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「24匹目!」
ダニエルが2メートル近い氷柱を作り出し、魔物の上に落とす。潰された魔物は呻き声を上げる間もなく、ピシャリと重さで地面に吸い込まれた。
「はあ?何言っているんですか?ダニエルは今のでやっと23匹目です。ここにある魔物の死体は合計47。私がここの24匹を殺ったんですから」
「カノン。君こそ何を言っているんですか?僕が24匹、君が23匹で合計47匹ですよ。数も出来なくなったんですか??」
「はあ!?私が24匹ですけど??」
「あ゛あ?僕が24匹って言っていますよね??」
魔導車に群がろうとする小型の魔物を倒していたダニエルとカノンだったが、どちらが魔物を多く倒しているのかで争い始める。実はこれはアリスが管理していない時にはよく起こる出来事だった。
喧嘩してお互いに相手に攻撃魔法を放ちつつも、きちんと魔物は倒していく。そんな二人に魔導車の乗客は怯えていた。魔物以上に怯えられていたが、そんなどうでもいい事は欠片も気にせず、武器を振るう。
「はい!これで最後!!私合計25匹殺りました~」
「今ので僕が25匹目です。貴方はやっと24匹目ですよ、カノン」
「二人共、何を言い争っているの?私、喧嘩はダメって言ったよね??」
魔物という足枷がなくなり、二人の争いが更に激化しようとしていた時、乗客らにとっての救世主が現れた。
「師匠!!ダニエルが嘘を――ってすごい数の魔物の死骸」
「……なんだか貴女と魔物の1匹や2匹で言い争っていたのが馬鹿らしくなりました」
ダニエルとカノンが見た先では、アリスが倒した魔物の大群が地面を赤く染めていた。ここに二人を止めに来るまでの道中、アリスは街中の魔物を既に一掃していたのである。
二人が喧嘩していたのを軽く諫めながらも、軽く怪我をしていたカノンの傷を魔法で治療し、ダニエルに髪の毛と頬についた魔物の返り血をハンカチで拭う。
対してアリスは傷は勿論、返り血の一つもついていなかった。ノルネンツにいた頃はエジェリーによって徹底的に邪魔をされたり、功績を取られたりで見られることのなかった実力が今、まさに開花していた。
きっとあの国から解放されて、一番自由を満喫しているのはアリス自身であろう。口元に笑みすら浮かべながらも魔物を切り裂く彼女は実に優美で優雅だった。
******(人称が切り替わります)
3人で村にいた魔物を全て殲滅した後。どこに隠れていたのか、街の人間であろう者達がわらわらと家から出て来る。
「貴方達がこの魔物共を倒してくれたのですね!!まるで物語に出てくる勇者だ!」
「本当にありがとうございます。これで家から外に出られます」
「私はこの街の代表者です。貴方達に是非ともお礼をしたいのですが、受け取っていただけますか?」
様々なお礼の言葉が掛けられる。
しかし、そんな街の人たちに私達が返事をする前に、声を上げたものがいた。
「いえいえ!騎士として当然のことをしたまでですよ。それにあの程度、造作もない」
くいっと私が倒した大型の顔が複数ついた蛸のようなモンスターを指差して、そう男が言い放った。
どこにでもこういう人間はいるのだな、と思った瞬間だった。こういう他人の功績を自分のものだと主張する人間。
「……?貴方は??」
「私はこの3人の上司です。彼女達は私の的確な命令であの魔物達を倒したのです。まあ、当然、私一人でもあんな雑魚倒せましたが。今回は見せ場を譲ってあげました」
「そう、だったのですね。そんな強い方達がこの街を通りがかってくれるなんて、僕たちは幸運だ!!本当にありがとうございます」
「いえ。そんなに頭をさげないで。騎士なので、当然です」
「おい!お前、何言ってるんだ。あの大型の魔物を倒したのはア――」
「私の名前は!アンドレー=ケインストンと申します。お見知り置きを」
ダニエルの反論を打ち消すように、騎士――アンドレーと名乗った男が発言する。
ダニエルもカノンもその言動に憤るが、私としてはアンドレ―が自身らの功績を横取りしようとしていることなどはどうでも良い。結局いつものことだ。そうくだらないと感じながら、街人とアンドレーのやりとりを眺めていた。
「アリスさん!!なぜ黙っているんですか!!?」
「そうですよ!僕たちに指示を出して、魔物を殲滅したのは師匠です。あの男は少しでも安全な場所を求めて、壊れた馬車の奥へ行こうと役立たず共と一緒に這いつくばっていたくせに!!なんなんですかあのクソ野郎」
「はあ。良いのよ。それに、この街の人たちの雰囲気がなんだか……」
「雰囲気?」
「いいえ、気のせいかもしれないから気にいないで。でも二人とも、一応すぐにここを出られるように、荷物をまとめておいて」
言葉では説明できなかったが、この街の人間達が私たちに向ける視線に違和感を感じた。
なんだか街の人間達はこちらに感謝の気持ちを示しながらも、距離を取ろうとしているような、どこかそわそわしている感じがした。まるで何かを隠しているようだ。
それにダニエルとカノンには何も言っていないが、あの死体たちのことも気になった。街にはこんなにわらわらと3桁にも上るであろう程の数の人が既に出てきているのに、死体はあの二つしか見ていない。
自分達の街が襲われたというのに、戦ったのは、襲われたのはあの二人だけなのだろうか。
死と隣り合わせで、いつまで食糧も保つのか分からない。そんな状況であれば、自暴自棄になって外に出たりするという人間や、家の中でも襲われているがもっといたりしてもおかしくないと思う。だが、街の様々な家から今も沢山の人達がこの魔導車の前に集まってきている。
