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第一章:序章
2.終止符
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経緯説明部分なので、ここだけ三人称です。
******
ソフィアにとっての悲劇……それはこの時代にこの家――公爵家に女という立場で産まれてしまったことだ。
大前提として、ソフィアの両親は厳密には双方同意の上での結婚ではない。
当時公爵家の一人娘であったが、聖女の能力を引き継いでいなかったが、当時家を継ぐことが既に決まっていたソフィアの母親が一方的に当時の騎士見習いをしていたソフィアの父親に一目惚れし、公爵家の当主である自身の両親――ソフィアから見ると祖父母――に対して彼を結婚相手にして欲しいと頼み込んだのだ。そうして、その婚約が結ばれた。
ここまでであればよくある身分の高い女性の初恋のロマンチックなお話。逆シンデレラストーリーというやつだろう。
しかし当時、母が欲した父には結婚を約束した相手がいた。そこが問題だった。
だが、恋は盲目とはよく言ったものである。悪い意味で挫折を知らない貴族令嬢であった彼女にとってはそんな問題些細なことでしかなかった。
彼女の精神は、蝶よ花よと育てられ、誰にも侵されたことのない温室で培われてきた。頭の中はいつでもお綺麗なモノだけで満たされていた彼女。憧れるのは恋愛小説の様に甘美で優雅、そして素敵な恋であり、自分もいつかそういう恋をするのだと信じ込んでいた彼女は初めての恋に対して盲目になっていた。そうして至ってはいけない考えに身を委ねてしまう。
『彼に今好きな人がいたとしても、それは一時的なもの。だって人の気持ちは変わるものだから。結婚して毎日求愛すれば、彼の心も自分の方に傾いてくれるはずよ!だって私は公爵家の一人娘で、特別なのだから』
そうして二人は結婚した……半ば無理矢理に。男は式ギリギリまで結婚を渋っていたが、最終的には公爵家の権力に屈したらしい。結婚式には素直に参加していたそうだ。
そうして始まった二人の新婚生活。しかしソレは彼女が待ち望んでいたような甘いものではなかった。
男は彼女に最初から最後まで対して心を開こうとしなかったのだ。毎日毎日一生懸命話しかけても事務的な言葉しか返ってこない一方的な会話。夫婦なのだから、肌を触れ合わせようとしてみれば、嫌そうに顔を歪められ、拒否をされる。
そんな日々に彼女の心は疲弊していった。今まで味わったことのなかった初めての挫折だ。
けれどそんな状況で彼女は更なる悪手を選んでしまうこととなる。公爵家の血筋を絶対に途絶えさせまい、という周りの意志に急かされたこともあったのだろう。こう考えてしまったのだ。
『子供を作ったら、今度こそ彼の関心を寄せてもらえるかもしれない。だって、尊い血筋の子供なのよ?そしてそのまま彼の心を少しでもその子に縛り付けられたならば――』
そうして一方的な愛の成れの果てに産まれたのがソフィアだった。
ソフィアには両親に愛された記憶がない。あるのはただただ苦しい、閉塞感の様な感覚のみ。
6歳を超えるころには聖女として目が回るような忙しさの仕事がそこに加えられ、公爵家にいても外に居ても気が休まる瞬間はなかった。
物心ついた頃には既に、貴族としての教育が開始され、完璧以外は求められない。少しでも失敗すると折檻される。
かといってそれ以外の時間も休まることなどない。家の雰囲気はいつでも冷たく、父親と会えっても、最低限の事務的な会話があればいい方。基本的には、まるで化け物を見るかの様な目でソフィアを見つめてくる。婿に入ったと言えど、この家では既に祖父母が他界し、当主の立場を寝込んでいる母親の代わりに継いだ父親の立場がそれなりに強くなっていた。家に仕えている使用人達も大事にされていないものというのは見分けがつくのだろう。流石に身体に傷が残るようなことをされることはなかったが、陰口を叩かれたり、ご飯を抜かれることもあった。
神経が張り詰められたような場所で息をすることだけが辛うじて許されている状態。
母親はソフィア自身を見てくれたことなどない。彼女が求めるのはいつでも父親の面影。そして父親の関心を少しでも寄せるための道具。皮肉なことだ。ソフィアも父親からなんとも思われていない……それどころか恨まれてすらいるかもしれないのに、母はずっとソフィアによって父から感情を――愛を返してもらえると思い込んでいた。命が終わる最後の瞬間まで父が目の前に現れて、自分への気持ちに気付いて愛を囁いてくれると思っていた。
でも結局父が自分から母の目の前に現れることはなかったのだが。
だから、ずっとこの場所にソフィアの居場所はなかった。
こうしてソフィアの母が死んだのは2年前。元々患っていた自律神経失調症が遠因なのではないかと言われた。
