円満な婚約解消が目標です！～没落予定の悪役令嬢は平穏を望む～

０．プロローグ

「麗華、今日からこの子が麗華の婚約者だ。仲良くするんだよ」
「立花たちばな 樹いつきです。よろしくお願いします」

10歳になって少し経った頃、自身の婚約者だと父に紹介された天使の様に美しい男の子。
頭を軽くペコリと下げて自己紹介をした彼のその姿、そして名前を脳が認識した瞬間、全身に電気が走った様な衝撃と共に私は思い出した。別に『恋』ではない。言葉で表すとすると『驚嘆』、そして『恐怖』。この今自分が生きている世界は、私が前世で好きだった乙女ゲームの世界なのだと分かったからだ。
それで何故驚くことはあれど、恐怖の感情を抱いたか。それは私が同時に、このゲーム内で自分の名前を冠したキャラクターは攻略対象達に烈火のごとく嫌われた挙句に、ゲームのエンディングでは刑務所にぶち込まれて精神を病み、自殺する女だということを同時に思いだしたからである。

私は『悪役令嬢』と呼ばれるキャラに転生していた――。