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13.新たな攻略対象との遭遇Ⅱ
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「おい、そこの女、お前なんでずっとこっち見てる?気が散るから、散れ!」
「え……」
早くこの人達の話、終わらないかな~なんて思いながらじーっと見ていたのが良くなかった。バチリと城山椿と目が合った私は、手を払うようにパタパタと動かした彼に、小蝿のように追い払われようとしていた。
勝手に私の兄様を捕まえて、私達の邪魔を立花樹と共にしておいて失礼な男だなと思った。どんどんこの城山椿への印象が悪くなる。
「君……椿君だったか?僕の妹にそういうことを言うのはやめてくれないかな?そもそも僕は、この子のためにここに来ているんだ」
「妹?これ、桜小路蓮音の妹なのか?」
「はい。初めまして。桜小路麗華と申します」
「ふーん」
一応年上っぽいので、敬語で自己紹介をしてみたが、スクール水着で男三人に囲まれて自己紹介している状況ってなんなんだろう。城山椿は私の事をまるで観察するように上から下まで眺めるので、最近ほぼ元の体型に戻ったといえる身体だというのに今更ながら恥ずかしくなって少し頬を赤らめる。
「椿、この子は蓮音さんの妹だが、僕の婚約者でもあるんだ。あまりジロジロ見つめないでくれないか?」
「はあ!?え、このちんちくりんのツルペタが樹の婚約者??ほえー、釣り合わねー。てか、樹ってロリコン?」
きっと兄の前だからなのだろう、止めてくれた立花樹に少し感心するが、その後の城山椿のちんちくりん、そしてツルペタという言葉にイラッとくる。まだ小学5年生の女の子がボインボインだったら、逆にそっちの方が怖いだろう。というか私はこの歳の割には、同い年と比べてもそれなりに成長している方だし……。
とにかくもう、こいつ嫌い!!元々興味すらなかったけど、絶対に仲良くなんてなれないと確信する程にひどい性格だと思った。
「……椿?こんなくだらない事を話している暇があったら、さっさと依頼を果たしてくれないか??」
「そういえば、立花さんはこの……城山さんと一緒に来たのですか?先程から約束と言っていますが」
「はい。椿はマナーや言葉遣いこそ最低なものの、水泳の腕だけは確かなので、彼から教えてもらおうと考えています」
なるほど。城山椿の酷い言われようは置いておいて。立花樹が以前、蓮音兄様に教えてもらおうかなと言っていたのを私が(勝手に)断った結果、城山椿にその役割が回って来たというわけか。
しかしながら、城山椿が立花樹の相手をしてくれるのであれば有難い。トレーニングを始めればきっと、これ以上関わることもないだろう。そうホクホクとした気持ちで早速準備運動から始めた。
***
「だーかーらー!!こうやってシュッシュって手で掻いて!足をバタバタ動かすだけだっての!!んで、苦しくなったら顔ヒュッて出して息吸うの!!!なんで樹はこんなことも出来ないんだよ!?」
「僕は椿の教え方が悪いと思うのですが。貴方の教え方は擬音語が多い挙句、直感的すぎて分かりません。そもそも泳いだことのない人間がその雑な説明と泳ぎを見ただけで泳げるとでも?」
「はあ?俺の美しく完璧なフォームを見れば泳げるだろ。それにクロールなんて、基礎中の基礎だぞ??なんで泳ぐどころかその場で沈むんだよ。この下手くそ!!」
「なんだか僕は、途轍もない判断ミスを犯した気がします。椿に頼んだ僕が馬鹿でした。本当に、愚かな真似をしてしまった……」
「ああ゛ん?」
ここは学園のプール……と言えども、この時間に活動している高等部の水泳部は50メートルプールを使っているのでこちらからは遠いところに位置している。だからこの25メートルプールを丸ごとを広々と使っているのは私と蓮音兄様、立花樹と城山椿しかいない。要は、休憩中に目の前であんなものを繰り広げられれば、嫌でも視界に入ってきてしまうのである。しかもあの二人、仲が良いのかなんなのか、かなり大きい声で言い争っている。
「なんだか、樹君が可哀そうだね」
「そう……ですね」
「ねえ、麗華。君が教えてあげたらどうだい?君はもう僕が完璧だと認める程に泳げるし、なにより彼は君の婚約者だろう?」
「ええ!?」
正直驚いたし、滅茶苦茶嫌なんだけど。ノータッチで最後まで過ごせると思っていたところに投げ込まれた爆弾。油断していた。まさか身内に敵がいるだなんて。
プールサイドというのは案外音が反響する。向こうの会話が聞こえてくるということは、こちらの会話も向こうに筒抜けだ。どうやって断ろうと理由を考える時間が短すぎた。
「僕、麗華さんの方が良いです。椿、貴方は首です。さっさと消えてください」
「はあ!?」
うげっ!!なんかこっちに来た!!?