疑えば疑う程に、違和感を感じてしまった。
「24匹目!」
ダニエルが2メートル近い氷柱を作り出し、魔物の上に落とす。潰された魔物は呻き声を上げる間もなく、ピシャリと重さで地面に吸い込まれた。
「はあ?何言っているんですか?ダニエルは今のでやっと23匹目です。ここにある魔物の死体は合計47。私がここの24匹を殺ったんですから」
「カノン。君こそ何を言っているんですか?僕が24匹、君が23匹で合計47匹ですよ。数も出来なくなったんですか??」
「はあ!?私が24匹ですけど??」
「あ゛あ?僕が24匹って言っていますよね??」
魔導車に群がろうとする小型の魔物を倒していたダニエルとカノンだったが、どちらが魔物を多く倒しているのかで争い始める。実はこれはアリスが管理していない時にはよく起こる出来事だった。
喧嘩してお互いに相手に攻撃魔法を放ちつつも、きちんと魔物は倒していく。そんな二人に魔導車の乗客は怯えていた。魔物以上に怯えられていたが、そんなどうでもいい事は欠片も気にせず、武器を振るう。
「はい!これで最後!!私合計25匹殺りました~」
「今ので僕が25匹目です。貴方はやっと24匹目ですよ、カノン」
「二人共、何を言い争っているの?私、喧嘩はダメって言ったよね??」
魔物という足枷がなくなり、二人の争いが更に激化しようとしていた時、乗客らにとっての救世主が現れた。
「師匠!!ダニエルが嘘を――ってすごい数の魔物の死骸」
「……なんだか貴女と魔物の1匹や2匹で言い争っていたのが馬鹿らしくなりました」
ダニエルとカノンが見た先では、アリスが倒した魔物の大群が地面を赤く染めていた。ここに二人を止めに来るまでの道中、アリスは街中の魔物を既に一掃していたのである。
二人が喧嘩していたのを軽く諫めながらも、軽く怪我をしていたカノンの傷を魔法で治療し、ダニエルに髪の毛と頬についた魔物の返り血をハンカチで拭う。
対してアリスは傷は勿論、返り血の一つもついていなかった。ノルネンツにいた頃はエジェリーによって徹底的に邪魔をされたり、功績を取られたりで見られることのなかった実力が今、まさに開花していた。
きっとあの国から解放されて、一番自由を満喫しているのはアリス自身であろう。口元に笑みすら浮かべながらも魔物を切り裂く彼女は実に優美で優雅だった。
******(人称が切り替わります)
3人で村にいた魔物を全て殲滅した後。どこに隠れていたのか、街の人間であろう者達がわらわらと家から出て来る。
「貴方達がこの魔物共を倒してくれたのですね!!まるで物語に出てくる勇者だ!」
「本当にありがとうございます。これで家から外に出られます」
「私はこの街の代表者です。貴方達に是非ともお礼をしたいのですが、受け取っていただけますか?」
様々なお礼の言葉が掛けられる。
しかし、そんな街の人たちに私達が返事をする前に、声を上げたものがいた。
「いえいえ!騎士として当然のことをしたまでですよ。それにあの程度、造作もない」
くいっと私が倒した大型の顔が複数ついた蛸のようなモンスターを指差して、そう男が言い放った。
どこにでもこういう人間はいるのだな、と思った瞬間だった。こういう他人の功績を自分のものだと主張する人間。
「……?貴方は??」
「私はこの3人の上司です。彼女達は私の的確な命令であの魔物達を倒したのです。まあ、当然、私一人でもあんな雑魚倒せましたが。今回は見せ場を譲ってあげました」
「そう、だったのですね。そんな強い方達がこの街を通りがかってくれるなんて、僕たちは幸運だ!!本当にありがとうございます」
「いえ。そんなに頭をさげないで。騎士なので、当然です」
「おい!お前、何言ってるんだ。あの大型の魔物を倒したのはア――」
「私の名前は!アンドレー=ケインストンと申します。お見知り置きを」
ダニエルの反論を打ち消すように、騎士――アンドレーと名乗った男が発言する。
ダニエルもカノンもその言動に憤るが、私としてはアンドレ―が自身らの功績を横取りしようとしていることなどはどうでも良い。結局いつものことだ。そうくだらないと感じながら、街人とアンドレーのやりとりを眺めていた。
「アリスさん!!なぜ黙っているんですか!!?」
「そうですよ!僕たちに指示を出して、魔物を殲滅したのは師匠です。あの男は少しでも安全な場所を求めて、壊れた馬車の奥へ行こうと役立たず共と一緒に這いつくばっていたくせに!!なんなんですかあのクソ野郎」
「はあ。良いのよ。それに、この街の人たちの雰囲気がなんだか……」
「雰囲気?」
「いいえ、気のせいかもしれないから気にいないで。でも二人とも、一応すぐにここを出られるように、荷物をまとめておいて」
言葉では説明できなかったが、この街の人間達が私たちに向ける視線に違和感を感じた。
なんだか街の人間達はこちらに感謝の気持ちを示しながらも、距離を取ろうとしているような、どこかそわそわしている感じがした。まるで何かを隠しているようだ。
それにダニエルとカノンには何も言っていないが、あの死体たちのことも気になった。街にはこんなにわらわらと3桁にも上るであろう程の数の人が既に出てきているのに、死体はあの二つしか見ていない。
自分達の街が襲われたというのに、戦ったのは、襲われたのはあの二人だけなのだろうか。
死と隣り合わせで、いつまで食糧も保つのか分からない。そんな状況であれば、自暴自棄になって外に出たりするという人間や、家の中でも襲われているがもっといたりしてもおかしくないと思う。だが、街の様々な家から今も沢山の人達がこの魔導車の前に集まってきている。
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