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「……魔物の襲撃、か」
ジェレミーが呆然とその言葉を呟く。
辿り着いた目的の場所。自分達以外には生き物の気配がない。
建物は傷つき、一部が倒壊しており、辛うじてキャンプの跡のような人工物の残るその場所は、大きな爪痕、食い散らかされた骨肉と布、そして血で一面赤く染まっている。鼻を塞ぎたくなるような血と臓物、そして糞尿の臭い。転送ポートは壊され、先に届いていた筈の荷物は、一部を除いてなくなっていた。抵抗はしたのだろう。所々に強い魔力の痕跡がこびりつき、魔物の死体も何体分かは転がっているが、その戦力差はかなり大きなものだったのだと察せられる……生き残っている人間など一人もいなかったのだから。
その景色を見て、クロエは思わずと言った様子で口内に勝手に溜まっていた唾を飲み込む。間に合わなかった。言わずとも、皆それを察していた。
きっと転送ポートの緊急装置が作動した時点でこの場所は手遅れだったのだろう。既に肉塊と化している名も知らぬ人たちに祈りを――手を合わせる。
ここまで凄惨なものはクロエも久しぶりに見たのだ。このような現場の経験が浅いのであろう、今回は非戦闘員として連れてこられた騎士の内の何人かは吐き気を催して無言で口を押えて俯いていた。
***
「それでエルヴィヒ、貴方は私達に言うべきことがありますよね。この場所は一体どこ?私たちは何故この場所に派遣されたの?任務の詳細な内容は?」
建物内外の血や肉片などを手分けして粗方片付け、埋葬し、このチームで最も魔力が強い且つ白魔法適性の高いクロエが張られていた筈の対魔物用結界も貼りなおした。やるべきことに一段落着き、一番豪華で汚れていない部屋を最初に当然のように陣取った男を問い詰めているのが今の状況だった。
ジェレミーも何も聞いていなかったのだろう。クロエがエルヴィヒに詰め寄っても止めることなく、背後で待機している。
確かに危険な任務だとは聞いていたが、これは明らかな異常事態だ。なにせ任地だった筈の場所が既に壊滅しているのだ。強力な魔物だとは聞いていたが、開始早々これはおかしい。
それにクロエはもう一つ違和感を感じていた。ずっと何かに視られているような感覚が抜けないのだ。この地で目覚めた時、最初に感じたのは、ちくりと刺されるような小さな違和感だけだった。この身を刺すほどの寒さのせいで感じている感覚だと思っていたほどに小さな。
しかしここに来て、時間が経てば経つほどに、まるで監視されているかのようなジトリとした気配が強くなってきていた。全身の皮膚に違和感がまとわりついて消えない。この場所はどこか変だ。普通の場所ではない、絶対に何かがある。クロエはそう踏んで質問をした。
「ここは最北の地、アトラス……と言えば、察しの良い君なら分かるかな」
「アト、ラス」
まるで、子供が友達に秘密をこっそりと教える時の様な無邪気な笑みでエルヴィヒは微笑む。
クロエはあまりの驚きで、ヒュッと息をのみ、エルヴィヒの言葉を反芻して呟くが、それも仕方のない事だった。
アトラス。この国・シュヴァルツフィールドのかつての守り神と言われる二神の内の一柱が、この国を護るため、他国との闘いの後に眠りについた場所。そして今は禁足地とされている地の名だ。
しかしクロエを含め、神がいた時代の話を信じている者はほぼいない。信じているのは子供か、二神を祀る聖職者や敬虔な信徒かだろう。基本的にシュヴァルツフィールドに住む人間は宗教や童話としてあるのは知っているが、真実として信じている者はほぼいないのだ。この国で一番権力があり、尊敬されているのは国王だ。王の方が教会との力関係的にも圧倒的に強い事もあり、風化し、忘れ去られそうな程の文化だった。
また、この地は全く別の話題……『怪談』としても話題に上がることがある。
度胸試しや宴会などの場の雰囲気に流された馬鹿な若者が、この禁足地に肝試しだのと称して足を踏み入れたという話を聞くのだ。
そして噂ではその大半が戻ってこなかったなどという事が面白おかしく語られているのだった。
神が眠っているのも、入った者が返ってこないというのも、これらが本当か否かは知らない。今まで欠片の興味もなかった。しかし、実際にその地に足を踏み入れてみると、あれらの神話や怪談も真実だったかもしれないと思ってしまう自分がいた。そう信じさせる恐ろしい程の何かの気配がこの地には根付いているのだ。それを思わせる『何か』がこの地にはある。
「さて、ここでこの任務の本当の目的を話そうか」
曰く。最近、この場所の付近で強力な魔力を宿した『聖石』が眠る湖が見つかったらしい。
そしてこの派遣された騎士達の本来の役割は、この場所から『聖石』を定期的に確保・開発するための作業員を護衛し、作業を進める時に邪魔な魔物を討伐すること。
ここに本来いた役割の人員は数日経てば、再び派遣されるとエルヴィヒは言う。まるで消費物のようだ、とクロエは思う。必要とされ、消費されてなくなったらまたすぐに新たなところから補充される。きっとここに作業員たちの意志などはない。
