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第一章:序章
10.理不尽
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ポッシェ村を出て四日。
王都ほどではないが、国内でも上位の都市であり、広大さを誇るエルディムという街にソフィアは到着する。
ここまでカンナ達が予め渡していた予定表通りであり、王都までの旅は順調かと思えた――が今、現在進行形で理不尽な壁にぶち当たっていた。
「昨日この街に到着した段階で、私が予約してたじゃない!!客が入ったから、私は明々後日の便に変更?ふざけないでください!!」
「無理なものは無理ですね。お帰りください」
王都直行の魔導車の停留所にて。既に昨日の段階で予約していた便に乗りに来たら、係員はこの態度で私のことをあしらった。いざ乗ろうとチケットを差し出した瞬間、特に謝られることもなくこれだったのだ。最低限の事情説明や軽い謝罪すらもない。怒るのも仕方がない事だろう。というかこんな理不尽なことをされたら、誰でもキレると思う。
魔導車――魔力で動く、4輪の車。特に今回の王都行の魔導車は、かなり大型であり、揺れ防止の魔法がかかっているというとても珍しいモノ。やろうと思えば、中でスポーツすらも出来る。車内でできないことはない――との宣伝文句だった。
曰く、世界一快適な旅を提供するらしい。ポッシェ村の皆に噂を聞いて、ブレメンス王国にはなかったソレに実際に乗ってみることを少しだけ楽しみにしていた私は、落ち込むどころの騒ぎではなかった。それに予約をしていたのにあんな態度で断られたのだ。
はいそうですかと大人しく引き下がることは出来なかった。
「ねえ、うるさいんだけど?」
「あ、す、すみません。今すぐ対処しますので……!」
「……原因、この女?」
「っそ、うです」
「原因も何も、私は元々この魔導車を予約していたのよ!!」
魔導車の中から出てきた背の高い、肩部分に特徴的な尖りがある鎧を纏った灰色の珍しい髪色の男が、私を見るなり面倒臭そうに係員に文句を言う。
あまりにも酷い態度に反論するが、男はそんな私の言葉を聞くことはなかった。
「あーハイハイ。お前、うるさい。この魔導車は既に埋まってるんだっつーの。外でギャーギャー騒ぐな。どこの馬の骨とも知れぬお前と違って、これには一応は高貴なお方が乗るんだよ。さっさと散れ。シッシッ」
私のことを馬の骨と言い放ち、軽く馬鹿にした態度で追い払おうとしてくる。
私のことをその辺の無力な一般人だと思っているようで背中の大剣を抜く気配はないが、少しでもしつこくするとすぐにでも叩き切るというのが彼の態度からひしひしと伝わって来た。
これ以上言い争ってもきっと自分に利はない。むしろ剣を抜かせたら戦闘になって、後々各所で怒られることが簡単に予想できた。だから、こっそりと溜息を吐いて、溜まった怒りを抜く――
「客を差別するわ、断るにしてもさっきから係員もあんな態度だわ、中から出てきた変な肩パッド鎧のやつも言ってることが本当に最低!!こんな魔導車会社潰れろ!!」
のは完全には出来なかったので文句が口から飛び出たが、叫んだのと同時にとある仕掛けをしてその場を後にする。『変な肩パッド鎧ってなんだ!訂正しろ!!』との声が背後から聞こえたが、当然のように無視をして歩き続けた。
今の時間からでは、他の会社の魔道車を予約してすぐに乗るということもできない。なにしろアレは予約しても乗れるのは1週間後などという代物だ。それに他の馬車やら自転車やらの乗り物を借りたとしても、速度的には間に合わないことが分かりきっている。
しかし予定通りに王都に到着できずに、表彰式に参加出来なかった――なんてことになった日には、カンナにお仕置きされるどころの話ではない事が簡単に予測できる。想像するだけで身震いをしてしまった。方法はたった一つ。
「アレをやるしかない、よね。きっと皆も事情を聞いたら怒らない!」
そう、言い訳をした口には自然と笑みが浮かんでいた。
******
今後の更新について:
今日から暫く残業が続くので、この作品含めて投稿作業ができるか分かりません。
