47 / 79
第三章:ポッシェ村
46.対話①
しおりを挟む
私を襲撃した二人を収容しているらしい施設まで、全く懲りないサミュエルのウザったい絡みを躱しながらも案内させ、なんとか辿り着いた。流石に部屋に居た時のような口説き方はしてこなかったが、明らかに以前とは違う甘さを持った触れ方をしてきていて、私を恋愛的な意味で落とそうとしているのが簡単に察せられた。
無駄に疲労感を覚えたことに若干の苛立ちを覚えながらも、入り口にいた人に声を掛ける。
「ストルツさんが担当なんですね。私たち、ここに収容されている人に会いに来たのですが――」
「フィーア……とサミュエル様。すぐに案内致します」
「なんでサミュエルは敬語を使われているの?」
「ああ、この村には人を捕縛しておく施設がなかったからね。僕の権力で先日作らせたんだよ。ここの維持費やその他諸々の経費、あと村への支援金なんか払っておいたからじゃない?」
「はあ!!?」
「僕、第二皇子だしね。それを聞いたら皆快く手伝ってくれたよ」
言われてみれば、初めてこの建物を見た。研究施設があるのは村の南側。だからあまり村の北側には来ないということもあり、今まで知らなかっただけかと思ったが、そうではなかったようだ。きっとこの村の人やクラウスが散々こき使われた結果だろう。
よくよく思い出してみると、すれ違った村の人達もなんだか疲れているような顔をしていたような気がする。あとで村の人達には謝罪しておこうと思う。
そんなこんなでサミュエルを問いただしているうちに、地下深くにあった該当の部屋に案内されていた。
中には手足を厳重に拘束され、口以外は動かすことが出来ない状態になったあの派手なピンクの髪を高く結んだ女と、鼻の下に白髭を貯えた壮年の男がい――ると思ったのだが、部屋の中の状況は全く違った。
二人ともが自由な状態で部屋で寛いでいたのだ。そしてこの部屋の広さ自体、魔法で少し拡張されているのか、複数個部屋があるようだった。奥の方にはキッチンらしき設備も見えた。
外から入れる扉があるのはリビングのような場所。そこで男の方は紅茶を優雅に飲みながらホクホクとした湯気の立つスコーンを摘まみ、女の方はクッキーを齧りながらファッション系のお洒落雑誌を読んでいた。
「……この人たち、よね?」
「うん。彼らが襲撃犯」
「なんでこんなに自由に寛いでいるの?拘束は?」
「彼らはもう全てを白状して、今は保護対象になっている。人伝に聞いた話だと信用できないだろう?だからまだここに捕えている」
確かに彼らに敵意はない。それどころか、私やサミュエルが話しかけてくるのを落ち着いて待っているようだった。
それによくよく解析してみると、この部屋は部屋の中の者を捕える魔法ではなく、部屋の外から中身を守るための魔方式が全体に組み込まれている上に、精神系の魔法が組み込まれている気配も感じる。
サミュエルの話は本当のようだ。
「気づいているかもしれないけど、ここには簡易的ではあるが、嘘を吐くと警報がなる魔方式も仕組まれている。真偽はそれで見分けられる」
まるで私が部屋の中身を眺め終わるのを待っていたかのようなタイミングでサミュエルが解説を入れた。なるほど、精神系の魔法の正体はこれか。そう全てに納得がいった。これで私のこれまでの疑問は解消されるのだろう。
「じゃあ、答え合わせを始めようか」
サミュエルのその言葉を合図にして、対話が始まった。
無駄に疲労感を覚えたことに若干の苛立ちを覚えながらも、入り口にいた人に声を掛ける。
「ストルツさんが担当なんですね。私たち、ここに収容されている人に会いに来たのですが――」
「フィーア……とサミュエル様。すぐに案内致します」
「なんでサミュエルは敬語を使われているの?」
「ああ、この村には人を捕縛しておく施設がなかったからね。僕の権力で先日作らせたんだよ。ここの維持費やその他諸々の経費、あと村への支援金なんか払っておいたからじゃない?」
「はあ!!?」
「僕、第二皇子だしね。それを聞いたら皆快く手伝ってくれたよ」
言われてみれば、初めてこの建物を見た。研究施設があるのは村の南側。だからあまり村の北側には来ないということもあり、今まで知らなかっただけかと思ったが、そうではなかったようだ。きっとこの村の人やクラウスが散々こき使われた結果だろう。
よくよく思い出してみると、すれ違った村の人達もなんだか疲れているような顔をしていたような気がする。あとで村の人達には謝罪しておこうと思う。
そんなこんなでサミュエルを問いただしているうちに、地下深くにあった該当の部屋に案内されていた。
中には手足を厳重に拘束され、口以外は動かすことが出来ない状態になったあの派手なピンクの髪を高く結んだ女と、鼻の下に白髭を貯えた壮年の男がい――ると思ったのだが、部屋の中の状況は全く違った。
二人ともが自由な状態で部屋で寛いでいたのだ。そしてこの部屋の広さ自体、魔法で少し拡張されているのか、複数個部屋があるようだった。奥の方にはキッチンらしき設備も見えた。
外から入れる扉があるのはリビングのような場所。そこで男の方は紅茶を優雅に飲みながらホクホクとした湯気の立つスコーンを摘まみ、女の方はクッキーを齧りながらファッション系のお洒落雑誌を読んでいた。
「……この人たち、よね?」
「うん。彼らが襲撃犯」
「なんでこんなに自由に寛いでいるの?拘束は?」
「彼らはもう全てを白状して、今は保護対象になっている。人伝に聞いた話だと信用できないだろう?だからまだここに捕えている」
確かに彼らに敵意はない。それどころか、私やサミュエルが話しかけてくるのを落ち着いて待っているようだった。
それによくよく解析してみると、この部屋は部屋の中の者を捕える魔法ではなく、部屋の外から中身を守るための魔方式が全体に組み込まれている上に、精神系の魔法が組み込まれている気配も感じる。
サミュエルの話は本当のようだ。
「気づいているかもしれないけど、ここには簡易的ではあるが、嘘を吐くと警報がなる魔方式も仕組まれている。真偽はそれで見分けられる」
まるで私が部屋の中身を眺め終わるのを待っていたかのようなタイミングでサミュエルが解説を入れた。なるほど、精神系の魔法の正体はこれか。そう全てに納得がいった。これで私のこれまでの疑問は解消されるのだろう。
「じゃあ、答え合わせを始めようか」
サミュエルのその言葉を合図にして、対話が始まった。
551
お気に入りに追加
3,275
あなたにおすすめの小説
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。

そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。


本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。

ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる