使いの人権を無視している酷いものだということだけは分かる。

「……貴方の主張は分かりました。じゃあ化け物らしく言ってあげましょう。私達魔法使いは貴方達が魔物に殺されようとどうでもいいです。弱い者は食いつくされるだけなんですから」

そう。私は立場があまりにも弱かったから、あの国から追い出された。父や国のために危険を冒して魔物を倒して、民を救い続けていたにも関わらず、誰もそれを認めてくれなかった。むしろ国の人間達はエジェリーのお陰だと言い続けて――誰もあの地獄から私を救ってくれなかった。

利用するだけ利用して、要らなくなったらゴミのように捨てる。こいつらはどれだけ勝手なことをすれば気が済むのだろう。
国から追い出されて、追い出された先に辿り着いた場所でもこんな扱いを受けて、もう自分で自分を守ることが出来ないような弱者を救う意義が私には分からなくなっていた。
もう、大切な二人……ダニエルとカノンを救えればなんでもいい。

「私を化け物と呼びましたね。じゃあお望み通りこの街の人間達を殺し尽くしてあげましょう」
「ひっ!やっぱり、やっぱり化け物なんだ!!」
「止まれ!!!」

トーマスの首に大剣の切っ先を突きつけようとした瞬間、後ろから止める声があった。その言葉に操られるように、咄嗟に身体が停止する――。

「ギリギリだったな」

私を止めたのは、扉から入って来たフードで顔を隠している見知らぬ男だった。
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