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「もーー!本当に心配したんですからね。僕にもイリスにすらも何も言わずにどこかに行ってしまうなんて、酷いです。父さんも物凄く心配して怒ってたんですからね……それに彼も」
「それに関しては本当にごめんなさい!私が全面的に悪かったです。だからダリアに突き出すのだけは、ご勘弁をっ!!」
街で出会った後。少し話をしたいと言われたため、近くに会ったカフェに入る。ロジーはコーヒーをフェリシアはダージリンティーをそれぞれ注文した直後、ロジーが耐え切れないというように話し始めたのだった。
ロジーの言葉の最後の方は小声だったためによく聞こえなかったが、連絡不行き届きでブチ切れているダリアなら容易に想像でき、内心恐怖で震える。
正直ダリアの怒りが怖すぎて、出来れば彼だけには一生再会したくないという酷い事まで思ってしまう。フェリシアの自業自得ではあるのだが。
「……まあ、良いです。貴女が無事に帰ってきてくれたので許します。父さんにもあまり怒らないように進言しておきますね。本当に僕ってフェリシアさんには甘いですよねー」
「ロジー、ありがとう」
「それでフェリシアさん。さっきは何をしていたのですか?なんだか怪しい人物に見えましたよ。怪しい人間がいるから声を掛けようとしたのに、それがフェリシアさんだった時の僕の驚きといったらもう」
「うぅ、怪しい人間……」
少し前にも幼馴染に殆ど同じことを言われたことを思い出し、地味に傷つく。
そんなに怪しい行動をとっていたか、と思い出してみるがそんなつもりは毛頭ない。フェリシアは無意識だった。それだけに尋常でない程に心に二人の言葉が突き刺さってしまったのだ。怪しいなどと知り合いに言われて嬉しい人間などいないのだ。
「ん?どうかしたんですか?」
「……なんでもない。それで何をしていたか、だけど――簡単に言えば情報収集よ」
「情報収集?」
「そのなんだか街全体が浮足立っている様な気がして気になっちゃって、道端で噂をしていたご婦人方の噂話を盗み聞きしていたというかなんというか――」
「へえ。それで?何かわかりましたか?」
「えっとね、違ったら否定して欲しいんだけど――」
帰ってから王都にずっといる筈のロジーならばきっと街での噂やその本当の原因について知っているだろう。丁度良いとフェリシアは思い、今後の自身がどうするかの心積もりをしておくためにも、今までの事情から先程頭の中で出来てしまった仮説までを話し始めた。
少し受け止めきれない事があり、王都から暫く離れてディランの実家の領地に世話になっていた事。そこで色んな人と接することで心に余裕ができ、ようやく向き合う覚悟が出来たため、今日王都に戻ってきたこと。そして帰ってきた直後に聞いた噂などを総合して導き出されたフェリシアの仮説を――。
「っぶ!あははははははははは――も、え、それ本気で、ふふ、言ってるんですか、フェリシアさんっ」
結論から言おう。フェリシアの話を聞いたロジーは今までにない程に笑い転げていた。カフェの硬質な机にその綺麗な顔を打ち付け、何とか笑いを堪えようとしているが、効果は全くないようだ。
「そんな笑う……?こっちは大真面目なんだけど!?」
「っ~~~!!やめて、これ以上笑わせないでっ!!……ふふふっ、これじゃあ、あの人に同情してしまう」
「あの人?」
「はああぁ。笑った……それでフェリシアさん、貴女今何徹目ですか?」
「……3日」
「うわー。それは、うん」
若干過呼吸になりそうな程に笑い飛ばしたロジーを冷ややかな瞳で見つめながら応答する。『あの人』という単語が気になりはしたが、向こうが別の話題で切り返してきたため、答える気はないようだと判断して質問に答えた。
真面目に答えたのに、まるで可哀そうなモノでも見るような瞳で見つめられてしまった。こちらは元より大真面目で、ユリウスの性癖に動揺し過ぎて冷静じゃなくなりかけていたというのに。
「とにかく言えるのは、ユリウスさんと王太子様――カルディナ様はそんな関係性ではありませんよ」
「え、そうなの?」
「それにしても悉く誤解していましたね。フェリシアさんは相変わらず面白いです……本当一緒に居て飽きないな~」
「それは――ありがとう?」
でもこれでは話は初めに戻っただけだ。ユリウスが指輪を渡そうとしていた相手については未だ解決していないのである。その疑問は別の形となって口から零れ出た。二人の様子を聞けば、自ずと答えが出ると思ったからである。
「もう一つ聞きたいんだけど、ここ最近ユリウスとイリスはどうしてる?」
「ユリウスさんはひたすら落ち込んで、イリスも貴女の行方を泣きながら探していました。この二人に関してはちゃんと会って、責任取ってあげてくださいね……特にユリウスさんの方」
「それは――そのつもりで帰ってきたから、願ってもない事だけど」
二人共幸せオーラ全開というわけでもない所に疑問が落ちる。何故そんなにも落ち込んでいるのかは分からないが、元よりそのつもりだ。
「でも!一度寝てから会う事!!貴女の今の思考、かなりやばいですよ」
「……はい」
