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第二章:王都
18.初めての友達①
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「それでだな、このフィオレント魔法技術トーナメントは魔法式部門、魔道具部門、魔物研究部門、魔法薬部門に別れていて、その頻度こそ1年に1度という回数だが、この大会後に情報が公開されることで一気に国内の魔法水準が上がるということもあり、国で一番盛り上がる祭典なんだ。国を挙げての大会だからな、立場で選ばれるわけではなく、不正やズル、賄賂と言った行為も絶対に許されない。それ故に見られるのは純粋な実力のみなんだ……って聞いているのか?」
「はあ、その話っていつ終わる?あと何分聞いてればいいの??」
「お前がこの自分の受賞したものについて何も分かっていないから説明してるんだろうが!!ちゃんと聞け!!!」
「嫌よ!興味ない上に説明が長すぎるの!もう飽きたー。部屋帰る」
「っ~~お前!!」
あれから。
何故かクラウスと過ごす時間が長くなっていた。
サミュエルの方は、元々厄介な性格だと知っていた故に急に付きまとわれるようになっても、『ウザいな』くらいの感情しか抱かなかったのだが、クラウスの変わりようについては正直かなり驚いた。
何せ最初の出会いは最悪。そしてその後も完全に嫌われて妬まれ、恨まれるだろうとすら覚悟していたのだ。しかし今の態度はどうだろう。何も知らない……正確には興味が無さ過ぎて知ろうとすらしない私にまるで母親のように世話を焼いているのだ。
暫く一緒にいたら分かった。この人、口は悪いが、かなり世話焼きなタイプだ。これくらいじゃないとサミュエルと付き合っていけないのだろう。本当にそんな役回りで可哀想だと思う。
そんな世話焼きなクラウス。彼はいつの間にか、時間があれば私と魔道具に関する議論と研究・開発をする仲になっていた。流石に自分で国でも高い実力を持つ者に与えられる称号、『魔道具師』と名乗るだけはあり、確かにクラウスは私以上の知識を持っていると認めざるを得なかった。
彼も私の次点などと言われて揶揄われてはいたが、その長年の経験と研究から培われてきた知識は、私がポッシェ村にいた時と同じくらいに良い刺激を与えてくれることもあり、魔道具や魔法の話をしている時は確かに楽しかった。
しかしーー。
「自分の部屋に逃げるな!!俺はこれでも善意でお前にこのトーナメントについて教えて――」
このトーナメントやルールといったものに対する堅苦しい態度だけはどうにも受け入れられなかった。
今現在も進行形で授賞式のリハーサル後に、会場になる予定の場所で、こうやって知識の詰め込みと説教をされている。
そもそもが、このような行事に抵抗があることと興味がないことが相まって真面目に聞けないのだ。そしてそれをクラウスに怒られてまた更に詰まらない気持ちになる。彼と議論を交わす楽しい時間がある分、その落差が激しいのだ。
だから普段よりも嫌な態度をとってしまう。そんな悪循環を繰り返していた。
「もうその話嫌い!!聞きたくない!次その話したら魔法でアンタの肩パッドちぎって黙らせるから!!!」
「肩パッドを俺の急所みたいに言うのやめろ!!というかちぎれる素材じゃないし、なにより肩パッドじゃない!お前、俺を抜いての最優秀賞と皇族賞なんだから、国王や民の前で受賞者としての挨拶をしないといけないんだぞ!?」
「知らないもーん。肩パッドがやればいいじゃん。私よりもやる気があるんだから」
「……はあ。お前は本当に……」
先程の態度とは打って変わって、一気に暗い声になるクラウス。聞いたことのない程に冷たい声だった。
呆れられた?彼の失望したような表情を見て、一瞬ヒヤリとする。
あれ?私今なんでヒヤリとなんてしたの?
慣れない感覚に、部屋に帰ろうとしていたにも関わらず、身体が固まった。そしてそれ以上何も言えなくなってしまう。
クラウスの方も、怒っているのか何かを話す気配はなかった。部屋に気まずい沈黙が流れた。
「はあ、その話っていつ終わる?あと何分聞いてればいいの??」
「お前がこの自分の受賞したものについて何も分かっていないから説明してるんだろうが!!ちゃんと聞け!!!」
「嫌よ!興味ない上に説明が長すぎるの!もう飽きたー。部屋帰る」
「っ~~お前!!」
あれから。
何故かクラウスと過ごす時間が長くなっていた。
サミュエルの方は、元々厄介な性格だと知っていた故に急に付きまとわれるようになっても、『ウザいな』くらいの感情しか抱かなかったのだが、クラウスの変わりようについては正直かなり驚いた。
何せ最初の出会いは最悪。そしてその後も完全に嫌われて妬まれ、恨まれるだろうとすら覚悟していたのだ。しかし今の態度はどうだろう。何も知らない……正確には興味が無さ過ぎて知ろうとすらしない私にまるで母親のように世話を焼いているのだ。
暫く一緒にいたら分かった。この人、口は悪いが、かなり世話焼きなタイプだ。これくらいじゃないとサミュエルと付き合っていけないのだろう。本当にそんな役回りで可哀想だと思う。
そんな世話焼きなクラウス。彼はいつの間にか、時間があれば私と魔道具に関する議論と研究・開発をする仲になっていた。流石に自分で国でも高い実力を持つ者に与えられる称号、『魔道具師』と名乗るだけはあり、確かにクラウスは私以上の知識を持っていると認めざるを得なかった。
彼も私の次点などと言われて揶揄われてはいたが、その長年の経験と研究から培われてきた知識は、私がポッシェ村にいた時と同じくらいに良い刺激を与えてくれることもあり、魔道具や魔法の話をしている時は確かに楽しかった。
しかしーー。
「自分の部屋に逃げるな!!俺はこれでも善意でお前にこのトーナメントについて教えて――」
このトーナメントやルールといったものに対する堅苦しい態度だけはどうにも受け入れられなかった。
今現在も進行形で授賞式のリハーサル後に、会場になる予定の場所で、こうやって知識の詰め込みと説教をされている。
そもそもが、このような行事に抵抗があることと興味がないことが相まって真面目に聞けないのだ。そしてそれをクラウスに怒られてまた更に詰まらない気持ちになる。彼と議論を交わす楽しい時間がある分、その落差が激しいのだ。
だから普段よりも嫌な態度をとってしまう。そんな悪循環を繰り返していた。
「もうその話嫌い!!聞きたくない!次その話したら魔法でアンタの肩パッドちぎって黙らせるから!!!」
「肩パッドを俺の急所みたいに言うのやめろ!!というかちぎれる素材じゃないし、なにより肩パッドじゃない!お前、俺を抜いての最優秀賞と皇族賞なんだから、国王や民の前で受賞者としての挨拶をしないといけないんだぞ!?」
「知らないもーん。肩パッドがやればいいじゃん。私よりもやる気があるんだから」
「……はあ。お前は本当に……」
先程の態度とは打って変わって、一気に暗い声になるクラウス。聞いたことのない程に冷たい声だった。
呆れられた?彼の失望したような表情を見て、一瞬ヒヤリとする。
あれ?私今なんでヒヤリとなんてしたの?
慣れない感覚に、部屋に帰ろうとしていたにも関わらず、身体が固まった。そしてそれ以上何も言えなくなってしまう。
クラウスの方も、怒っているのか何かを話す気配はなかった。部屋に気まずい沈黙が流れた。
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