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第三章:ポッシェ村

33.聖女の刻印②

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「おはよう、フィーア。昨日のことなんだけど……」
「うわ、びっくりした。人の部屋の前で待っていないでください。礼儀がなっていませんよ、気持ち悪い。それじゃあ」

「あの、フィー」
「あー!今日私の担当だから、朝ご飯作らないと!!」

「フィーア、話がーー」
「あ。調査に行く前に前に資料を取ってこないと」

私は朝からあからさまにサミュエルを避け続けていた。
きっと彼は話したいのだろう。私の身体にある刻印について、そして私の正体について。頬が少し赤くなっているのは申し訳なさを覚えたが、私に話す気など更々なかった。
あんな刻印は『普通』じゃない。魔法を使える者で、アレを直接見てしまえばわかるだろう。それにサミュエルは王族だ。ブレメンス王国の聖女に関する詳細を知っていても不思議ではない。何代か前の王族がフィオレントに嫁いでいたから、交流は程々にあるかつ他国の情報収集もしているはずだ。だから、アレが何か知っている可能性も高い。

「フィーア。調査に行くなら僕も行くから、行く前に声をかけて」

部屋の外で聞こえたサミュエルの声。きっとあの焼け落ちた家で追い詰めようとしているのだろう。
それを察した瞬間、私の身体は勝手に動き、窓を開けて外に飛び出していた。そしてそのまま村の外、森の方に一目散に逃げる。もうここに戻ってこない覚悟すら決めて。
きっと数秒後にはサミュエルは気づいて追いかけてくる。そこまでにどれだけ距離を取ることが出来るか。そこが逃げられるか否かの大きなポイントだ。

筋力強化の魔法を使った上で前方に進んだ後に風魔法の追い風で更に加速し、木々の間を駆け抜けていく。
5キロほど離れただろうか。勝負はこの後だ。使用してしまった魔力の残滓は残ってしまっている。だからここで途切れさせるのだ。私の魔法に対する絶縁結界をこの森全体に貼る。これによってどれだけ魔法を使おうとも、私は誰にも認識されない。周囲数十キロ程の規模だ。
その上、魔法探知を跳ね除ける魔法を自身の周囲に張り巡らせた。

ここで身を潜めて、追いかけてくるであろうサミュエルを撒く。
私は無駄に鍛えられた素の身体能力で、10メートル近くある木を駆け登った。そして太い枝の上に身を隠した。そして、次の居住地はどこにしようかなんて考えながら、サミュエルが通り過ぎてくれるのを待った。

10分くらい経った頃だろうか。遠くから私を探しているらしいサミュエルの声が聞こえてきた。きっと私を誘き出すために何かほざいているのだろう。
気配を消し続けていると、しびれを切らしたのであろう彼が大規模な魔法を使う気配がした。
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