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第三章:ポッシェ村
29.村への帰還②
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ポッシェ村までの移動期間、本当に色々なことがあった。
まず、サミュエルがプラッといなくなって3日その街に足止めされたこと。その間にはクラウスが暇だからと街の人達の様々な悩みや魔物の討伐依頼を解決するのにこれまた私が暇だからと駆り出された。クラウスの公爵家嫡男としての使命は理解できるし尊敬も出来るが、正直巻き込むのはやめて欲しかった。
しかもクラウスは依頼を受け始めた時、街の住民何人かとその横柄な態度と勘違いされやすい言動から喧嘩していたのだ。それを止めていた私の身にもなって欲しいものだ。最終的に、足止めされていた分の宿代が無料 になったり、最終的には喧嘩した人含めて街の人達からの確実な信頼を勝ち得ていたのだが、それ以上に私の精神が削られた。
あとはサミュエルの『カヌレを食べれないなら、この場で全力の駄々をこねる』という発言だろうか。確実に急な思い付きなのだろうが、クラウスと一緒にカヌレを作らされたのは最低な思い出だ。
他にもサミュエルが怪しい商人から妙な気配を感じる壺を買わされそうになっていたり、彼の気まぐれで強力な魔物が群生している場所に立ち寄らされて、討伐に駆り出されたり。一生分の迷惑を掛けられた気がする。
そのせいで結局ポッシェ村に辿り着くまでにかかった日数は2週間だった。
***
「ここまで、本当に長かった……」
「うん、楽しかったよね」
「貴方のせいで私は道中全く楽しくなかったですが、それは自覚していますか?」
「そっか、じゃあ次はもっと楽しくなれるように頑張るよ。これから長い付き合いになるわけだし」
「……本気で勘弁してください」
私は何故、散々迷惑を掛けられた挙句に今後も迷惑を掛けてやるぞという発言をされているのだろう。私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。
助けを求めるようにクラウスに視線を送るが、肩をすくめられてしまった。あまりにも救いがない。
「あ!フィーアちゃん、おかえりなさい。帰ってくるの、今日だったのね」
「カンナさん、ただいま帰りました」
「あらあら。こんなイケメンを2人も連れ帰ってきちゃって……フィーアちゃんも隅に置けないわね~。どっちが恋人かしら。爽やか系イケメンの方?それとも厳つい系イケメンの方?それとも両方かしら」
「は????」
急に理解不能な内容をカンナさんに振られて、腹の底から低い声が出てしまった。彼女はなんて酷い勘違いをしているのだろうか。
「爽やか系イケメンだなんて、照れるな。以前お会いしましたよね。僕はサミュエルと申します。フィーアさんと将来を共にする者です」
「……クラウスだ。よろしく頼む」
「あらあら~。ご丁寧にありがとう。本当に両手に花なのね」
なんでサミュエルは勘違いされるような発言をわざわざするのだろう。最低すぎる。それに、クラウスが恋人だのなんだのという揶揄を否定しないのも気になる。長旅で疲れているのだろうか。
「どっちも恋人ではありません。特にサミュエルの方は基本的に愉快犯みたいなやつなので、信じないでください」
「もう~~。フィーアちゃんったら、照れちゃって可愛い」
なんでこんなぽっと出のサミュエルの方が私よりも信用があるのだろうか。軽く絶望した。
これは根気強く否定すれば否定するほどに私が照れて否定していると思われるパターンだとなんとなく察した。カンナさん以降は被害者を出さないために、特にサミュエルの方の紹介は遮っていこうと思う。
第一村人遭遇からこんなに疲労が溜まって、私はこの後胃に穴が空いたりしないだろうか。ただそれだけが心配だった。
******
サブタイトルそのうちつけます。
まず、サミュエルがプラッといなくなって3日その街に足止めされたこと。その間にはクラウスが暇だからと街の人達の様々な悩みや魔物の討伐依頼を解決するのにこれまた私が暇だからと駆り出された。クラウスの公爵家嫡男としての使命は理解できるし尊敬も出来るが、正直巻き込むのはやめて欲しかった。
しかもクラウスは依頼を受け始めた時、街の住民何人かとその横柄な態度と勘違いされやすい言動から喧嘩していたのだ。それを止めていた私の身にもなって欲しいものだ。最終的に、足止めされていた分の宿代が無料 になったり、最終的には喧嘩した人含めて街の人達からの確実な信頼を勝ち得ていたのだが、それ以上に私の精神が削られた。
あとはサミュエルの『カヌレを食べれないなら、この場で全力の駄々をこねる』という発言だろうか。確実に急な思い付きなのだろうが、クラウスと一緒にカヌレを作らされたのは最低な思い出だ。
他にもサミュエルが怪しい商人から妙な気配を感じる壺を買わされそうになっていたり、彼の気まぐれで強力な魔物が群生している場所に立ち寄らされて、討伐に駆り出されたり。一生分の迷惑を掛けられた気がする。
そのせいで結局ポッシェ村に辿り着くまでにかかった日数は2週間だった。
***
「ここまで、本当に長かった……」
「うん、楽しかったよね」
「貴方のせいで私は道中全く楽しくなかったですが、それは自覚していますか?」
「そっか、じゃあ次はもっと楽しくなれるように頑張るよ。これから長い付き合いになるわけだし」
「……本気で勘弁してください」
私は何故、散々迷惑を掛けられた挙句に今後も迷惑を掛けてやるぞという発言をされているのだろう。私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。
助けを求めるようにクラウスに視線を送るが、肩をすくめられてしまった。あまりにも救いがない。
「あ!フィーアちゃん、おかえりなさい。帰ってくるの、今日だったのね」
「カンナさん、ただいま帰りました」
「あらあら。こんなイケメンを2人も連れ帰ってきちゃって……フィーアちゃんも隅に置けないわね~。どっちが恋人かしら。爽やか系イケメンの方?それとも厳つい系イケメンの方?それとも両方かしら」
「は????」
急に理解不能な内容をカンナさんに振られて、腹の底から低い声が出てしまった。彼女はなんて酷い勘違いをしているのだろうか。
「爽やか系イケメンだなんて、照れるな。以前お会いしましたよね。僕はサミュエルと申します。フィーアさんと将来を共にする者です」
「……クラウスだ。よろしく頼む」
「あらあら~。ご丁寧にありがとう。本当に両手に花なのね」
なんでサミュエルは勘違いされるような発言をわざわざするのだろう。最低すぎる。それに、クラウスが恋人だのなんだのという揶揄を否定しないのも気になる。長旅で疲れているのだろうか。
「どっちも恋人ではありません。特にサミュエルの方は基本的に愉快犯みたいなやつなので、信じないでください」
「もう~~。フィーアちゃんったら、照れちゃって可愛い」
なんでこんなぽっと出のサミュエルの方が私よりも信用があるのだろうか。軽く絶望した。
これは根気強く否定すれば否定するほどに私が照れて否定していると思われるパターンだとなんとなく察した。カンナさん以降は被害者を出さないために、特にサミュエルの方の紹介は遮っていこうと思う。
第一村人遭遇からこんなに疲労が溜まって、私はこの後胃に穴が空いたりしないだろうか。ただそれだけが心配だった。
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サブタイトルそのうちつけます。
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