息を引き取る前の母は食欲もなく、眠ろうとしても眠ることが出来ないという症状を訴え続けていた。そんなことを言った所で父は会いに来ることはなかったが。それが更に哀れさを強調した。ソフィアは一人思ったのだ。『可哀そうな人だな』と。母親の死にはそれ以外の感想は抱けなかった。
しかし、一つだけ印象に残った事がある死の間際、『あいつらだけは絶対に許さない』と言って酷く表情を歪めていたのだ。ずっとなんのことだろうと思っていた。しかし、それは母親の葬式の後に嫌でも理解することになった。
無感情で終えた母の葬式。その直後に義理の母とそして自分とほぼ同い年の腹違いの妹を紹介されることになる事はソフィアにも予想外であった。でもそれと同時に納得がいった。父はずっとこの女性とその間に産まれた子供がいたからこそあの状況に耐えてきたのだ、と。愛する人を裏切らざるをえない状況で、無理矢理好きでもない女との間に作ってしまった自分の存在を許せなかったのだ、と。
そして母の最期の言葉――許さない――とはこの二人に向けたことなのだ、と。
***
そこからソフィアの地獄は加速する。ソフィアの居場所は母が生きていた頃以上になくなったのだ。
毎朝ある聖女の仕事を終えた後、7年前――12歳の頃に出来た婚約者に会いに行けば、自分の自慢話をした後、それと比較するかのようにソフィアに対するこき下ろしの連続。以前の舞踏会で自分自身のミスで恥をかいたくせに、それすらも彼の頭の中では全て一緒にいたソフィアのせいになっていた時には怒りを通り越して呆れてしまった。
そして家に帰れば今まで見たことのない程に幸せそうな父親の笑顔とそれを向けられる異母妹、そして義母。けれどソフィアが帰ってきたと認識すると同時、一斉に向けられる冷ややかな視線――。
嫌だった。公爵家としての仕事も、自己中心的な愛で自分をこの世に産み出した上に一人残して死んだ母親も、自分に全て仕事を押し付けた上で死んだ祖父母も、公爵家を憎んでいる父親も、幸せそうに笑う義母も異母妹も、婚約者も、自分をこんな地獄に突き落とした人間共が口を揃えて語る『愛』という感情も……全てが嫌で嫌で仕方がなかった。
だから本当に嬉しかったのだ。異母妹が『愛』なんていう戯言を吐きながら、婚約者も聖女の仕事も全てを受け入れると言ったことが。肝心なことを何も分かっていないその愚かな言動を初めて愛おしいとすら思った。今までの恨みを全て帳消しにできる程に。
なにせ、これからソフィアを追い出したこの国は滅びるのだ。千年以上、女神の力――聖女に頼り続けて来たその歴史に終止符を打つ……王族と公爵家の人間の失態によって。
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ソフィアにとっての悲劇……それはこの時代にこの家――公爵家に女という立場で産まれてしまったことだ。
大前提として、ソフィアの両親は厳密には双方同意の上での結婚ではない。
当時公爵家の一人娘であったが、聖女の能力を引き継いでいなかったが、当時家を継ぐことが既に決まっていたソフィアの母親が一方的に当時の騎士見習いをしていたソフィアの父親に一目惚れし、公爵家の当主である自身の両親――ソフィアから見ると祖父母――に対して彼を結婚相手にして欲しいと頼み込んだのだ。そうして、その婚約が結ばれた。
ここまでであればよくある身分の高い女性の初恋のロマンチックなお話。逆シンデレラストーリーというやつだろう。
しかし当時、母が欲した父には結婚を約束した相手がいた。そこが問題だった。
だが、恋は盲目とはよく言ったものである。悪い意味で挫折を知らない貴族令嬢であった彼女にとってはそんな問題些細なことでしかなかった。
彼女の精神は、蝶よ花よと育てられ、誰にも侵されたことのない温室で培われてきた。頭の中はいつでもお綺麗なモノだけで満たされていた彼女。憧れるのは恋愛小説の様に甘美で優雅、そして素敵な恋であり、自分もいつかそういう恋をするのだと信じ込んでいた彼女は初めての恋に対して盲目になっていた。そうして至ってはいけない考えに身を委ねてしまう。
『彼に今好きな人がいたとしても、それは一時的なもの。だって人の気持ちは変わるものだから。結婚して毎日求愛すれば、彼の心も自分の方に傾いてくれるはずよ!だって私は公爵家の一人娘で、特別なのだから』
そうして二人は結婚した……半ば無理矢理に。男は式ギリギリまで結婚を渋っていたが、最終的には公爵家の権力に屈したらしい。結婚式には素直に参加していたそうだ。
そうして始まった二人の新婚生活。しかしソレは彼女が待ち望んでいたような甘いものではなかった。
男は彼女に最初から最後まで対して心を開こうとしなかったのだ。毎日毎日一生懸命話しかけても事務的な言葉しか返ってこない一方的な会話。夫婦なのだから、肌を触れ合わせようとしてみれば、嫌そうに顔を歪められ、拒否をされる。
そんな日々に彼女の心は疲弊していった。今まで味わったことのなかった初めての挫折だ。
