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10.人生の試練Ⅰ
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人生の試練。それは生きていれば、人間誰しもが何度もぶち当たるであろうもの。
「麗華、本当にいいのかい?待ち受けるのはきっと、君が思っている以上に厳しい道だ」
「はい!蓮音兄様、既に覚悟はできています!!」
私は今日から、人生の試練に立ち向かう。
***
峰山鷹志改め、鷹志君という友達が出来てから、私のパーティー参加意欲は少し変わった。
お父様に『とっても!!美味しい食べ物が出るパーティーだったら参加したい!』という欲望丸出しの条件を出し、その希望を叶えてくれる時のみパーティーに参加する。そして案の定、友人の彼はそこにいつでもいた。
パーティー会場に到着して最初の挨拶を済ませたらすぐに兄様も父様も誰かしらに捕まるので、私だけ食事が置いてあるコーナーに直行。そしてそこで鷹志君と合流。会場の端っこで美味しい食事を摂りながら、おしゃべりに花を咲かせていた。鷹志君以外の同年代とは交流を全く持っていないが、パーティーに参加しているという記録は残るので、不参加よりはマシだろうと思う。それに場所に慣れるというのは重要なことだ。私は今それの練習中なのだと言い訳をして楽しんでいる。
まあそんなこんなで話しているうちに、いつからか私達は休日にも食べ歩きを共にする親友となっていた。ついでに言うと、彼の姉である峰山 鶫さんも食べるのが好きなようで、少し前に意気投合した。今はそれなりの頻度で3人で気楽な外食をしている。兄はいるが、お姉ちゃんというのはいなかったので、なんだか姉ができたような気持ちである。
このように、桜小路麗華としてかなり楽しい生活を送っているという自覚があった。
……あの事件が起こるまでは。
お風呂の前。特に理由もなく、目についたという理由で乗ってみた体重計。その数値を見た瞬間、桜小路家の地下……天然ものの温泉の源泉を引いているらしい、無駄に巨大なお風呂全体に響き渡るほどの大声で私は叫んだ。
「体重が増えてる!!!!?」
確かに最近はちょっとウエストがきついなーとか、服の胸のボタンを閉めるとパンパンになる、パンツが上がりにくくなった、顔がぷっくりしてきている気がするなどなど正直なところ気づかないようにしていただけで違和感はあったのだ。
それがまさか10キロも体重が増えているだなんて……。
流石に乙女としての危機感を感じた私は、ダイエットすることを決意した。そして、今に至る。
「麗華、本当にいいのかい?待ち受けるのはきっと、君が思っている以上に厳しい道だ」
「はい!蓮音兄様、既に覚悟はできています!!」
そう、私は今日からダイエットをするのだ。
今まで両親の厳しい管理のおかげで、この身体で太ったことはなかったが、太ってみてから分かる。一度肥えれば、運動しても何をしても簡単に落ちるものではない。
ラルフの散歩は毎日いつも通り行っているが、一度爆発した食欲はそんなに簡単に減衰などさせられるものではないのだ。要は脂肪を落とせず悩んでいた。だからこの家で最も運動に精通している蓮音兄様を頼った。
そう、この兄は普段着ている薄いTシャツの上からでも分かるほどに引き締まった身体をしている。それだけではない。彼は水泳、パルクール、柔道、空手、スキーなどなど様々な競技の大会で表彰台に登っている天才なのだ。我が兄ながら、スペックが高すぎてやばいと思う。
とにかくスポーツで効率的に体重を落としたいのであれば、運動に関して家族で右に出る者のいない彼に聞くべきだ。
「僕は少しぷっくりしていても可愛いと思うんだけど」
「兄様、私を甘やかさないでください!私はすぐにでも痩せたいんです!!」
「そうか……。なら仕方ないね。僕についてきて!」
こうして下の兄と共に歩む、地獄のダイエット生活が始まった――。
「麗華、本当にいいのかい?待ち受けるのはきっと、君が思っている以上に厳しい道だ」
「はい!蓮音兄様、既に覚悟はできています!!」
私は今日から、人生の試練に立ち向かう。
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峰山鷹志改め、鷹志君という友達が出来てから、私のパーティー参加意欲は少し変わった。
お父様に『とっても!!美味しい食べ物が出るパーティーだったら参加したい!』という欲望丸出しの条件を出し、その希望を叶えてくれる時のみパーティーに参加する。そして案の定、友人の彼はそこにいつでもいた。
パーティー会場に到着して最初の挨拶を済ませたらすぐに兄様も父様も誰かしらに捕まるので、私だけ食事が置いてあるコーナーに直行。そしてそこで鷹志君と合流。会場の端っこで美味しい食事を摂りながら、おしゃべりに花を咲かせていた。鷹志君以外の同年代とは交流を全く持っていないが、パーティーに参加しているという記録は残るので、不参加よりはマシだろうと思う。それに場所に慣れるというのは重要なことだ。私は今それの練習中なのだと言い訳をして楽しんでいる。
まあそんなこんなで話しているうちに、いつからか私達は休日にも食べ歩きを共にする親友となっていた。ついでに言うと、彼の姉である峰山 鶫さんも食べるのが好きなようで、少し前に意気投合した。今はそれなりの頻度で3人で気楽な外食をしている。兄はいるが、お姉ちゃんというのはいなかったので、なんだか姉ができたような気持ちである。
このように、桜小路麗華としてかなり楽しい生活を送っているという自覚があった。
……あの事件が起こるまでは。
お風呂の前。特に理由もなく、目についたという理由で乗ってみた体重計。その数値を見た瞬間、桜小路家の地下……天然ものの温泉の源泉を引いているらしい、無駄に巨大なお風呂全体に響き渡るほどの大声で私は叫んだ。
「体重が増えてる!!!!?」
確かに最近はちょっとウエストがきついなーとか、服の胸のボタンを閉めるとパンパンになる、パンツが上がりにくくなった、顔がぷっくりしてきている気がするなどなど正直なところ気づかないようにしていただけで違和感はあったのだ。
それがまさか10キロも体重が増えているだなんて……。
流石に乙女としての危機感を感じた私は、ダイエットすることを決意した。そして、今に至る。
「麗華、本当にいいのかい?待ち受けるのはきっと、君が思っている以上に厳しい道だ」
「はい!蓮音兄様、既に覚悟はできています!!」
そう、私は今日からダイエットをするのだ。
今まで両親の厳しい管理のおかげで、この身体で太ったことはなかったが、太ってみてから分かる。一度肥えれば、運動しても何をしても簡単に落ちるものではない。
ラルフの散歩は毎日いつも通り行っているが、一度爆発した食欲はそんなに簡単に減衰などさせられるものではないのだ。要は脂肪を落とせず悩んでいた。だからこの家で最も運動に精通している蓮音兄様を頼った。
そう、この兄は普段着ている薄いTシャツの上からでも分かるほどに引き締まった身体をしている。それだけではない。彼は水泳、パルクール、柔道、空手、スキーなどなど様々な競技の大会で表彰台に登っている天才なのだ。我が兄ながら、スペックが高すぎてやばいと思う。
とにかくスポーツで効率的に体重を落としたいのであれば、運動に関して家族で右に出る者のいない彼に聞くべきだ。
「僕は少しぷっくりしていても可愛いと思うんだけど」
「兄様、私を甘やかさないでください!私はすぐにでも痩せたいんです!!」
「そうか……。なら仕方ないね。僕についてきて!」
こうして下の兄と共に歩む、地獄のダイエット生活が始まった――。
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