城山椿、しっかりして欲しい。乙女ゲームでヒロインをメロメロにした貴方の魅力は何処に行ったの!?立花樹も一緒にメロメロにして足止めくらいしてくれ。何故今ベストを尽くさないのか……!!?まあ、正直ルート内容やセリフはほぼほぼ覚えてないけど。
こうして一転、私はいつものトレーニングから何故だか立花樹に泳ぎ方を教えるという地獄に落ちてしまった。
「え……」
早くこの人達の話、終わらないかな~なんて思いながらじーっと見ていたのが良くなかった。バチリと城山椿と目が合った私は、手を払うようにパタパタと動かした彼に、小蝿のように追い払われようとしていた。
勝手に私の兄様を捕まえて、私達の邪魔を立花樹と共にしておいて失礼な男だなと思った。どんどんこの城山椿への印象が悪くなる。
「君……椿君だったか?僕の妹にそういうことを言うのはやめてくれないかな?そもそも僕は、この子のためにここに来ているんだ」
「妹?これ、桜小路蓮音の妹なのか?」
「はい。初めまして。桜小路麗華と申します」
「ふーん」
一応年上っぽいので、敬語で自己紹介をしてみたが、スクール水着で男三人に囲まれて自己紹介している状況ってなんなんだろう。城山椿は私の事をまるで観察するように上から下まで眺めるので、最近ほぼ元の体型に戻ったといえる身体だというのに今更ながら恥ずかしくなって少し頬を赤らめる。
「椿、この子は蓮音さんの妹だが、僕の婚約者でもあるんだ。あまりジロジロ見つめないでくれないか?」
「はあ!?え、このちんちくりんのツルペタが樹の婚約者??ほえー、釣り合わねー。てか、樹ってロリコン?」
きっと兄の前だからなのだろう、止めてくれた立花樹に少し感心するが、その後の城山椿のちんちくりん、そしてツルペタという言葉にイラッとくる。まだ小学5年生の女の子がボインボインだったら、逆にそっちの方が怖いだろう。というか私はこの歳の割には、同い年と比べてもそれなりに成長している方だし……。
とにかくもう、こいつ嫌い!!元々興味すらなかったけど、絶対に仲良くなんてなれないと確信する程にひどい性格だと思った。
「……椿?こんなくだらない事を話している暇があったら、さっさと依頼を果たしてくれないか??」
「そういえば、立花さんはこの……城山さんと一緒に来たのですか?先程から約束と言っていますが」
「はい。椿はマナーや言葉遣いこそ最低なものの、水泳の腕だけは確かなので、彼から教えてもらおうと考えています」
なるほど。城山椿の酷い言われようは置いておいて。立花樹が以前、蓮音兄様に教えてもらおうかなと言っていたのを私が(勝手に)断った結果、城山椿にその役割が回って来たというわけか。
しかしながら、城山椿が立花樹の相手をしてくれるのであれば有難い。トレーニングを始めればきっと、これ以上関わることもないだろう。そうホクホクとした気持ちで早速準備運動から始めた。
***
「だーかーらー!!こうやってシュッシュって手で掻いて!足をバタバタ動かすだけだっての!!んで、苦しくなったら顔ヒュッて出して息吸うの!!!なんで樹はこんなことも出来ないんだよ!?」
「僕は椿の教え方が悪いと思うのですが。貴方の教え方は擬音語が多い挙句、直感的すぎて分かりません。そもそも泳いだことのない人間がその雑な説明と泳ぎを見ただけで泳げるとでも?」
「はあ?俺の美しく完璧なフォームを見れば泳げるだろ。それにクロールなんて、基礎中の基礎だぞ??なんで泳ぐどころかその場で沈むんだよ。この下手くそ!!」
「なんだか僕は、途轍もない判断ミスを犯した気がします。椿に頼んだ僕が馬鹿でした。本当に、愚かな真似をしてしまった……」
「ああ゛ん?」
ここは学園のプール……と言えども、この時間に活動している高等部の水泳部は50メートルプールを使っているのでこちらからは遠いところに位置している。だからこの25メートルプールを丸ごとを広々と使っているのは私と蓮音兄様、立花樹と城山椿しかいない。要は、休憩中に目の前であんなものを繰り広げられれば、嫌でも視界に入ってきてしまうのである。しかもあの二人、仲が良いのかなんなのか、かなり大きい声で言い争っている。
「なんだか、樹君が可哀そうだね」
「そう……ですね」
「ねえ、麗華。君が教えてあげたらどうだい?君はもう僕が完璧だと認める程に泳げるし、なにより彼は君の婚約者だろう?」
「ええ!?」
正直驚いたし、滅茶苦茶嫌なんだけど。ノータッチで最後まで過ごせると思っていたところに投げ込まれた爆弾。油断していた。まさか身内に敵がいるだなんて。
プールサイドというのは案外音が反響する。向こうの会話が聞こえてくるということは、こちらの会話も向こうに筒抜けだ。どうやって断ろうと理由を考える時間が短すぎた。
「僕、麗華さんの方が良いです。椿、貴方は首です。さっさと消えてください」
「はあ!?」
うげっ!!なんかこっちに来た!!?
城山椿、しっかりして欲しい。乙女ゲームでヒロインをメロメロにした貴方の魅力は何処に行ったの!?立花樹も一緒にメロメロにして足止めくらいしてくれ。何故今ベストを尽くさないのか……!!?まあ、正直ルート内容やセリフはほぼほぼ覚えてないけど。
こうして一転、私はいつものトレーニングから何故だか立花樹に泳ぎ方を教えるという地獄に落ちてしまった。
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