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私達フォルティシア公爵家は基本皆時間帯がバラバラの為、食事は其々の起きた時間などで各自とる。しかし、予想通り、私の朝食の時間にキース兄様は現れた。
「おはよう、ジュリエッタ。朝食ご一緒してもいいかな」
しかし、私の答えなどもとより聞く気がないようで、私の隣の椅子にわざとらしくドカリと腰を掛けた。
「えぇ」
私は、意味のないことだとわかりながらも了承の返事をする。その答えに兄様が、満面の笑みを浮かべた。
兄様に動揺を見せてはだめだ。彼に少しでも弱みを見せると、足をすくわれる気がする。そして、そのままBAD ENDに直行だ。
ジルベルトがキース兄様の給仕の準備もし始めた所で、兄様が思い出したように声を発した。
「そういえば、ジュリエッタ。君、婚約したんだよね」
「はい。昨日、婚約式を挙げました」
正直、ここまでいきなりストレートに切り出されるとは思わなかったので、心臓が止まるかと思った。そのまま続けられる。
「なんで、招待してくれなかったんだ?寂しいじゃないか」
本来ならば、聞きにくいであろうことを少し拗ねたような声音で悠々と聞いてくる。
そう。私は婚約式にキース兄様もジルベルトも招待しなかったのだ。この兄ならば、婚約式が終わってなければ、途中でぶち壊すことも考えられる。
だから、私はあえて、お父様に頼んで、呼ばなかったのだ。
……どう答えよう。一応、用意していた答えはあるけれど。
私は、我慢できなくなって、ちらりとキース兄様の表情を横目で伺う。
一見兄様はいつも通りに見えるが、よく見てみると瞳の奥底に冷えた色があった。
私に前世の記憶が戻ったのと、長い間共に過ごしてきた経験があるからこそわかる。それほどに兄様は隠すのが上手いのだ。
やはり、怒っている。……それもかなり。
私は恐怖で声が震えそうになるのを抑えて、努めて冷静に言い放つ。
「私も既に子供ではないので、婚約式程度に忙しいキース兄様にまで、ご足労させるわけにはいかないと思いまして」
現に兄様は、お父様の仕事を代理できるレベルで取得しているので、かなり忙しい。実際、日に日に家にいる時間が短くなってきているのを私は知っている。
「……そうきた、か。」
「え?」
ぽつりとこぼされた兄様の呟きが聞こえなかったので、聞き返すが、笑顔で誤魔化されてしまった。そうしてそのまま『結婚式には、招待してくれよ。それも特等席で、な』という言葉を残し、兄様は朝食を食べ終えて、帰って行った。
(BAD ENDの回避も、できた……?)
私は疑問を感じながら、緊張のあまり味がしなかったくせにしっかりと減っている朝食の皿を見つめるのだった。
「おはよう、ジュリエッタ。朝食ご一緒してもいいかな」
しかし、私の答えなどもとより聞く気がないようで、私の隣の椅子にわざとらしくドカリと腰を掛けた。
「えぇ」
私は、意味のないことだとわかりながらも了承の返事をする。その答えに兄様が、満面の笑みを浮かべた。
兄様に動揺を見せてはだめだ。彼に少しでも弱みを見せると、足をすくわれる気がする。そして、そのままBAD ENDに直行だ。
ジルベルトがキース兄様の給仕の準備もし始めた所で、兄様が思い出したように声を発した。
「そういえば、ジュリエッタ。君、婚約したんだよね」
「はい。昨日、婚約式を挙げました」
正直、ここまでいきなりストレートに切り出されるとは思わなかったので、心臓が止まるかと思った。そのまま続けられる。
「なんで、招待してくれなかったんだ?寂しいじゃないか」
本来ならば、聞きにくいであろうことを少し拗ねたような声音で悠々と聞いてくる。
そう。私は婚約式にキース兄様もジルベルトも招待しなかったのだ。この兄ならば、婚約式が終わってなければ、途中でぶち壊すことも考えられる。
だから、私はあえて、お父様に頼んで、呼ばなかったのだ。
……どう答えよう。一応、用意していた答えはあるけれど。
私は、我慢できなくなって、ちらりとキース兄様の表情を横目で伺う。
一見兄様はいつも通りに見えるが、よく見てみると瞳の奥底に冷えた色があった。
私に前世の記憶が戻ったのと、長い間共に過ごしてきた経験があるからこそわかる。それほどに兄様は隠すのが上手いのだ。
やはり、怒っている。……それもかなり。
私は恐怖で声が震えそうになるのを抑えて、努めて冷静に言い放つ。
「私も既に子供ではないので、婚約式程度に忙しいキース兄様にまで、ご足労させるわけにはいかないと思いまして」
現に兄様は、お父様の仕事を代理できるレベルで取得しているので、かなり忙しい。実際、日に日に家にいる時間が短くなってきているのを私は知っている。
「……そうきた、か。」
「え?」
ぽつりとこぼされた兄様の呟きが聞こえなかったので、聞き返すが、笑顔で誤魔化されてしまった。そうしてそのまま『結婚式には、招待してくれよ。それも特等席で、な』という言葉を残し、兄様は朝食を食べ終えて、帰って行った。
(BAD ENDの回避も、できた……?)
私は疑問を感じながら、緊張のあまり味がしなかったくせにしっかりと減っている朝食の皿を見つめるのだった。
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