そのため、今回の任務は開発が完了する前に原因を潰すこと。原因を絶てない場合は、『聖石』を取りつくすまでこの場所を守り続ける事なのだそうだ。
しかしクロエが感じている通り、ここにいるモノは異常で異質である。国王も前者……原因を潰すことは期待していないそうだ。だから、エルヴィヒにもどれだけ時間がかかるか分からない任務として言い渡されたのだった。
「……この土地に、神は本当に存在するの?」
ずっと感じ続けているこの異様な気配。今まで出会った中でも強いと思った魔物などとは比べ物にならないほどの威圧感。そこから導き出されたのは、ここに来る前に自分だったら鼻で笑った上に馬鹿にするであろう問いかけだった。
「さあ、どうだろうね」
「誤魔化さないで!!この土地、絶対におかしいのよ。何かにまるで視られているかのような感覚がずっと抜けないの。既にこの建物の外にも結界を張り直したにも関わらず、ね」
「それは本当なのか!?クロエ」
気配には特に敏感な筈のジェレミーが驚いた表情でクロエを見る。しかし、エルヴィヒはそれを聞いても特に驚いている様子はない。その態度が余計に怪しかった。
「ええ。こんな時に嘘を吐いたりしないわ」
「エルヴィヒ様。貴方、またとんでもない事を企んでいるんじゃ……?」
「別に、そんな大したことは考えていないさ。その証拠に、これをクロエちゃんに――」
「これ……何?」
「嵌めてみれば分かるさ」
クロエの態度を受けて、ジェレミーが疑いの目をエルヴィヒに向けるが、彼は否定も肯定もしない。
それどころか、向けられた言葉を軽くかわしながら、丁度クロエの爪くらいの大きさの翠の石が中心で煌めく指輪を差し出してくる。クロエは訝しむが、特におかしなところもないただの装飾品のようだったので、右手の人差し指に嵌める。
(視られているような感覚が消えた……?)
指輪がピタリと嵌った瞬間、先程まで気分が悪くなるくらいに感じていたあの嫌な感覚が、風で吹き飛ばされた煙のように消える。
「さっきまで言っていた変な感覚はなくなっただろう?」
「……ええ」
よく見ると装飾の中心に鎮座する石がエルヴィヒの瞳の色と同じ色だという事以外は、嫌な部分はない。認めたくはないが、この指輪がなければクロエはきっとこの場に残って任務をこなすどころではなかっただろう。
「別に俺の事を全面的に信用しろとは言わない。一つ言うなら、君たちが今現在信じているモノが必ずしも正しいとは限らないってところかな」
「貴方、何が言いたいの?」
正直、クロエはこの任務を受けた今現在、この国の出身の人間の事はあまり信用していない。何か含みがあるように言われたエルヴィヒの言葉で更に怪しさを感じた。元々王族であるエルヴィヒに対して、警戒心が強まる。
「知りたいなら、進むしかない。俺達、シュヴァルツフィールド騎士団には――」
「……任務達成以外の言葉は許されない。全てはシュヴァルツフィールドの王、そして民のために」
入団する時に騎士が誓わされる言葉。いつも言っている言葉の筈なのに……猜疑心のせいだろうか、その言葉を発する口が普段よりも重く感じた――。
「……魔物の襲撃、か」
ジェレミーが呆然とその言葉を呟く。
辿り着いた目的の場所。自分達以外には生き物の気配がない。
建物は傷つき、一部が倒壊しており、辛うじてキャンプの跡のような人工物の残るその場所は、大きな爪痕、食い散らかされた骨肉と布、そして血で一面赤く染まっている。鼻を塞ぎたくなるような血と臓物、そして糞尿の臭い。転送ポートは壊され、先に届いていた筈の荷物は、一部を除いてなくなっていた。抵抗はしたのだろう。所々に強い魔力の痕跡がこびりつき、魔物の死体も何体分かは転がっているが、その戦力差はかなり大きなものだったのだと察せられる……生き残っている人間など一人もいなかったのだから。
その景色を見て、クロエは思わずと言った様子で口内に勝手に溜まっていた唾を飲み込む。間に合わなかった。言わずとも、皆それを察していた。
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ここまで凄惨なものはクロエも久しぶりに見たのだ。このような現場の経験が浅いのであろう、今回は非戦闘員として連れてこられた騎士の内の何人かは吐き気を催して無言で口を押えて俯いていた。
***
「それでエルヴィヒ、貴方は私達に言うべきことがありますよね。この場所は一体どこ?私たちは何故この場所に派遣されたの?任務の詳細な内容は?」
建物内外の血や肉片などを手分けして粗方片付け、埋葬し、このチームで最も魔力が強い且つ白魔法適性の高いクロエが張られていた筈の対魔物用結界も貼りなおした。やるべきことに一段落着き、一番豪華で汚れていない部屋を最初に当然のように陣取った男を問い詰めているのが今の状況だった。
ジェレミーも何も聞いていなかったのだろう。クロエがエルヴィヒに詰め寄っても止めることなく、背後で待機している。
確かに危険な任務だとは聞いていたが、これは明らかな異常事態だ。なにせ任地だった筈の場所が既に壊滅しているのだ。強力な魔物だとは聞いていたが、開始早々これはおかしい。
