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あれから。改めてクロエとリオンは自分たちの気持ちを伝え合って、想いを通じ合わせることができた。
そしてそれと同時にクロエの周りでは色んなことがあった。
明るいことで言えば、コール・リードとの再会、そして女神の憑依が解除されたことで、クロエの存在を忘れていた者たちもクロエを思い出してくれた。
けれど問題は山積みだった。
国のトップが消えたことにより各地で派閥争いが始まってしまったこと、女神襲撃時の被害がまだ色濃く王都に残ってしまっていること、そして女神と男神が解放されたことで、今までは強い力に牽制されて怯え切っていた各地の魔物に対する封印が緩んできていると報告があがっていること、そしてその影響で魔物が活発化していること……。
一応、王都の派閥争いについては、エルヴィヒの兄が全員を取りまとめることで、なんとか回りはしているが、まだまだごたごたしていることには変わりない。
そしてクロエは女神が憑依していたせいであのような襲撃が起きたことは立証されて死人も出ていなかったことで罪を赦されはしたが、責任感を感じていた。
「……ふう、ここはもうこんなものかな。次は、城壁の方に向かわないと」
女神に憑依されていた時に壊した門の残骸を魔法で片付けたクロエ。操られていたとは言え自分がしたことだからという理由で、クロエは誰よりも復興作業を引き受けていた。
「クロエさん、お疲れ様です。僕も街の商店街の方の片付けが終わったので、今日はもう終わりにしましょう」
「リオン……でも、まだ作業が残ってーー」
「もう暗くなり始めていますよ。根を詰めすぎるのは良くないです」
「でも、破壊したのは私だから……」
クロエもリオンが気遣ってくれているのはわかっている。しかし、リードやコールが帰ってきたと言っても、聖騎士団団長を今も勤めているクロエには、やることがたくさん残っていた。なにせ最近は魔物が以前よりも大量に沸いているのだ。しかも今は国の上層部がゴタついているせいで、討伐の指揮もうまく取れていない。
「本当、クロエちゃんは責任感が強い子だね~。いい子いい子」
「エルヴィヒ、邪魔しないでください。僕は少しでも早くクロエさんを休ませたいんです」
「やだなー。僕、クロエちゃんに、と~~っても良い話を持ってきたのに。邪険にしないでよ~」
「良い話?貴方のその系統の話で良いものだったことがないのですが」
「そんなこと言わないでよ。ってことで話します!クロエちゃんに依頼だよー」
リオンの静止もクロエの厭味も聞かずにエルヴィヒは喋り続ける。
内容は、クロエに新しい任務が与えられたという話だった。国の上層部は、各地で伝説級とも言われるほどに強い魔物達の封印が緩んでいることを懸念して、再封印のための人手を募っていたそうだ。
そしてその話し合いに、バレてはいないとは言え国のトップだった父親を殺したエルヴィヒも参加してクロエを推薦したそうだ。元来強い白魔法の恩恵により、強力な封印術を施せる彼女を。
「これでクロエちゃんの重すぎる罪悪感も多少は軽減されるでしょ」
「貴方にしては、確かに珍しく良い話ですね」
「クロエさん!?王都が壊れたのも、国王が殺されたのも、貴方のせいではないです。むしろこの男だけが悪いと言っても過言ではない。だからわざわざそんな危険な任務を引き受ける必要は――」
「あ。その任務、リオン達も参加予定だから準備しておいてね」
「は……?」
「そんじゃーねー」
エルヴィヒは相変わらず唐突かつ全てを勝手に決める男だった。
そういうところが大嫌いだと改めてリオンは思ったのだった――。
******
あと1話、この後編集してそのままアップロードします。
そしてそれと同時にクロエの周りでは色んなことがあった。
明るいことで言えば、コール・リードとの再会、そして女神の憑依が解除されたことで、クロエの存在を忘れていた者たちもクロエを思い出してくれた。
けれど問題は山積みだった。
国のトップが消えたことにより各地で派閥争いが始まってしまったこと、女神襲撃時の被害がまだ色濃く王都に残ってしまっていること、そして女神と男神が解放されたことで、今までは強い力に牽制されて怯え切っていた各地の魔物に対する封印が緩んできていると報告があがっていること、そしてその影響で魔物が活発化していること……。
一応、王都の派閥争いについては、エルヴィヒの兄が全員を取りまとめることで、なんとか回りはしているが、まだまだごたごたしていることには変わりない。
そしてクロエは女神が憑依していたせいであのような襲撃が起きたことは立証されて死人も出ていなかったことで罪を赦されはしたが、責任感を感じていた。
「……ふう、ここはもうこんなものかな。次は、城壁の方に向かわないと」
女神に憑依されていた時に壊した門の残骸を魔法で片付けたクロエ。操られていたとは言え自分がしたことだからという理由で、クロエは誰よりも復興作業を引き受けていた。
「クロエさん、お疲れ様です。僕も街の商店街の方の片付けが終わったので、今日はもう終わりにしましょう」
「リオン……でも、まだ作業が残ってーー」
「もう暗くなり始めていますよ。根を詰めすぎるのは良くないです」
「でも、破壊したのは私だから……」
クロエもリオンが気遣ってくれているのはわかっている。しかし、リードやコールが帰ってきたと言っても、聖騎士団団長を今も勤めているクロエには、やることがたくさん残っていた。なにせ最近は魔物が以前よりも大量に沸いているのだ。しかも今は国の上層部がゴタついているせいで、討伐の指揮もうまく取れていない。
「本当、クロエちゃんは責任感が強い子だね~。いい子いい子」
「エルヴィヒ、邪魔しないでください。僕は少しでも早くクロエさんを休ませたいんです」
「やだなー。僕、クロエちゃんに、と~~っても良い話を持ってきたのに。邪険にしないでよ~」
「良い話?貴方のその系統の話で良いものだったことがないのですが」
「そんなこと言わないでよ。ってことで話します!クロエちゃんに依頼だよー」
リオンの静止もクロエの厭味も聞かずにエルヴィヒは喋り続ける。
内容は、クロエに新しい任務が与えられたという話だった。国の上層部は、各地で伝説級とも言われるほどに強い魔物達の封印が緩んでいることを懸念して、再封印のための人手を募っていたそうだ。
そしてその話し合いに、バレてはいないとは言え国のトップだった父親を殺したエルヴィヒも参加してクロエを推薦したそうだ。元来強い白魔法の恩恵により、強力な封印術を施せる彼女を。
「これでクロエちゃんの重すぎる罪悪感も多少は軽減されるでしょ」
「貴方にしては、確かに珍しく良い話ですね」
「クロエさん!?王都が壊れたのも、国王が殺されたのも、貴方のせいではないです。むしろこの男だけが悪いと言っても過言ではない。だからわざわざそんな危険な任務を引き受ける必要は――」
「あ。その任務、リオン達も参加予定だから準備しておいてね」
「は……?」
「そんじゃーねー」
エルヴィヒは相変わらず唐突かつ全てを勝手に決める男だった。
そういうところが大嫌いだと改めてリオンは思ったのだった――。
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あと1話、この後編集してそのままアップロードします。
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