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転移した先は王城が見える王都の中心地の広場。
「滅びろ!雑魚共がっ!!」
止めようとする騎士達に対して強力な炎の魔法を浴びせながら、同時に遠隔攻撃――魔法で生成した岩を投擲して、城を破壊している男……リアムがいた。
あまりにも苛烈な彼の態度に関わりたくないなという気持ちが強くなってくる。だって、巻き込まれそう。誰しも怒り狂った軍神の目の前にわざわざ現れたいはずがないだろう。
「あれは……リアム」
「え、知り合い?」
「いけ好かない男です。僕とは何もかもが正反対で、そりが合わない」
知っていることには少し驚いたが、軍神同士だ。人間には分からない関わりがあるのだろう。
確かに、と納得する。
リアムが炎なら、この軍神は氷だ。
容姿からしても正反対である。リアムは黒髪に燃えるように紅い瞳、褐色の肌にオールバックにした野性的な容姿をしている。しかも戦い方もリアムはパワー型で粗野だ。全体的に直感で攻撃している感じがする。
逆にこの軍神、アーサーは氷。
金髪碧眼に白に近い繊細そうな肌、髪の毛はふんわりと柔らかそうで王子様のような涼やかな容姿である。そして戦いは技術で圧倒するタイプだろう。さっき義妹を処理したのを見ても、力任せとは真逆だと分かった。
後者とはまだ出会ったばかりだが、確実にこの二人は相性が最悪なのだろうと察することが出来た。そりが合わないどころの騒ぎではなさそうだ。
「リアム。さっさと消えてください」
急にリアムの目の前に降り立ち、私を地面に降ろすと同時に、上から大量の氷柱を降らせる。
どうやらこのアーサーが得意なのは氷の魔法の様だ。
リアムがいた場所周辺に氷の壁が出来た。死んだ?と薄情にも思ったが、そんなことはなかったようで、すぐに氷が全て溶けて、元気に怒り狂った姿のリアムが姿を現した。
「ってえな!何しやがる!!……って、アーサー?それにエレノア!!?生きてたのか」
「っち!!生きていやがりましたか」
私に生きていたのかとキラキラした瞳を向けるリアムと、初っ端から無予告で襲撃しておいて生きているのかと舌打ちをかますアーサー。
絶対この二人、容姿が逆であるべきだろう。アーサーが黒い。あまりにも腹黒すぎる。どんだけリアムの事が嫌いなんだ。
「リアム……なんで城を破壊しようとしているの?」
「アイツらが俺からお前を奪ったから――」
「彼女は貴方のものではありません。僕のものです」
「アンタは黙ってなさい」
思わず最強と呼ばれる軍神にアンタ呼びをしてしまったが、仕方ないだろう。止めれば彼は一応、推し黙る。
改めてリアムを観察してみる。ずっと私に『契約』を迫っていたリアムはなんだか泣きそうだった。それに少しだけ申し訳ない気持ちになる。
だって彼は私をずっと助けようとしてくれていた。かと言って、私が死んだと思って城を壊そうとしていたのはどうかと思うが。
だから最低限の情報共有は必要だと思い、今まであったことを全てリアムに話した。とは言っても、このアーサーに何故だか契約を迫られているということがメインだが。
「滅びろ!雑魚共がっ!!」
止めようとする騎士達に対して強力な炎の魔法を浴びせながら、同時に遠隔攻撃――魔法で生成した岩を投擲して、城を破壊している男……リアムがいた。
あまりにも苛烈な彼の態度に関わりたくないなという気持ちが強くなってくる。だって、巻き込まれそう。誰しも怒り狂った軍神の目の前にわざわざ現れたいはずがないだろう。
「あれは……リアム」
「え、知り合い?」
「いけ好かない男です。僕とは何もかもが正反対で、そりが合わない」
知っていることには少し驚いたが、軍神同士だ。人間には分からない関わりがあるのだろう。
確かに、と納得する。
リアムが炎なら、この軍神は氷だ。
容姿からしても正反対である。リアムは黒髪に燃えるように紅い瞳、褐色の肌にオールバックにした野性的な容姿をしている。しかも戦い方もリアムはパワー型で粗野だ。全体的に直感で攻撃している感じがする。
逆にこの軍神、アーサーは氷。
金髪碧眼に白に近い繊細そうな肌、髪の毛はふんわりと柔らかそうで王子様のような涼やかな容姿である。そして戦いは技術で圧倒するタイプだろう。さっき義妹を処理したのを見ても、力任せとは真逆だと分かった。
後者とはまだ出会ったばかりだが、確実にこの二人は相性が最悪なのだろうと察することが出来た。そりが合わないどころの騒ぎではなさそうだ。
「リアム。さっさと消えてください」
急にリアムの目の前に降り立ち、私を地面に降ろすと同時に、上から大量の氷柱を降らせる。
どうやらこのアーサーが得意なのは氷の魔法の様だ。
リアムがいた場所周辺に氷の壁が出来た。死んだ?と薄情にも思ったが、そんなことはなかったようで、すぐに氷が全て溶けて、元気に怒り狂った姿のリアムが姿を現した。
「ってえな!何しやがる!!……って、アーサー?それにエレノア!!?生きてたのか」
「っち!!生きていやがりましたか」
私に生きていたのかとキラキラした瞳を向けるリアムと、初っ端から無予告で襲撃しておいて生きているのかと舌打ちをかますアーサー。
絶対この二人、容姿が逆であるべきだろう。アーサーが黒い。あまりにも腹黒すぎる。どんだけリアムの事が嫌いなんだ。
「リアム……なんで城を破壊しようとしているの?」
「アイツらが俺からお前を奪ったから――」
「彼女は貴方のものではありません。僕のものです」
「アンタは黙ってなさい」
思わず最強と呼ばれる軍神にアンタ呼びをしてしまったが、仕方ないだろう。止めれば彼は一応、推し黙る。
改めてリアムを観察してみる。ずっと私に『契約』を迫っていたリアムはなんだか泣きそうだった。それに少しだけ申し訳ない気持ちになる。
だって彼は私をずっと助けようとしてくれていた。かと言って、私が死んだと思って城を壊そうとしていたのはどうかと思うが。
だから最低限の情報共有は必要だと思い、今まであったことを全てリアムに話した。とは言っても、このアーサーに何故だか契約を迫られているということがメインだが。
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