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第三章:ポッシェ村
45.平常運転
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「サミュエル、起きて」
「んー、ソフィア?」
ずっと看病してくれていたらしいサミュエルを起こすのは少し申し訳なかったが、こんな固い床で眠るよりはきちんと自室に戻って休んだ方が良いだろう。そう思って彼の肩を軽く揺すって起こそうとする。
一応返事を出来るくらいには意識があるようだ。これくらいに意識があるのであれば、肩を貸せばきっと部屋に返せるだろう。
「肩貸すから、部屋に帰ってから休ん――」
「おはよう、僕のお姫様」
うつ伏せで眠っていたサミュエルのために、身体を屈めて肩を貸そうとしていた体勢からグイっと両手で肩を引き寄せられ、抱き寄せられる。驚きすぎて声が出なかったが、明らかにサミュエルは寝ぼけていた。
「っ離して!」
「だーめ。暴れないで」
いつもよりも気の抜けた声でゆるゆると甘ったるい言葉を吐いてくる。この男、意識が完全に覚醒していないくせに力が強い。しかも目を閉じながら、耳に直接囁きかけてくるように声を発してくるせいで耳がこそばゆくて仕方がなかった。
動揺していると、サミュエルの手が段々と肩から背中、腰回りへと怪しくなぞるように降りてくる。それを感じると同時に、手が勝手にサミュエルの脳天を大きく揺さぶった。
「いっっっっつーー!!」
******
「ごめんなさい」
「はあ、貴方のセクハラ行為は今に始まった事じゃないので、もういいわ。これ以降気を付けて」
「……僕に触れられるのは嫌?」
「は?」
「僕は君に触れたいっていつでも思っているよ」
いつの間にか私が座っていたベッドの淵の左隣に腰を掛け、右手で私の手をするりと撫でてくる。その感触が擽ったくて手を引っ込めそうになるが、強く手を握られ、それは許してもらえなかった。
「なに、言って――いるの」
「ん?君を口説いてるんだけど、分からない?」
冷静にしゃべることが出来ない。急に真面目な顔で距離を詰められて、頬に熱が集まるのを感じる。今までサミュエル相手にこんな状態になったことはなかったのに、『死の制約』を経て改めて口説かれてみると、以前は感じなかった彼の真剣さや痛いくらいに強い想いを感じてしまったのだ。
「っその、私は……こういうのは、あの……」
「うん。こういうのは?ダメ?それともダメじゃない?」
手を握っている方と逆の手がスルリと上ってきて、首筋に触れる。自分でもこういう真っすぐすぎる明らかに好意が籠った色気のある迫られ方は今までされていなかったということもあり、どうすれば良いのか分からない。彼の手が冷たく感じるくらいに身体が熱くなっていた。
そして段々とサミュエルの顔が近付いてくる。キスをしようとしてきている。
そこまで認識して、やっと正常な思考回路が戻って来た。
「何しようとしてんのよ!!」
「ぶへばっ!」
目の前には思い切りベッドのサイドに顔をぶつけて埋めたサミュエルが居た。
本当にこの男は油断も隙もない。しかし私を口説くくらいに無駄な元気があるのであれば、このまま休みを与えずに、私を襲ってきた人間達の元に案内させても問題ないだろう。
先程赤面させられた恨みも込めて、倒れ伏しているサミュエルを軽く足蹴にして叩き起こした――。
「んー、ソフィア?」
ずっと看病してくれていたらしいサミュエルを起こすのは少し申し訳なかったが、こんな固い床で眠るよりはきちんと自室に戻って休んだ方が良いだろう。そう思って彼の肩を軽く揺すって起こそうとする。
一応返事を出来るくらいには意識があるようだ。これくらいに意識があるのであれば、肩を貸せばきっと部屋に返せるだろう。
「肩貸すから、部屋に帰ってから休ん――」
「おはよう、僕のお姫様」
うつ伏せで眠っていたサミュエルのために、身体を屈めて肩を貸そうとしていた体勢からグイっと両手で肩を引き寄せられ、抱き寄せられる。驚きすぎて声が出なかったが、明らかにサミュエルは寝ぼけていた。
「っ離して!」
「だーめ。暴れないで」
いつもよりも気の抜けた声でゆるゆると甘ったるい言葉を吐いてくる。この男、意識が完全に覚醒していないくせに力が強い。しかも目を閉じながら、耳に直接囁きかけてくるように声を発してくるせいで耳がこそばゆくて仕方がなかった。
動揺していると、サミュエルの手が段々と肩から背中、腰回りへと怪しくなぞるように降りてくる。それを感じると同時に、手が勝手にサミュエルの脳天を大きく揺さぶった。
「いっっっっつーー!!」
******
「ごめんなさい」
「はあ、貴方のセクハラ行為は今に始まった事じゃないので、もういいわ。これ以降気を付けて」
「……僕に触れられるのは嫌?」
「は?」
「僕は君に触れたいっていつでも思っているよ」
いつの間にか私が座っていたベッドの淵の左隣に腰を掛け、右手で私の手をするりと撫でてくる。その感触が擽ったくて手を引っ込めそうになるが、強く手を握られ、それは許してもらえなかった。
「なに、言って――いるの」
「ん?君を口説いてるんだけど、分からない?」
冷静にしゃべることが出来ない。急に真面目な顔で距離を詰められて、頬に熱が集まるのを感じる。今までサミュエル相手にこんな状態になったことはなかったのに、『死の制約』を経て改めて口説かれてみると、以前は感じなかった彼の真剣さや痛いくらいに強い想いを感じてしまったのだ。
「っその、私は……こういうのは、あの……」
「うん。こういうのは?ダメ?それともダメじゃない?」
手を握っている方と逆の手がスルリと上ってきて、首筋に触れる。自分でもこういう真っすぐすぎる明らかに好意が籠った色気のある迫られ方は今までされていなかったということもあり、どうすれば良いのか分からない。彼の手が冷たく感じるくらいに身体が熱くなっていた。
そして段々とサミュエルの顔が近付いてくる。キスをしようとしてきている。
そこまで認識して、やっと正常な思考回路が戻って来た。
「何しようとしてんのよ!!」
「ぶへばっ!」
目の前には思い切りベッドのサイドに顔をぶつけて埋めたサミュエルが居た。
本当にこの男は油断も隙もない。しかし私を口説くくらいに無駄な元気があるのであれば、このまま休みを与えずに、私を襲ってきた人間達の元に案内させても問題ないだろう。
先程赤面させられた恨みも込めて、倒れ伏しているサミュエルを軽く足蹴にして叩き起こした――。
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