11 / 79
第一章:序章
10.理不尽
しおりを挟む
ポッシェ村を出て四日。
王都ほどではないが、国内でも上位の都市であり、広大さを誇るエルディムという街にソフィアは到着する。
ここまでカンナ達が予め渡していた予定表通りであり、王都までの旅は順調かと思えた――が今、現在進行形で理不尽な壁にぶち当たっていた。
「昨日この街に到着した段階で、私が予約してたじゃない!!客が入ったから、私は明々後日の便に変更?ふざけないでください!!」
「無理なものは無理ですね。お帰りください」
王都直行の魔導車の停留所にて。既に昨日の段階で予約していた便に乗りに来たら、係員はこの態度で私のことをあしらった。いざ乗ろうとチケットを差し出した瞬間、特に謝られることもなくこれだったのだ。最低限の事情説明や軽い謝罪すらもない。怒るのも仕方がない事だろう。というかこんな理不尽なことをされたら、誰でもキレると思う。
魔導車――魔力で動く、4輪の車。特に今回の王都行の魔導車は、かなり大型であり、揺れ防止の魔法がかかっているというとても珍しいモノ。やろうと思えば、中でスポーツすらも出来る。車内でできないことはない――との宣伝文句だった。
曰く、世界一快適な旅を提供するらしい。ポッシェ村の皆に噂を聞いて、ブレメンス王国にはなかったソレに実際に乗ってみることを少しだけ楽しみにしていた私は、落ち込むどころの騒ぎではなかった。それに予約をしていたのにあんな態度で断られたのだ。
はいそうですかと大人しく引き下がることは出来なかった。
「ねえ、うるさいんだけど?」
「あ、す、すみません。今すぐ対処しますので……!」
「……原因、この女?」
「っそ、うです」
「原因も何も、私は元々この魔導車を予約していたのよ!!」
魔導車の中から出てきた背の高い、肩部分に特徴的な尖りがある鎧を纏った灰色の珍しい髪色の男が、私を見るなり面倒臭そうに係員に文句を言う。
あまりにも酷い態度に反論するが、男はそんな私の言葉を聞くことはなかった。
「あーハイハイ。お前、うるさい。この魔導車は既に埋まってるんだっつーの。外でギャーギャー騒ぐな。どこの馬の骨とも知れぬお前と違って、これには一応は高貴なお方が乗るんだよ。さっさと散れ。シッシッ」
私のことを馬の骨と言い放ち、軽く馬鹿にした態度で追い払おうとしてくる。
私のことをその辺の無力な一般人だと思っているようで背中の大剣を抜く気配はないが、少しでもしつこくするとすぐにでも叩き切るというのが彼の態度からひしひしと伝わって来た。
これ以上言い争ってもきっと自分に利はない。むしろ剣を抜かせたら戦闘になって、後々各所で怒られることが簡単に予想できた。だから、こっそりと溜息を吐いて、溜まった怒りを抜く――
「客を差別するわ、断るにしてもさっきから係員もあんな態度だわ、中から出てきた変な肩パッド鎧のやつも言ってることが本当に最低!!こんな魔導車会社潰れろ!!」
のは完全には出来なかったので文句が口から飛び出たが、叫んだのと同時にとある仕掛けをしてその場を後にする。『変な肩パッド鎧ってなんだ!訂正しろ!!』との声が背後から聞こえたが、当然のように無視をして歩き続けた。
今の時間からでは、他の会社の魔道車を予約してすぐに乗るということもできない。なにしろアレは予約しても乗れるのは1週間後などという代物だ。それに他の馬車やら自転車やらの乗り物を借りたとしても、速度的には間に合わないことが分かりきっている。
しかし予定通りに王都に到着できずに、表彰式に参加出来なかった――なんてことになった日には、カンナにお仕置きされるどころの話ではない事が簡単に予測できる。想像するだけで身震いをしてしまった。方法はたった一つ。
「アレをやるしかない、よね。きっと皆も事情を聞いたら怒らない!」
そう、言い訳をした口には自然と笑みが浮かんでいた。
******
今後の更新について:
今日から暫く残業が続くので、この作品含めて投稿作業ができるか分かりません。
王都ほどではないが、国内でも上位の都市であり、広大さを誇るエルディムという街にソフィアは到着する。
ここまでカンナ達が予め渡していた予定表通りであり、王都までの旅は順調かと思えた――が今、現在進行形で理不尽な壁にぶち当たっていた。
「昨日この街に到着した段階で、私が予約してたじゃない!!客が入ったから、私は明々後日の便に変更?ふざけないでください!!」
「無理なものは無理ですね。お帰りください」
王都直行の魔導車の停留所にて。既に昨日の段階で予約していた便に乗りに来たら、係員はこの態度で私のことをあしらった。いざ乗ろうとチケットを差し出した瞬間、特に謝られることもなくこれだったのだ。最低限の事情説明や軽い謝罪すらもない。怒るのも仕方がない事だろう。というかこんな理不尽なことをされたら、誰でもキレると思う。
魔導車――魔力で動く、4輪の車。特に今回の王都行の魔導車は、かなり大型であり、揺れ防止の魔法がかかっているというとても珍しいモノ。やろうと思えば、中でスポーツすらも出来る。車内でできないことはない――との宣伝文句だった。
曰く、世界一快適な旅を提供するらしい。ポッシェ村の皆に噂を聞いて、ブレメンス王国にはなかったソレに実際に乗ってみることを少しだけ楽しみにしていた私は、落ち込むどころの騒ぎではなかった。それに予約をしていたのにあんな態度で断られたのだ。
はいそうですかと大人しく引き下がることは出来なかった。
「ねえ、うるさいんだけど?」
「あ、す、すみません。今すぐ対処しますので……!」
「……原因、この女?」
「っそ、うです」
「原因も何も、私は元々この魔導車を予約していたのよ!!」
魔導車の中から出てきた背の高い、肩部分に特徴的な尖りがある鎧を纏った灰色の珍しい髪色の男が、私を見るなり面倒臭そうに係員に文句を言う。
あまりにも酷い態度に反論するが、男はそんな私の言葉を聞くことはなかった。