王都ほどではないが、国内でも上位の都市であり、広大さを誇るエルディムという街にソフィアは到着する。
ここまでカンナ達が予め渡していた予定表通りであり、王都までの旅は順調かと思えた――が今、現在進行形で理不尽な壁にぶち当たっていた。
「昨日この街に到着した段階で、私が予約してたじゃない!!客が入ったから、私は明々後日の便に変更?ふざけないでください!!」
「無理なものは無理ですね。お帰りください」
王都直行の魔導車の停留所にて。既に昨日の段階で予約していた便に乗りに来たら、係員はこの態度で私のことをあしらった。いざ乗ろうとチケットを差し出した瞬間、特に謝られることもなくこれだったのだ。最低限の事情説明や軽い謝罪すらもない。怒るのも仕方がない事だろう。というかこんな理不尽なことをされたら、誰でもキレると思う。
魔導車――魔力で動く、4輪の車。特に今回の王都行の魔導車は、かなり大型であり、揺れ防止の魔法がかかっているというとても珍しいモノ。やろうと思えば、中でスポーツすらも出来る。車内でできないことはない――との宣伝文句だった。
曰く、世界一快適な旅を提供するらしい。ポッシェ村の皆に噂を聞いて、ブレメンス王国にはなかったソレに実際に乗ってみることを少しだけ楽しみにしていた私は、落ち込むどころの騒ぎではなかった。それに予約をしていたのにあんな態度で断られたのだ。
はいそうですかと大人しく引き下がることは出来なかった。
「ねえ、うるさいんだけど?」
「あ、す、すみません。今すぐ対処しますので……!」
「……原因、この女?」
「っそ、うです」
「原因も何も、私は元々この魔導車を予約していたのよ!!」
魔導車の中から出てきた背の高い、肩部分に特徴的な尖りがある鎧を纏った灰色の珍しい髪色の男が、私を見るなり面倒臭そうに係員に文句を言う。
あまりにも酷い態度に反論するが、男はそんな私の言葉を聞くことはなかった。
「あーハイハイ。お前、うるさい。この魔導車は既に埋まってるんだっつーの。外でギャーギャー騒ぐな。どこの馬の骨とも知れぬお前と違って、これには一応は高貴なお方が乗るんだよ。さっさと散れ。シッシッ」
私のことを馬の骨と言い放ち、軽く馬鹿にした態度で追い払おうとしてくる。
私のことをその辺の無力な一般人だと思っているようで背中の大剣を抜く気配はないが、少しでもしつこくするとすぐにでも叩き切るというのが彼の態度からひしひしと伝わって来た。
これ以上言い争ってもきっと自分に利はない。むしろ剣を抜かせたら戦闘になって、後々各所で怒られることが簡単に予想できた。だから、こっそりと溜息を吐いて、溜まった怒りを抜く――
「客を差別するわ、断るにしてもさっきから係員もあんな態度だわ、中から出てきた変な肩パッド鎧のやつも言ってることが本当に最低!!こんな魔導車会社潰れろ!!」
のは完全には出来なかったので文句が口から飛び出たが、叫んだのと同時にとある仕掛けをしてその場を後にする。『変な肩パッド鎧ってなんだ!訂正しろ!!』との声が背後から聞こえたが、当然のように無視をして歩き続けた。
今の時間からでは、他の会社の魔道車を予約してすぐに乗るということもできない。なにしろアレは予約しても乗れるのは1週間後などという代物だ。それに他の馬車やら自転車やらの乗り物を借りたとしても、速度的には間に合わないことが分かりきっている。
しかし予定通りに王都に到着できずに、表彰式に参加出来なかった――なんてことになった日には、カンナにお仕置きされるどころの話ではない事が簡単に予測できる。想像するだけで身震いをしてしまった。方法はたった一つ。
「アレをやるしかない、よね。きっと皆も事情を聞いたら怒らない!」
そう、言い訳をした口には自然と笑みが浮かんでいた。
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今後の更新について:
今日から暫く残業が続くので、この作品含めて投稿作業ができるか分かりません。
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