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第一章:序章
6.魔道具③
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ポッシェ村に増設された魔道具のエントリー窓口に到着する。
少し前に知った事実だが、この魔法や魔道具が国全体で発展しているらしいフィオレント帝国内でも、この村は『魔道具の祖』と呼ばれる程に優れた魔道具師が集まっている場所であり、多くの魔道具が生みだされ続けている地だった。
列に並ぶと、魔道具をエントリーしている人間達の話し声が聞こえてくる。少しヘンテコな性能の魔道具から、確かにこれは便利だ!と舌を巻くものまで様々なものが出揃っていた。
そういう発想から、次の魔道具の構想を練っていると私の番が回ってきた。
「えーっと、次はフィーア=アドラインさん。君は初出場だね。魔道具と書類をこちらに」
「はい」
新たに取得した名前を呼ばれる。
トリプレートという家名を捨てはしたが、『ソフィア』という元の名前に近いものを新たな名前として選んだ。これには大した意味はない。ただ名前までを全く呼び慣れていないものにしてしまうと、呼ばれた時に反応に遅れ、ボロが出た上、怪しまれてしまう可能性があると思っただけだ。
係員を務める白衣を着た男に、掌サイズの白い球体と魔道具の検証結果などが書かれた書類を渡す。
「性能は――聖域化結界!?」
「はい。記載されている通り、Sランクの魔物でも入ることが出来ない結界です。Aランク程度の魔物はその結界を張った瞬間に死滅します。Aランク以上になると、弱体化することも確認しました」
係員が一つ一つの項目の確認事項を私に確認していき、魔道具性能に行き当たったところで、驚きの声をあげた。
これについては元々自信があったこともあり、少し得意げになりながら性能を説明した。
「これ……本当に君が作ったのかい?」
「は?当然でしょう?私が作ってなかったら、こんなところに持ってこないわ」
「いや、そういう意味じゃないんだ。疑ったように聞こえたなら、すまない。そうか……19歳というその若さでこれを――」
「おい、聞いたか!?あの子の魔道具、結界だって」
「しかも、19歳……とんでもない才能が出てきたな」
「その魔道具の検証、俺にも一枚噛ませてくれ!!」
「あー!ずりぃ!!それ、俺も!!!!」
男が驚いて、大きな声を出したせいだろう。先程から視線は感じていたが、話題が一気に私の創った魔道具と彼女の年齢についてというものになり、膨れ上がる。
元々自信はあったが、ここまで注目されるとは思っていなかった故に、今更ながら注目を集めすぎて少し恥ずかしくなってくる。
しかしそれもこの世界の魔法事情を鑑みれば、当然の事とも言えるかもしれない。そう外の世界に出たからこそ思う。
基本的に結界系の魔法が使える人間は、どの国にも極々稀にしか生まれてこない。まさに天から与えられた才。聖女や聖人と呼ばれる人間しか使えないのだ。旅の中で通りがかったどの国の文献でも、私と同じ魔法を使える人間は極々少数であった。それにそういう存在には、今のところで会っていない。
それ故に、持ち運び可能でどこででも展開可能という結界系の魔法の魔道具化はまさに前人未到と言えるのだろう。
係員の男と周囲は、慣れない雰囲気の中で若干キョドキョドしている私の事はお構いなしに、魔道具に関する性能に対して質問したり、実際に魔道具の性能を武器や魔法で試すことで、賛美の言葉を送り続けている。
それに加えてすぐにどうやって創ったのかなどという話題で盛り上がっていた。彼らはきっと、心底魔道具というものを愛しているのだろう。終始どこか楽しそうだった。
そんな今迄に感じたことのない空気がこっぱずかしくて、褒められるのが嬉しくて、この場所が少しだけ好きになり始めていた。
少し前に知った事実だが、この魔法や魔道具が国全体で発展しているらしいフィオレント帝国内でも、この村は『魔道具の祖』と呼ばれる程に優れた魔道具師が集まっている場所であり、多くの魔道具が生みだされ続けている地だった。
列に並ぶと、魔道具をエントリーしている人間達の話し声が聞こえてくる。少しヘンテコな性能の魔道具から、確かにこれは便利だ!と舌を巻くものまで様々なものが出揃っていた。
そういう発想から、次の魔道具の構想を練っていると私の番が回ってきた。
「えーっと、次はフィーア=アドラインさん。君は初出場だね。魔道具と書類をこちらに」
「はい」
新たに取得した名前を呼ばれる。
トリプレートという家名を捨てはしたが、『ソフィア』という元の名前に近いものを新たな名前として選んだ。これには大した意味はない。ただ名前までを全く呼び慣れていないものにしてしまうと、呼ばれた時に反応に遅れ、ボロが出た上、怪しまれてしまう可能性があると思っただけだ。
係員を務める白衣を着た男に、掌サイズの白い球体と魔道具の検証結果などが書かれた書類を渡す。
「性能は――聖域化結界!?」
「はい。記載されている通り、Sランクの魔物でも入ることが出来ない結界です。Aランク程度の魔物はその結界を張った瞬間に死滅します。Aランク以上になると、弱体化することも確認しました」
係員が一つ一つの項目の確認事項を私に確認していき、魔道具性能に行き当たったところで、驚きの声をあげた。
これについては元々自信があったこともあり、少し得意げになりながら性能を説明した。
「これ……本当に君が作ったのかい?」
「は?当然でしょう?私が作ってなかったら、こんなところに持ってこないわ」
「いや、そういう意味じゃないんだ。疑ったように聞こえたなら、すまない。そうか……19歳というその若さでこれを――」
「おい、聞いたか!?あの子の魔道具、結界だって」
「しかも、19歳……とんでもない才能が出てきたな」
「その魔道具の検証、俺にも一枚噛ませてくれ!!」
「あー!ずりぃ!!それ、俺も!!!!」
男が驚いて、大きな声を出したせいだろう。先程から視線は感じていたが、話題が一気に私の創った魔道具と彼女の年齢についてというものになり、膨れ上がる。
元々自信はあったが、ここまで注目されるとは思っていなかった故に、今更ながら注目を集めすぎて少し恥ずかしくなってくる。
しかしそれもこの世界の魔法事情を鑑みれば、当然の事とも言えるかもしれない。そう外の世界に出たからこそ思う。
基本的に結界系の魔法が使える人間は、どの国にも極々稀にしか生まれてこない。まさに天から与えられた才。聖女や聖人と呼ばれる人間しか使えないのだ。旅の中で通りがかったどの国の文献でも、私と同じ魔法を使える人間は極々少数であった。それにそういう存在には、今のところで会っていない。
それ故に、持ち運び可能でどこででも展開可能という結界系の魔法の魔道具化はまさに前人未到と言えるのだろう。
係員の男と周囲は、慣れない雰囲気の中で若干キョドキョドしている私の事はお構いなしに、魔道具に関する性能に対して質問したり、実際に魔道具の性能を武器や魔法で試すことで、賛美の言葉を送り続けている。
それに加えてすぐにどうやって創ったのかなどという話題で盛り上がっていた。彼らはきっと、心底魔道具というものを愛しているのだろう。終始どこか楽しそうだった。
そんな今迄に感じたことのない空気がこっぱずかしくて、褒められるのが嬉しくて、この場所が少しだけ好きになり始めていた。
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