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第二章:王都

26.一時的な帰還④

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「ぜん、しょう……?全部燃えたってこと??え、なんで???」
「燃えたのは3日前。燃えた原因は分かっていないんだけど、自然に発火したようではないっていうのだけ現段階では分かっているわ」

自然発火ではない。
それにここを出たのは1カ月前だ。火の不始末という可能性も低いだろう。
そこで考えられるのは、誰かに火を付けられた可能性。この村の人間が付けたことはあり得ない。そもそも疑いたくないというのが大前提だが、ここで調査されて犯人が浮上しないというのは、この村の人間が犯人ではないということだ。彼らの魔法技術は、王都にも引けを取らない。

私を恨んでいる人間。
このワードで思い浮かぶのは、やはりブレメンス王国の人間達である。
普通に王都で過ごしているだけで自然と情報が入ってくるのだが、私がいなくなった後のブレメンス王国は、干ばつや各地で頻発する自然災害に始まり、疫病の蔓延、王都内外含めた魔物の被害――。
なんとか内側に留めていたものが一気に噴き出したと言ったイメージだ。モリーはあんなに聖女の役目が簡単だと息巻いていたのに、あまりうまくやれていないようである。

上手くいかないという事実を私のせいにした逆恨みだろうか。いや、私は彼らにもう関わらないために、あの国に関係するものを全て捨てている。だからそう簡単に私の所在を見つけられるとは思えない。
それではこの国に来てから買った恨みでこんな事になったのだろうか。そう考えてみれば、今回この村に帰ってきたのも『恨み』が原因である。まだこっちの可能性のほうが考えられる。

「そっか。フィーアの家、なくなっちゃったんだね」
「……貴方の元で働く気は一切ありません」

しまった。家がなくなってしまった今のこの状況。しかも全燃ということは、蓄えも全てがない状態である。
それをこのサミュエルが見逃すはずあるだろうか。いや、ない。
私が知っているこの男であれば、確実にこの弱っている状況につけ込んでくるはずだ。

「いざとなれば、研究室に籠もりながら犯人を突き止めるので、ご心配なく。それよりも、もうすぐ授賞式です。早く帰りましょう」

そう。家が全焼したという情報で動揺しまくっていたが、今は私の家が燃えたことよりも授賞式だ。
既に現場保存のための魔法もかかっているという話だし、私は眼の前の問題を今は解決したい。私の家を燃やしたのが、ブレメンス王国の人間にしろ、この国に来てから関わりができた人間にしろ、どうせこの後正面からぶち当たる問題だろう。
であれば、今は余計な心配はせずに、授賞式のことだけ考えたい。

心に決めて、サミュエルとクラウスの手を取りながら、魔道具の魔法を発動させた。

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