それにクロエはもう一つ違和感を感じていた。ずっと何かに視られているような感覚が抜けないのだ。この地で目覚めた時、最初に感じたのは、ちくりと刺されるような小さな違和感だけだった。この身を刺すほどの寒さのせいで感じている感覚だと思っていたほどに小さな。
しかしここに来て、時間が経てば経つほどに、まるで監視されているかのようなジトリとした気配が強くなってきていた。全身の皮膚に違和感がまとわりついて消えない。この場所はどこか変だ。普通の場所ではない、絶対に何かがある。クロエはそう踏んで質問をした。
「ここは最北の地、アトラス……と言えば、察しの良い君なら分かるかな」
「アト、ラス」
まるで、子供が友達に秘密をこっそりと教える時の様な無邪気な笑みでエルヴィヒは微笑む。
クロエはあまりの驚きで、ヒュッと息をのみ、エルヴィヒの言葉を反芻して呟くが、それも仕方のない事だった。
アトラス。この国・シュヴァルツフィールドのかつての守り神と言われる二神の内の一柱が、この国を護るため、他国との闘いの後に眠りについた場所。そして今は禁足地とされている地の名だ。
しかしクロエを含め、神がいた時代の話を信じている者はほぼいない。信じているのは子供か、二神を祀る聖職者や敬虔な信徒かだろう。基本的にシュヴァルツフィールドに住む人間は宗教や童話としてあるのは知っているが、真実として信じている者はほぼいないのだ。この国で一番権力があり、尊敬されているのは国王だ。王の方が教会との力関係的にも圧倒的に強い事もあり、風化し、忘れ去られそうな程の文化だった。
また、この地は全く別の話題……『怪談』としても話題に上がることがある。
度胸試しや宴会などの場の雰囲気に流された馬鹿な若者が、この禁足地に肝試しだのと称して足を踏み入れたという話を聞くのだ。
そして噂ではその大半が戻ってこなかったなどという事が面白おかしく語られているのだった。
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そしてこの派遣された騎士達の本来の役割は、この場所から『聖石』を定期的に確保・開発するための作業員を護衛し、作業を進める時に邪魔な魔物を討伐すること。
ここに本来いた役割の人員は数日経てば、再び派遣されるとエルヴィヒは言う。まるで消費物のようだ、とクロエは思う。必要とされ、消費されてなくなったらまたすぐに新たなところから補充される。きっとここに作業員たちの意志などはない。
そのため、今回の任務は開発が完了する前に原因を潰すこと。原因を絶てない場合は、『聖石』を取りつくすまでこの場所を守り続ける事なのだそうだ。
しかしクロエが感じている通り、ここにいるモノは異常で異質である。国王も前者……原因を潰すことは期待していないそうだ。だから、エルヴィヒにもどれだけ時間がかかるか分からない任務として言い渡されたのだった。
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ずっと感じ続けているこの異様な気配。今まで出会った中でも強いと思った魔物などとは比べ物にならないほどの威圧感。そこから導き出されたのは、ここに来る前に自分だったら鼻で笑った上に馬鹿にするであろう問いかけだった。
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クロエの態度を受けて、ジェレミーが疑いの目をエルヴィヒに向けるが、彼は否定も肯定もしない。
それどころか、向けられた言葉を軽くかわしながら、丁度クロエの爪くらいの大きさの翠の石が中心で煌めく指輪を差し出してくる。クロエは訝しむが、特におかしなところもないただの装飾品のようだったので、右手の人差し指に嵌める。
(視られているような感覚が消えた……?)
指輪がピタリと嵌った瞬間、先程まで気分が悪くなるくらいに感じていたあの嫌な感覚が、風で吹き飛ばされた煙のように消える。
「さっきまで言っていた変な感覚はなくなっただろう?」
「……ええ」
よく見ると装飾の中心に鎮座する石がエルヴィヒの瞳の色と同じ色だという事以外は、嫌な部分はない。認めたくはないが、この指輪がなければクロエはきっとこの場に残って任務をこなすどころではなかっただろう。
「別に俺の事を全面的に信用しろとは言わない。一つ言うなら、君たちが今現在信じているモノが必ずしも正しいとは限らないってところかな」
「貴方、何が言いたいの?」
正直、クロエはこの任務を受けた今現在、この国の出身の人間の事はあまり信用していない。何か含みがあるように言われたエルヴィヒの言葉で更に怪しさを感じた。元々王族であるエルヴィヒに対して、警戒心が強まる。
「知りたいなら、進むしかない。俺達、シュヴァルツフィールド騎士団には――」
「……任務達成以外の言葉は許されない。全てはシュヴァルツフィールドの王、そして民のために」
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