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「僕はアレン。アレン=ロスティシア。この研究所で君の保護者になった者だ。年齢差とかは気にせずに、気楽に『アレン』って呼んで」
初対面から既に、いかにもな優男風の喋り方をしていた男が――
「おい、ステラ!!俺と勝負しろ!!」
今はこうだ。やはり全然違うと思う。
正確には現在私の目の前にいる方のアレンの方が若く、年下……即ち昔のアレンとなるのだが、未来から過去に飛んできた私にとってはどうしてもかつてのアレンとやはり比べてしまう。それに、あの戦いから何故だかアレンは私に四六時中付きまとうになったのだから、比べてしまう機会は必然的に増えていた。
好きだった人……認めたくはないが、未だに引きずっている人とはいえ、正直かなりウザったい。
「任務を任されているので無理です」
「は?俺がわざわざお前なんかのために時間を作ってきてやってるのに??お前に断る権利があるとでも思ってんの???」
「ありますね。私の生活のためですから。それではさようなら」
「あ!ちょ、待――」
アレンをここから遠くの座標に飛ばし、任地に向かう。
少し前にイルハルトが貢いでくれたこのテレポーテーションの魔道具。本来であれば自分、しかも予め魔力で印をつけている個所にしか瞬間移動することが出来ないのだが、私の能力によって他人に対しても使える魔道具に変質していた。
中々便利故に頻繁に使ってしまうな~などと考えながら歩き出す。アレンに絡まれて、何かしらの手段で巻いたり撃退したりする。これがここ暫くのルーティンと化していた。
あの日――私がアレンを打ち破った日からアレンは毎日毎日私の元を訪ねて来ては勝負を挑み続けている。よく飽きないなと思いながらも、酷く突き放すことはどうしてもできなくて、結局テキトーにいなすだけ。
なにせ私は既に直感してしまったのだ。きっとアレンが出会った当初に間違えた『ステラ』というのは、今の自分のことなのだろうと。
だってそう考えると辻褄が合う。世界にはそっくりな顔をした人間が3人はいると言われているが、こんな狭い範囲で、しかも今現在使っている名前である『ステラ』という名前と全く同じ人間とアレンが出会う確率を考えると、どれだけ低いだろう。
それと同時に、私とアレンはなんて不毛なことをしていたのだろうと馬鹿らしく思っていた。しかし帰る事も出来ない。今の私に出来るのは、程々にアレンをあしらって、未来へ戻る方法を探る事だけ。
アレンと交流を深めることなく、未来へと戻る。
きっと『ステラ』とアレンは結ばれなかったのだと考察しているからだ。
未来のアレンにとっての『ステラ』は、アレンと一緒にいることなくきちんと未来に戻ったのだろう。アレンと最初に出会った時のあの表情やその後の執着から分かる。手に入らなかったものだからこそのあの態度だったのだ。
しかしながらそう考察すると同時に、今未来に戻ってしまっても困ると私は心の隅で感じていた。なにせ彼にとっての『ステラ』が自分だったというのはきっとアレン自身は知らない。この後伝えて関係性がどうなってしまうのか、そして別れ際にあんな事を言ってしまった故にアレンを確実に傷付けているということは分かりきっていた。そんな自分を彼は許してくれるのだろうか。
悶々とアレンとの関係性について悩みながら、私は今日の任地へと向かった。
初対面から既に、いかにもな優男風の喋り方をしていた男が――
「おい、ステラ!!俺と勝負しろ!!」
今はこうだ。やはり全然違うと思う。
正確には現在私の目の前にいる方のアレンの方が若く、年下……即ち昔のアレンとなるのだが、未来から過去に飛んできた私にとってはどうしてもかつてのアレンとやはり比べてしまう。それに、あの戦いから何故だかアレンは私に四六時中付きまとうになったのだから、比べてしまう機会は必然的に増えていた。
好きだった人……認めたくはないが、未だに引きずっている人とはいえ、正直かなりウザったい。
「任務を任されているので無理です」
「は?俺がわざわざお前なんかのために時間を作ってきてやってるのに??お前に断る権利があるとでも思ってんの???」
「ありますね。私の生活のためですから。それではさようなら」
「あ!ちょ、待――」
アレンをここから遠くの座標に飛ばし、任地に向かう。
少し前にイルハルトが貢いでくれたこのテレポーテーションの魔道具。本来であれば自分、しかも予め魔力で印をつけている個所にしか瞬間移動することが出来ないのだが、私の能力によって他人に対しても使える魔道具に変質していた。
中々便利故に頻繁に使ってしまうな~などと考えながら歩き出す。アレンに絡まれて、何かしらの手段で巻いたり撃退したりする。これがここ暫くのルーティンと化していた。
あの日――私がアレンを打ち破った日からアレンは毎日毎日私の元を訪ねて来ては勝負を挑み続けている。よく飽きないなと思いながらも、酷く突き放すことはどうしてもできなくて、結局テキトーにいなすだけ。
なにせ私は既に直感してしまったのだ。きっとアレンが出会った当初に間違えた『ステラ』というのは、今の自分のことなのだろうと。
だってそう考えると辻褄が合う。世界にはそっくりな顔をした人間が3人はいると言われているが、こんな狭い範囲で、しかも今現在使っている名前である『ステラ』という名前と全く同じ人間とアレンが出会う確率を考えると、どれだけ低いだろう。
それと同時に、私とアレンはなんて不毛なことをしていたのだろうと馬鹿らしく思っていた。しかし帰る事も出来ない。今の私に出来るのは、程々にアレンをあしらって、未来へ戻る方法を探る事だけ。
アレンと交流を深めることなく、未来へと戻る。
きっと『ステラ』とアレンは結ばれなかったのだと考察しているからだ。
未来のアレンにとっての『ステラ』は、アレンと一緒にいることなくきちんと未来に戻ったのだろう。アレンと最初に出会った時のあの表情やその後の執着から分かる。手に入らなかったものだからこそのあの態度だったのだ。
しかしながらそう考察すると同時に、今未来に戻ってしまっても困ると私は心の隅で感じていた。なにせ彼にとっての『ステラ』が自分だったというのはきっとアレン自身は知らない。この後伝えて関係性がどうなってしまうのか、そして別れ際にあんな事を言ってしまった故にアレンを確実に傷付けているということは分かりきっていた。そんな自分を彼は許してくれるのだろうか。
悶々とアレンとの関係性について悩みながら、私は今日の任地へと向かった。
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