35 / 39
35.
しおりを挟む
「なんで!なんでよ!!アイツらは厄災を全て貴方のせいにして貴方を殺そうとしたのよ!!?」
「君はともかく、人間達にとって俺の力は脅威だったのだろう。仕方がない事だ。むしろもっと早くに距離を置くべきだったんだ」
「違う違う違う!!悪いのは全部人間よ!!私もゼノスも悪くなんてないもの!!!今の私の行動は間違ってなんかない」
「いいや、間違っている。傷付けられたからと言って、同じ様に傷付けようとするのはおかしい」
あまりにも予想外の事態に、クロエはすぐにこの状況を理解できなかった。
男神が女神を止めようとしている?女神の記憶を見た時、人間側がした酷い所業に、クロエも同様酷い怒りを覚えた。実際に経験した者ではなくても、傍観者としての立場でも憤ったのだ。当事者であれば、その感情は計り知れないだろう。
だから確実に男神も人間を恨んでいると思っていたのだ。
「…………も――め」
「……フローリア?」
「偽物め!!貴方はゼノスじゃない。偽物よ!依り代の人間がそう言わせているんでしょう!!?」
「フローリア、俺は本物だ」
「ああ、ゼノス……すぐに救い出してあげるから」
「フローリア!!」
女神が男神に向かって大きな雷を落とす。
救い出すといいつつ、完全に殺すような動きだった。しかし男神側は女神を傷付けないように気遣ってか、ただ防御するのみ。
神であるからこその強大な災害級の攻撃が生みだされ続ける。クロエは避けるだけでも魔力を消耗したが、男神の方は息すら上がっていない。まるで攻撃が当たらないのが当たり前のような顔でそこに立っていた。
男神の方が強い。それはすぐに察せられた。しかし強いからこそ、反撃出来ないのだろう。
これを好機と喜んで、リオンを開放するために男神を攻撃すれば良いのか、それとも男神に味方をしてサポートをすればいいのか分からなかった。
「フローリア!俺は君にこれ以上罪を重ねてほしくないんだ」
「うるさいうるさいうるさい。ゼノスは私のしたことを褒めてくれるはず、私は貴方のためにずっと頑張ってきたんだから」
「……フローリア」
男神の心は女神に届かない。それどころか女神は段々と黒い瘴気のようなものを濃く出し始めていた。
伝えたいのに、伝えられない、伝わらない。
なんだかまるでクロエ自身を見ているようで、歯痒かった。とにかくじれったく感じたのだ。
だから口と手を出してしまった。
「そこの男神!私がフローリアの動きを止める。貴方、女神を説得するんでしょう!!?」
「君は、フローリアの……ああ、頼む!」
男神との奇妙な共闘が始まった――。
「君はともかく、人間達にとって俺の力は脅威だったのだろう。仕方がない事だ。むしろもっと早くに距離を置くべきだったんだ」
「違う違う違う!!悪いのは全部人間よ!!私もゼノスも悪くなんてないもの!!!今の私の行動は間違ってなんかない」
「いいや、間違っている。傷付けられたからと言って、同じ様に傷付けようとするのはおかしい」
あまりにも予想外の事態に、クロエはすぐにこの状況を理解できなかった。
男神が女神を止めようとしている?女神の記憶を見た時、人間側がした酷い所業に、クロエも同様酷い怒りを覚えた。実際に経験した者ではなくても、傍観者としての立場でも憤ったのだ。当事者であれば、その感情は計り知れないだろう。
だから確実に男神も人間を恨んでいると思っていたのだ。
「…………も――め」
「……フローリア?」
「偽物め!!貴方はゼノスじゃない。偽物よ!依り代の人間がそう言わせているんでしょう!!?」
「フローリア、俺は本物だ」
「ああ、ゼノス……すぐに救い出してあげるから」
「フローリア!!」
女神が男神に向かって大きな雷を落とす。
救い出すといいつつ、完全に殺すような動きだった。しかし男神側は女神を傷付けないように気遣ってか、ただ防御するのみ。
神であるからこその強大な災害級の攻撃が生みだされ続ける。クロエは避けるだけでも魔力を消耗したが、男神の方は息すら上がっていない。まるで攻撃が当たらないのが当たり前のような顔でそこに立っていた。
男神の方が強い。それはすぐに察せられた。しかし強いからこそ、反撃出来ないのだろう。
これを好機と喜んで、リオンを開放するために男神を攻撃すれば良いのか、それとも男神に味方をしてサポートをすればいいのか分からなかった。
「フローリア!俺は君にこれ以上罪を重ねてほしくないんだ」
「うるさいうるさいうるさい。ゼノスは私のしたことを褒めてくれるはず、私は貴方のためにずっと頑張ってきたんだから」
「……フローリア」
男神の心は女神に届かない。それどころか女神は段々と黒い瘴気のようなものを濃く出し始めていた。
伝えたいのに、伝えられない、伝わらない。
なんだかまるでクロエ自身を見ているようで、歯痒かった。とにかくじれったく感じたのだ。
だから口と手を出してしまった。
「そこの男神!私がフローリアの動きを止める。貴方、女神を説得するんでしょう!!?」
「君は、フローリアの……ああ、頼む!」
男神との奇妙な共闘が始まった――。
406
お気に入りに追加
3,861
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい
冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」
婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。
ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。
しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。
「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」
ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。
しかし、ある日のこと見てしまう。
二人がキスをしているところを。
そのとき、私の中で何かが壊れた……。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる