私は普通の人と恋に落ちたいんです！～とんでもない乙女ゲームに転生していることに気付いてしまった件について～

３．

昨晩散々泣きはらした私はもう、ある種の悟りの境地にいた。

私の生前からの諦めの良い性格も影響していたのかもしれない。
実は私は、前世のことはゲームの記憶以外はほぼ覚えていない。例えば、自分がどのような仕事をしていてどんな死に方をしたかなど全く思い出せないのだ。ゲームの記憶だけを綺麗に思い出したというような形だ。
しかし前世の私の性格は結構諦めの良いサバサバした性格だった気がする。

そうして思いつく。

これって、ゲーム自体を発生させなければいいんじゃない！！？という天才的な案に。

このゲームは、これから一月後に新しい魔王の就任式後の二次会という何だか生々しい名目の婚活パーティーから話は始まる。

この二次会には、子供を産める年齢の上位貴族の独身且つ婚約者がいないの子息子女が半強制的に集められる。
ついでに私の持つ魔王ルートの記憶の中では、この魔王の婚約者になろうという野望の為に複数の高位貴族の女性が婚約を破棄していたはずだ。破棄された男性陣、ご愁傷さまです。安らかに眠ってください。

そして私の家は公爵家なので、このままでは参加は確定だ……。
しかし、それは私がこれから何もしなかった場合の話だ。要は、一月後には婚約者がいればいい。

私は頭の中で一気に一月後までの計画を立てる。
そうしてそのまま貴族名鑑を取り出し、未婚の男をピックアップしてゆくと同時に、お茶会のセッティングも考えながら、更なる計画を膨らませるのだった。

＊＊＊

実は私の家の両親は大して出世欲もないので、娘をわざわざ政略結婚に使おうなどという考えはない。
なので、案外簡単に私の条件に合う人間は見つかった。
条件としては大きく分けて、以下の3点だ。

①変態性癖をもった変態じゃないこと。

②他に好きな女がいるでもなんでもいいので、できるだけ私自身に無関心であってほしい。

・こちらがマウントを取れる立場の者であること（実際には隠れ蓑としてだけ使いたいので、結婚する気はないからである）。


などなど、その他いくつもの条件から絞り出していき、遂に一人の相手が見つかったのだった。

そして秘密裏にお父様に話に行くことにした。……なんだか、ジルとキース兄様にバレると、とんでもない事態になりそうな気がするからだ。
実際ゲーム内でもルート半ばで、攻略対象との関係がキース兄様にバレると、監禁ENDになることがざらにあった。
転生していると気付いてから私は気が抜ける日はない。文字通り、死と隣り合わせの生活。でもこれもあと少しで終わる……はずだ。