「あーハイハイ。お前、うるさい。この魔導車は既に埋まってるんだっつーの。外でギャーギャー騒ぐな。どこの馬の骨とも知れぬお前と違って、これには一応は高貴なお方が乗るんだよ。さっさと散れ。シッシッ」
私のことを馬の骨と言い放ち、軽く馬鹿にした態度で追い払おうとしてくる。
私のことをその辺の無力な一般人だと思っているようで背中の大剣を抜く気配はないが、少しでもしつこくするとすぐにでも叩き切るというのが彼の態度からひしひしと伝わって来た。
これ以上言い争ってもきっと自分に利はない。むしろ剣を抜かせたら戦闘になって、後々各所で怒られることが簡単に予想できた。だから、こっそりと溜息を吐いて、溜まった怒りを抜く――
「客を差別するわ、断るにしてもさっきから係員もあんな態度だわ、中から出てきた変な肩パッド鎧のやつも言ってることが本当に最低!!こんな魔導車会社潰れろ!!」
のは完全には出来なかったので文句が口から飛び出たが、叫んだのと同時にとある仕掛けをしてその場を後にする。『変な肩パッド鎧ってなんだ!訂正しろ!!』との声が背後から聞こえたが、当然のように無視をして歩き続けた。
今の時間からでは、他の会社の魔道車を予約してすぐに乗るということもできない。なにしろアレは予約しても乗れるのは1週間後などという代物だ。それに他の馬車やら自転車やらの乗り物を借りたとしても、速度的には間に合わないことが分かりきっている。
しかし予定通りに王都に到着できずに、表彰式に参加出来なかった――なんてことになった日には、カンナにお仕置きされるどころの話ではない事が簡単に予測できる。想像するだけで身震いをしてしまった。方法はたった一つ。
「アレをやるしかない、よね。きっと皆も事情を聞いたら怒らない!」
そう、言い訳をした口には自然と笑みが浮かんでいた。
******
今後の更新について:
今日から暫く残業が続くので、この作品含めて投稿作業ができるか分かりません。
251
お気に入りに追加
3,286
あなたにおすすめの小説

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる
櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。
彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。
だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。
私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。
またまた軽率に短編。
一話…マリエ視点
二話…婚約者視点
三話…子爵令嬢視点
四話…第二王子視点
五話…マリエ視点
六話…兄視点
※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。
スピンオフ始めました。
「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

婚約破棄のその後に
ゆーぞー
恋愛
「ライラ、婚約は破棄させてもらおう」
来月結婚するはずだった婚約者のレナード・アイザックス様に王宮の夜会で言われてしまった。しかもレナード様の隣には侯爵家のご令嬢メリア・リオンヌ様。
「あなた程度の人が彼と結婚できると本気で考えていたの?」
一方的に言われ混乱している最中、王妃様が現れて。
見たことも聞いたこともない人と結婚することになってしまった。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

聖女は妹ではありません。本物の聖女は、私の方です
光子
恋愛
私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。
特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。
「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」
傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。
でも違う、私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けて、私を独り占めしようと、全てを私に似せ、奪い、閉じ込めた。
冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。
私は妹が大嫌いだった。
でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。
「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」
――――ずっと我慢してたけど、もう限界。
好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ?
今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。
丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。
さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。
泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。
本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる