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結局、王都までの道が遠いとキレ始めたアレンを見兼ねて、私は瞬間移動の魔道具でアレンごと王都に帰ってきていた。そうしてそのまま一番近くにあったカフェに二人で入り、今に至る。
案内されたオープンテラス席にアレンと対面で座る。彼の興味深そうな視線を受けながら、差し出されたメニュー表からフレーバーティーを選んで注文した。アールグレイを下地に、マンゴーとリンゴをメインにして混ぜた茶葉らしい。
流石は王都のカフェ。外観もさることながら、提供するものも同様お洒落だった。
対するアレンはコーヒーをブラックで頼んでいた。柔らかい香りが命とも言えるフレーバーティーを注文する人間の正面でコーヒーを頼むとは……。というかそもそも未来のアレンは実は苦いものが物凄く苦手だと言っていたのだが、この頃は格好でもつけているのだろうか。『コーヒーなんていう泥水、僕は嫌い』だなんて言っていたが。生意気なアレンらしいといえばらしい。
「お前って、割と女って感じのもん注文すんだな」
「……私が女らしくないとでも?」
「マジックゴリラ女のくせに」
「貴方は顔だけが良い素人童貞でしょう。そんなんじゃあ、好きな女の子が現れたとしても嫌われますよ?」
「は?俺に落ちない女がいると思ってんのか??」
「ええ。(今の貴方では)誰も落ちないでしょうね」
そう断言すると、思い当たる節でもあったのかアレンが黙り込む。
何故私たちは綺麗な場所、しかもオープンテラス席にいるにも関わらずこんな口汚い口論をしているのだろうか。柔らかい夕日に照らされて、なんだか馬鹿らしくなってくる。
「とりあえず、悲しい言い争いはやめましょうか。私に質問したいことがあるのでしょう?」
「……はあ、分かった」
アレンが聞いてくるのは案の定、私の魔法を中心にしたことだった。
別に私の魔法の内容を知られたところで、今のアレンに負けることはないので、素直に彼の疑問に答え続ける。
この『魔力増幅』とはどのような魔法なのか、どうやって使っているものなのか、発動条件は、魔力はどれくらい使うのかなどなど。かなり多岐にわたって聞かれた。
「ほんっとお前……なんつう能力持ってんだよ。流石にずりいだろ」
「原理上、時間を止められる貴方には言われたくありませんが」
話していて思ったが、昔のアレンはやはりアレン=ロスティシア自身なのだと改めて感じた。彼は私の能力の概要を聞いただけで、大体の使い方や詳細、私の能力が他人の能力の強化にまで使えるということを見破ってきていたし、やはり地頭は良いのだ。非常に生意気だが。
「……俺に初見から勝っておいて、よく言う」
「私は貴方よりも強い人を知っていますから」
「イルハルトのことか?」
「いいえ。そもそも私はイルハルトと戦ったことがないので」
「じゃあ、誰だ?お前より強いそいつと戦いたい。そいつに勝てば、俺はお前にも勝ったことになる」
しかしながら、本当にこの頃のアレンは戦闘狂だ。すぐに私やイルハルトをライバル視してくる。
けれどそれが少し哀れで面白くて……可愛かった。だって未来の彼は、私なんかよりも強い。私はいつでも彼に負けていた。戦闘でも、恋でも。彼は一枚以上上手だった。だから今くらいは少し揶揄っても良いだろう。
「秘密、です」
「はあああ!?ここまで来てかよ!!?」
「いつか会えますよ」
そう。それは未来の貴方なのだから。
『会う』とは少し違うかもしれないが、貴方はいつかそれに『成る』のだ。だから間違ってはいない。
不満そうな顔で、何故か私の分まで料金を払おうとしているアレンの財布に無理矢理お金をねじ込んで年下なのだから払わなくていいとあしらいながら、帰路についた。
案内されたオープンテラス席にアレンと対面で座る。彼の興味深そうな視線を受けながら、差し出されたメニュー表からフレーバーティーを選んで注文した。アールグレイを下地に、マンゴーとリンゴをメインにして混ぜた茶葉らしい。
流石は王都のカフェ。外観もさることながら、提供するものも同様お洒落だった。
対するアレンはコーヒーをブラックで頼んでいた。柔らかい香りが命とも言えるフレーバーティーを注文する人間の正面でコーヒーを頼むとは……。というかそもそも未来のアレンは実は苦いものが物凄く苦手だと言っていたのだが、この頃は格好でもつけているのだろうか。『コーヒーなんていう泥水、僕は嫌い』だなんて言っていたが。生意気なアレンらしいといえばらしい。
「お前って、割と女って感じのもん注文すんだな」
「……私が女らしくないとでも?」
「マジックゴリラ女のくせに」
「貴方は顔だけが良い素人童貞でしょう。そんなんじゃあ、好きな女の子が現れたとしても嫌われますよ?」
「は?俺に落ちない女がいると思ってんのか??」
「ええ。(今の貴方では)誰も落ちないでしょうね」
そう断言すると、思い当たる節でもあったのかアレンが黙り込む。
何故私たちは綺麗な場所、しかもオープンテラス席にいるにも関わらずこんな口汚い口論をしているのだろうか。柔らかい夕日に照らされて、なんだか馬鹿らしくなってくる。
「とりあえず、悲しい言い争いはやめましょうか。私に質問したいことがあるのでしょう?」
「……はあ、分かった」
アレンが聞いてくるのは案の定、私の魔法を中心にしたことだった。
別に私の魔法の内容を知られたところで、今のアレンに負けることはないので、素直に彼の疑問に答え続ける。
この『魔力増幅』とはどのような魔法なのか、どうやって使っているものなのか、発動条件は、魔力はどれくらい使うのかなどなど。かなり多岐にわたって聞かれた。
「ほんっとお前……なんつう能力持ってんだよ。流石にずりいだろ」
「原理上、時間を止められる貴方には言われたくありませんが」
話していて思ったが、昔のアレンはやはりアレン=ロスティシア自身なのだと改めて感じた。彼は私の能力の概要を聞いただけで、大体の使い方や詳細、私の能力が他人の能力の強化にまで使えるということを見破ってきていたし、やはり地頭は良いのだ。非常に生意気だが。
「……俺に初見から勝っておいて、よく言う」
「私は貴方よりも強い人を知っていますから」
「イルハルトのことか?」
「いいえ。そもそも私はイルハルトと戦ったことがないので」
「じゃあ、誰だ?お前より強いそいつと戦いたい。そいつに勝てば、俺はお前にも勝ったことになる」
しかしながら、本当にこの頃のアレンは戦闘狂だ。すぐに私やイルハルトをライバル視してくる。
けれどそれが少し哀れで面白くて……可愛かった。だって未来の彼は、私なんかよりも強い。私はいつでも彼に負けていた。戦闘でも、恋でも。彼は一枚以上上手だった。だから今くらいは少し揶揄っても良いだろう。
「秘密、です」
「はあああ!?ここまで来てかよ!!?」
「いつか会えますよ」
そう。それは未来の貴方なのだから。
『会う』とは少し違うかもしれないが、貴方はいつかそれに『成る』のだ。だから間違ってはいない。
不満そうな顔で、何故か私の分まで料金を払おうとしているアレンの財布に無理矢理お金をねじ込んで年下なのだから払わなくていいとあしらいながら、帰路についた。
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