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すぐに王都から発った故に知らなかったことだが、リオンらが戻る頃には、王都は民も城内も混乱している状況だった。
エルヴィヒはしっかりと自身の父を殺していたようだ。
それから約1日半ほどしか経っていない今は、色んな人間達が疑心暗鬼に陥り、国として機能していない状態となっていた。話を聞いている限り、全員国王が殺されたことは知っているが、誰が殺したのかまでは知らないようだ。それを知っているからこそ、犯人エルヴィヒも堂々とリオンと一緒に帰ってきているのだろう。クロエやリオンを利用していただけあって、エルヴィヒは完璧に成し遂げていたようだ。

指導者を失いながらも、一部の指導者や権力者のお陰でなんとか酷い諍いは起こってはいないが、それも時間の問題だろうと思える状態。それほどまでに混乱と疑念は目に見えて広まっていた。今までは王という絶対的な指導者が全てを指揮していた故に起こっている混乱である。
少しでも力を持っている人間の力添えを得ようと、リオンやジェレミーに縋りついてくる部下を躱しながら、自らを封印したせいで結晶と化したクロエが保護されているという城の地下の隠し通路の奥へと移動した。
エルヴィヒ曰く、誰も辿り着けない隠し通路の奥に最強の警備を付けて保護しているらしい。何せ今のクロエは今ここにいる面々以外からは忘れ去られた存在だ。国内の騎士達からしたら一人の叛逆者である。そんな彼女をその辺に放っておくわけにはいかなかったのだ。
そうして何度角を曲がり、魔法のかかった扉を解除しただろうか。「この先だよ」とエルヴィヒが言った最奥の扉を開いた先に居たのは――

「よお!リオン。久しぶりじゃねえか!!」
「え……リード団長にコールさん??何故貴方達がここにいるのですか!!?」

すっかり元の人間の姿に戻ったリードとコールだった。リオンは驚きに目を見開く。それと同時に、一番彼らを求めていた筈のクロエが今この状態になってしまっているのがクロエとコール、リード全員に対して申し訳なくて仕方がなかった。

「何でも良いでしょう。細かい話は後からです。……貴方ならこの状態になってしまったクロエを救えるとエルヴィヒから聞いて待っていました」
「彼らにはここでクロエちゃんが見つからないように、見つかっても外側から壊されたりしないように守ってもらってたんだ~。これ以上ない程の騎士ナイトだろう?この配慮、流石俺だね」
「……はい、必ず救ってみせます」
「ええ。頼みました。私の娘をよろしくお願いします、リオン=イッシュベルク」
「私の、じゃない。俺達のだろう。頼んだぜ、リオン」

一人で自画自賛を続けるエルヴィヒを置いて、リードとコールにクロエを頼まれる。
クロエの親代わりとも言える二人の声援を受け、今度こそクロエを救って見せるとリオンは決意を新たにした。
深呼吸を一つ。結晶化したクロエに今、触れた――。

******
更新予定:
こちらは殆ど最後まで書き終わっているので、後は軽い改稿作業をした上で投稿予定です。
暫くは『姉に婚約者を寝取られた伯爵令嬢は、敵国の『魔王』に溺愛される』、『婚約者曰く、私は『誰にも必要とされない人間』だそうなので、公爵令嬢をやめて好きに生きさせてもらいます』を中心に投稿していきます。
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