けれどそんな状況で彼女は更なる悪手を選んでしまうこととなる。公爵家の血筋を絶対に途絶えさせまい、という周りの意志に急かされたこともあったのだろう。こう考えてしまったのだ。
『子供を作ったら、今度こそ彼の関心を寄せてもらえるかもしれない。だって、尊い血筋の子供なのよ?そしてそのまま彼の心を少しでもその子に縛り付けられたならば――』
そうして一方的な愛の成れの果てに産まれたのがソフィアだった。
ソフィアには両親に愛された記憶がない。あるのはただただ苦しい、閉塞感の様な感覚のみ。
6歳を超えるころには聖女として目が回るような忙しさの仕事がそこに加えられ、公爵家にいても外に居ても気が休まる瞬間はなかった。
物心ついた頃には既に、貴族としての教育が開始され、完璧以外は求められない。少しでも失敗すると折檻される。
かといってそれ以外の時間も休まることなどない。家の雰囲気はいつでも冷たく、父親と会えっても、最低限の事務的な会話があればいい方。基本的には、まるで化け物を見るかの様な目でソフィアを見つめてくる。婿に入ったと言えど、この家では既に祖父母が他界し、当主の立場を寝込んでいる母親の代わりに継いだ父親の立場がそれなりに強くなっていた。家に仕えている使用人達も大事にされていないものというのは見分けがつくのだろう。流石に身体に傷が残るようなことをされることはなかったが、陰口を叩かれたり、ご飯を抜かれることもあった。
神経が張り詰められたような場所で息をすることだけが辛うじて許されている状態。
母親はソフィア自身を見てくれたことなどない。彼女が求めるのはいつでも父親の面影。そして父親の関心を少しでも寄せるための道具。皮肉なことだ。ソフィアも父親からなんとも思われていない……それどころか恨まれてすらいるかもしれないのに、母はずっとソフィアによって父から感情を――愛を返してもらえると思い込んでいた。命が終わる最後の瞬間まで父が目の前に現れて、自分への気持ちに気付いて愛を囁いてくれると思っていた。
でも結局父が自分から母の目の前に現れることはなかったのだが。
だから、ずっとこの場所にソフィアの居場所はなかった。
こうしてソフィアの母が死んだのは2年前。元々患っていた自律神経失調症が遠因なのではないかと言われた。
息を引き取る前の母は食欲もなく、眠ろうとしても眠ることが出来ないという症状を訴え続けていた。そんなことを言った所で父は会いに来ることはなかったが。それが更に哀れさを強調した。ソフィアは一人思ったのだ。『可哀そうな人だな』と。母親の死にはそれ以外の感想は抱けなかった。
しかし、一つだけ印象に残った事がある死の間際、『あいつらだけは絶対に許さない』と言って酷く表情を歪めていたのだ。ずっとなんのことだろうと思っていた。しかし、それは母親の葬式の後に嫌でも理解することになった。
無感情で終えた母の葬式。その直後に義理の母とそして自分とほぼ同い年の腹違いの妹を紹介されることになる事はソフィアにも予想外であった。でもそれと同時に納得がいった。父はずっとこの女性とその間に産まれた子供がいたからこそあの状況に耐えてきたのだ、と。愛する人を裏切らざるをえない状況で、無理矢理好きでもない女との間に作ってしまった自分の存在を許せなかったのだ、と。
そして母の最期の言葉――許さない――とはこの二人に向けたことなのだ、と。
***
そこからソフィアの地獄は加速する。ソフィアの居場所は母が生きていた頃以上になくなったのだ。
毎朝ある聖女の仕事を終えた後、7年前――12歳の頃に出来た婚約者に会いに行けば、自分の自慢話をした後、それと比較するかのようにソフィアに対するこき下ろしの連続。以前の舞踏会で自分自身のミスで恥をかいたくせに、それすらも彼の頭の中では全て一緒にいたソフィアのせいになっていた時には怒りを通り越して呆れてしまった。
そして家に帰れば今まで見たことのない程に幸せそうな父親の笑顔とそれを向けられる異母妹、そして義母。けれどソフィアが帰ってきたと認識すると同時、一斉に向けられる冷ややかな視線――。
嫌だった。公爵家としての仕事も、自己中心的な愛で自分をこの世に産み出した上に一人残して死んだ母親も、自分に全て仕事を押し付けた上で死んだ祖父母も、公爵家を憎んでいる父親も、幸せそうに笑う義母も異母妹も、婚約者も、自分をこんな地獄に突き落とした人間共が口を揃えて語る『愛』という感情も……全てが嫌で嫌で仕方がなかった。
だから本当に嬉しかったのだ。異母妹が『愛』なんていう戯言を吐きながら、婚約者も聖女の仕事も全てを受け入れると言ったことが。肝心なことを何も分かっていないその愚かな言動を初めて愛おしいとすら思った。今までの恨みを全て帳消しにできる程に。
なにせ、これからソフィアを追い出したこの国は滅びるのだ。千年以上、女神の力――聖女に頼り続けて来たその歴史に終止符を打つ……王族と公爵家の人間の失態によって。
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