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「…………」
「…………」
無言で気まずい状態のまま、アレンについていく。
別について行かずに反抗しても良かったのだが、暴れられても止めるのが面倒だと今回は思ってしまった。気まぐれだ。
「……どこに向かっているんですか?」
「鳥頭なのか?さっき俺の部屋っつっただろ」
気まずかったのと、この時間がいつまで続くのか聞きたかったからした質問だったのだが、バカにされて終わった。
その家がどこにあるのか聞きたかったのだが。やはりこの失礼なアレンには一言以上言ってやらないと気が済まない。
「お言葉ですが、未婚の女性……それも婚約者でも恋人でもない、特に親しくもない女性を密室に連れ込もうとしているのはいかがなものなのでしのうか」
「女性?俺、お前のこと女だと思ってないから大丈夫。ただの魔力ゴリラだろ」
「ぶん殴りますよ?」
「お!やるのか!!じゃあさっさと構えろ」
「やりませんよ。貴方を喜ばせてどうするんですか?一方的なリンチなら、したいですが」
戦う気はないと分かれば、すぐに興味なさそうにまた前を向いて歩き始める。本当にこの時代のこの人は、負けず嫌いだし、なによりもイラッとくる性格をしている。端的に言って、迷惑だし、言葉遣いや性格も非常によろしくない。しかし絡まれているこの状態から少しでも早く脱却するためには程々に相手をしてやるしかないのだろう。本当にしつこい。
「それで?結局貴方は私を部屋に呼んで何をしたかったのですか?」
「情報収集」
「は?」
「敵のことを知るのは勝つための基礎だろ。……って前にイルハルトが言ってた」
素直なのか素直じゃないのか分からない。
イルハルトに嫌がらせをしたり、戦いを挑んだり、洒落にならないレベルで挑発したりしているくせに、強くなるためには言われたことを一応は実践するのか。
だが、情報収集というのは即ち会話のことだろう。それであれば、余計に部屋に行く必要はないと思う。
普通じゃないのか、常識がないのか……それとも。
「それなら普通にカフェでもできることですよね?もしかして女性経験が乏しいのですか?」
「はあ!?んなわけねえだろ!!この顔だぞ!!?」
当たってしまったようだ。この頃の彼は、まだ女性経験がない。いや、立場だけはあるから、教育としてその辺の性教育はされていたとしても、付き合ったこととかがないといったところか。
顔だけが良いのが余計に哀れさを際立たせた。今の貴方の中身、物凄く性格悪いもんね……。
「……可哀想なので、言及しないでおいてあげます」
「うるせー!!!てめえこそ、絶対バージンだろ!!誰も選ぶ男なんていないだろ、こんなマジックゴリラ女」
「残念ながら、バージンではありませんね。それに、普通に恋人という意味での男性経験もあります。少なくとも、貴方よりは経験がありますよ」
マジックゴリラ女ってなんだ、そのコミカルな生き物は!と心のなかでツッコミながら、即答してしまった。
他でもない貴方でバージンを失いましたなんて、口が裂けても言えないが。
というか、好きな人の過去と言えど、この罵られ方は普通に傷付くし、なによりもイラッとくるので煽り返しておいた。
そうすると、アレンは何も言えなくなってしまったのか口を完全に噤む。
そして一言言った。
「……カフェとやらでいい」
最近思うのだが、この頃のアレンは尖っているように見えて、言い負かす段階まで行ってしまえば、中々素直だ。何もかもに対して余裕な態度を貫いていた未来の彼よりは全然感情が読みやすいし、扱いやすい。私は彼には弄ばれてばかりだったから。
そんな今の彼を、少し可愛いかもしれないとまで思ったのは気の所為だと思いたい。
「…………」
無言で気まずい状態のまま、アレンについていく。
別について行かずに反抗しても良かったのだが、暴れられても止めるのが面倒だと今回は思ってしまった。気まぐれだ。
「……どこに向かっているんですか?」
「鳥頭なのか?さっき俺の部屋っつっただろ」
気まずかったのと、この時間がいつまで続くのか聞きたかったからした質問だったのだが、バカにされて終わった。
その家がどこにあるのか聞きたかったのだが。やはりこの失礼なアレンには一言以上言ってやらないと気が済まない。
「お言葉ですが、未婚の女性……それも婚約者でも恋人でもない、特に親しくもない女性を密室に連れ込もうとしているのはいかがなものなのでしのうか」
「女性?俺、お前のこと女だと思ってないから大丈夫。ただの魔力ゴリラだろ」
「ぶん殴りますよ?」
「お!やるのか!!じゃあさっさと構えろ」
「やりませんよ。貴方を喜ばせてどうするんですか?一方的なリンチなら、したいですが」
戦う気はないと分かれば、すぐに興味なさそうにまた前を向いて歩き始める。本当にこの時代のこの人は、負けず嫌いだし、なによりもイラッとくる性格をしている。端的に言って、迷惑だし、言葉遣いや性格も非常によろしくない。しかし絡まれているこの状態から少しでも早く脱却するためには程々に相手をしてやるしかないのだろう。本当にしつこい。
「それで?結局貴方は私を部屋に呼んで何をしたかったのですか?」
「情報収集」
「は?」
「敵のことを知るのは勝つための基礎だろ。……って前にイルハルトが言ってた」
素直なのか素直じゃないのか分からない。
イルハルトに嫌がらせをしたり、戦いを挑んだり、洒落にならないレベルで挑発したりしているくせに、強くなるためには言われたことを一応は実践するのか。
だが、情報収集というのは即ち会話のことだろう。それであれば、余計に部屋に行く必要はないと思う。
普通じゃないのか、常識がないのか……それとも。
「それなら普通にカフェでもできることですよね?もしかして女性経験が乏しいのですか?」
「はあ!?んなわけねえだろ!!この顔だぞ!!?」
当たってしまったようだ。この頃の彼は、まだ女性経験がない。いや、立場だけはあるから、教育としてその辺の性教育はされていたとしても、付き合ったこととかがないといったところか。
顔だけが良いのが余計に哀れさを際立たせた。今の貴方の中身、物凄く性格悪いもんね……。
「……可哀想なので、言及しないでおいてあげます」
「うるせー!!!てめえこそ、絶対バージンだろ!!誰も選ぶ男なんていないだろ、こんなマジックゴリラ女」
「残念ながら、バージンではありませんね。それに、普通に恋人という意味での男性経験もあります。少なくとも、貴方よりは経験がありますよ」
マジックゴリラ女ってなんだ、そのコミカルな生き物は!と心のなかでツッコミながら、即答してしまった。
他でもない貴方でバージンを失いましたなんて、口が裂けても言えないが。
というか、好きな人の過去と言えど、この罵られ方は普通に傷付くし、なによりもイラッとくるので煽り返しておいた。
そうすると、アレンは何も言えなくなってしまったのか口を完全に噤む。
そして一言言った。
「……カフェとやらでいい」
最近思うのだが、この頃のアレンは尖っているように見えて、言い負かす段階まで行ってしまえば、中々素直だ。何もかもに対して余裕な態度を貫いていた未来の彼よりは全然感情が読みやすいし、扱いやすい。私は彼には弄ばれてばかりだったから。
そんな今の彼を、少し可愛いかもしれないとまで思ったのは気の所為だと思いたい。
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