年下に諭される年上ってどうなんだ、と思いつつも先程ロジーに散々笑われたことも記憶に新しいため、フェリシアは素直に頷いたのだった。
「それに関しては本当にごめんなさい!私が全面的に悪かったです。だからダリアに突き出すのだけは、ご勘弁をっ!!」
街で出会った後。少し話をしたいと言われたため、近くに会ったカフェに入る。ロジーはコーヒーをフェリシアはダージリンティーをそれぞれ注文した直後、ロジーが耐え切れないというように話し始めたのだった。
ロジーの言葉の最後の方は小声だったためによく聞こえなかったが、連絡不行き届きでブチ切れているダリアなら容易に想像でき、内心恐怖で震える。
正直ダリアの怒りが怖すぎて、出来れば彼だけには一生再会したくないという酷い事まで思ってしまう。フェリシアの自業自得ではあるのだが。
「……まあ、良いです。貴女が無事に帰ってきてくれたので許します。父さんにもあまり怒らないように進言しておきますね。本当に僕ってフェリシアさんには甘いですよねー」
「ロジー、ありがとう」
「それでフェリシアさん。さっきは何をしていたのですか?なんだか怪しい人物に見えましたよ。怪しい人間がいるから声を掛けようとしたのに、それがフェリシアさんだった時の僕の驚きといったらもう」
「うぅ、怪しい人間……」
少し前にも幼馴染に殆ど同じことを言われたことを思い出し、地味に傷つく。
そんなに怪しい行動をとっていたか、と思い出してみるがそんなつもりは毛頭ない。フェリシアは無意識だった。それだけに尋常でない程に心に二人の言葉が突き刺さってしまったのだ。怪しいなどと知り合いに言われて嬉しい人間などいないのだ。
「ん?どうかしたんですか?」
「……なんでもない。それで何をしていたか、だけど――簡単に言えば情報収集よ」
「情報収集?」
「そのなんだか街全体が浮足立っている様な気がして気になっちゃって、道端で噂をしていたご婦人方の噂話を盗み聞きしていたというかなんというか――」
「へえ。それで?何かわかりましたか?」
「えっとね、違ったら否定して欲しいんだけど――」
帰ってから王都にずっといる筈のロジーならばきっと街での噂やその本当の原因について知っているだろう。丁度良いとフェリシアは思い、今後の自身がどうするかの心積もりをしておくためにも、今までの事情から先程頭の中で出来てしまった仮説までを話し始めた。
少し受け止めきれない事があり、王都から暫く離れてディランの実家の領地に世話になっていた事。そこで色んな人と接することで心に余裕ができ、ようやく向き合う覚悟が出来たため、今日王都に戻ってきたこと。そして帰ってきた直後に聞いた噂などを総合して導き出されたフェリシアの仮説を――。
「っぶ!あははははははははは――も、え、それ本気で、ふふ、言ってるんですか、フェリシアさんっ」
結論から言おう。フェリシアの話を聞いたロジーは今までにない程に笑い転げていた。カフェの硬質な机にその綺麗な顔を打ち付け、何とか笑いを堪えようとしているが、効果は全くないようだ。
「そんな笑う……?こっちは大真面目なんだけど!?」
「っ~~~!!やめて、これ以上笑わせないでっ!!……ふふふっ、これじゃあ、あの人に同情してしまう」
「あの人?」
「はああぁ。笑った……それでフェリシアさん、貴女今何徹目ですか?」
「……3日」
「うわー。それは、うん」
若干過呼吸になりそうな程に笑い飛ばしたロジーを冷ややかな瞳で見つめながら応答する。『あの人』という単語が気になりはしたが、向こうが別の話題で切り返してきたため、答える気はないようだと判断して質問に答えた。
真面目に答えたのに、まるで可哀そうなモノでも見るような瞳で見つめられてしまった。こちらは元より大真面目で、ユリウスの性癖に動揺し過ぎて冷静じゃなくなりかけていたというのに。
「とにかく言えるのは、ユリウスさんと王太子様――カルディナ様はそんな関係性ではありませんよ」
「え、そうなの?」
「それにしても悉く誤解していましたね。フェリシアさんは相変わらず面白いです……本当一緒に居て飽きないな~」
「それは――ありがとう?」
でもこれでは話は初めに戻っただけだ。ユリウスが指輪を渡そうとしていた相手については未だ解決していないのである。その疑問は別の形となって口から零れ出た。二人の様子を聞けば、自ずと答えが出ると思ったからである。
「もう一つ聞きたいんだけど、ここ最近ユリウスとイリスはどうしてる?」
「ユリウスさんはひたすら落ち込んで、イリスも貴女の行方を泣きながら探していました。この二人に関してはちゃんと会って、責任取ってあげてくださいね……特にユリウスさんの方」
「それは――そのつもりで帰ってきたから、願ってもない事だけど」
二人共幸せオーラ全開というわけでもない所に疑問が落ちる。何故そんなにも落ち込んでいるのかは分からないが、元よりそのつもりだ。
「でも!一度寝てから会う事!!貴女の今の思考、かなりやばいですよ」
「……はい」
年下に諭される年上ってどうなんだ、と思いつつも先程ロジーに散々笑われたことも記憶に新しいため、フェリシアは素直に頷いたのだった。
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