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「まだよ!まだ、この程度で私の意思は折れない!!」
「クロエさん!待ってください!!」
「え、リオン……?なんでここに!?」

ここにいるはずのないリオンという存在に驚いたのだろうクロエは目を見開いてリオンを見つめている。そして、クロエの反応と同様に女神も動きを完全に止めていた。

「僕は、僕の過去の行いを清算するために……いいえ、違いますね。貴女を救うためにここに来ました」
「何を言っているの!?ここはリオンがいるべき場所じゃない!!早く帰って――」
「嫌です!もう僕は貴女を離さない!!」

そう宣言され、クロエはきつく抱きしめられる。
戦闘で荒くなった息が胸板に当たって、頬が更に熱くなる。
腕の外ではリオンと女神の魔法による激しい戦闘音が聞こえていた。この状況の意味の分からなさと、好きな人に抱きしめられているという胸の高鳴り。自分より大きなものに包まれているという安心感と温もり。
先程まで命懸けで戦っていたクロエの感情は、大きく混乱していた。

「私みたいな叛逆者、救う価値なんてないのに」

ポロリと出た『自分を救うな』という言葉。返事なんて期待していなかった。ただ救われる意味が分からなくて、リオンがこれ以上自分と関わる事で、彼の未来が潰えるのが怖くて出てしまったそんな言葉。彼に届いているだなんて思っていなかったが、それにすぐに頭上から返答が返って来る。

「僕は貴女のためなら、身を滅ぼすことになろうが、地獄に落ちようが構いません」
「なん、で……?私は貴方にとって、ただの同僚――いえ、それどころか迷惑な存在でしょう」
「何を言っているんですか。いや、確か勘違いしているんでしたね。クロエさん、僕は貴女のためなら命を投げうっても良いと思える程に、どんな辛いことにも耐えられると感じる程に、誰よりも大切だと思っています。好きなんですよ、これ以上ないほどに」

激しい攻撃の中、周囲にリオンが作り出した結界が張られているのを感じる。その安心できる魔力の中での告白だった。

周囲から音が消える。
先ほどまで聞こえていたはずの女神が結界を破壊するために使っていた炎の魔法の爆発音も、結界を切り裂こうとこちらに飛ばされた武具のぶつかる音も、全てが聞こえなかった。
クロエに聞こえたのは、リオンの愛の告白のみ。
ずっと欲しかった言葉。しかしそれでいて永遠に聞けるはずがないと思っていた言葉。

「夢……?」
「夢だなんて思われるのは心外ですね。もう一度言います。僕はクロエさん、貴女を愛しています」

その言葉の直後。リオンから溢れ出る魔力の質が変化し、その量も爆発的に増大した。

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