上 下
24 / 78
第二章:王都

23.一時的な帰還①

しおりを挟む
「もしかして、友達いないんですか?」
「…………俺は、既に悪口を裏で言われているのを知っているだろう」
「そうですね、クラウスは確かに仕方がないと思います。でも私に対して、散々友達いないからね~~とかって揶揄ってきていた人がいた気がするんです」

ちらりと先程まで私の事を馬鹿にしていた顔以外の部分は褒められる部分のないこの男を見る。
すると彼は目を逸らして、何もない方向を見つめていた。非常に気まずそうな顔をしながら、頬には珍しく冷や汗がたらりと流れているのが伺えた。
本人にもきちんと自覚があるようで何よりである。ここで開き直って、ウザい態度を取ってたら、平手打ちをかましてた。

「…………酷い人もいたものだね」
「なんかその人ってこの国の王族だったと思うんですけど」
「ごめん。僕もこの王都で話せる人は兄上と両親、それに極一部の部下や君たちくらいしかいない」
「はあ。どうしましょう」
「僕から両親になんとか処置してもらうというのも出来るけど、君はそういう特別扱いみたいなの嫌がるでしょう」
「それは、まあ。なんか負けたみたいですし嫌ですけど」
「……僕達の魔力量じゃ足りない、よね?」
「一応聞いておきますが、二人の魔力量はどれくらいですか?」

この国では魔法という概念が力に直結するせいか、魔法に関することは全て等級付けされる。
これらの知識もポッシェ村に来てから教わった事であったが、この等級分けを知って、私は始めて自分の魔力や魔力量が他人とは桁が違うということを知ったのだ。
そんな私のランクは魔法の威力、即ち質に直結する『魔力』が最高ランクであるSS、そして『魔力量』が2万2千エルクスであった。
当然のことながら、質が上がれば上がるほどに、魔法を使う際の魔力量が低くなる。
初回測定時は、測定用の装置が壊れて、結局人間用ではなく業務用の装置を使ったことをふと思い出す。私で壊れるのであれば、その辺の人間には期待できないだろう。

この国の魔法水準は高い。
しかしながら平均値としては魔力がBランクで魔力量が500エルクス。普通の生活を送っていても問題ないというレベルだ。1000エクルスもあれば、バンバン魔法を使いまくれる……らしい。

けれど、そんな平均を突き破っていたはずの私ですら、予め魔力マーキングなしでかつ超長距離の瞬間移動となるポッシェ村まで行くための魔力は補いきれない。だからほぼ諦め半分で聞いた――のだが。

「僕が魔力がS+ランク、魔力量は2万5千エルクス、クラウスが魔力Aランク、魔力量が1万2千エルクスだよ」
「は!?」

全くの予想外の数値に、口から驚きの声が上がる。
それも当然のことだった。なにせ私が調べた限り、騎士団は魔物との戦いを専門としている者達が所属する場所であり、魔法での攻撃を専門とした魔導士団とは違う。だから基本的には平均より少し上というレベルの魔法を使える者のみが集まる場所なのである。
しかしこの二人の魔法のレベルはそんなものを軽く超えていた。サミュエルに関しては私と同等と言っても良いくらいのレベルである。

「貴方達二人って、騎士団所属ですよね?」
「うん。一応僕、師団長。クラウスはその補助」
「なんでそのランクで騎士やっているんですか??余裕で足りますよ、それ」

一方的に仕掛けられた、この理不尽に打ち勝てる道筋が見えた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

断罪されたので、私の過去を皆様に追体験していただきましょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が真実を白日の下に晒す最高の機会を得たお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?

秋月一花
恋愛
 本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。  ……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。  彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?  もう我慢の限界というものです。 「離婚してください」 「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」  白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?  あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。 ※カクヨム様にも投稿しています。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

処理中です...