1 / 10
0.
しおりを挟む
始まりは突然だった。
私はある時、自分がゲームの世界に転生したのだと気づいた。そう、多くの乙女たちを恐怖に貶め、心に消えない傷を付けたあの18禁乙女ゲーム……『魔界の華は淫らに咲き乱れる~愛欲の日々~』に。
***
思い出したのは19歳のある日、なんでもない日常の中でだった。
兄の部屋に遊びに行った時のことである。兄が丁度読んでいたらしい魔界の新聞である『魔界タイムズ』と呼ばれる紙面の一面を見た時に一番大きく記載された記事が目に入った。
新・魔王エルティナ=サクリフィス様 魔王就任
その名前が脳に入ってきた時に、前世の記憶が一気に溢れて私はそのまま倒れたのだった……。
意識が醒めた時、私の目の前には私の手を握ってとても心配そうな顔で此方を見つめている兄・キースと、従者・ジルベルトがいた。
「ジュリエッタ!!目が覚めたのか!」
「ジュリエッタ様、何処か具合の悪い部分はございますか?」
前者がキース、後者がジルベルトだ。
……そういえば、この二人、一緒に住んでいるせいなのか血の繋がりなどないはずなのに似ているな。美形というのは近い顔になってくるものなのだろうか。
そんなことを思いながら私は前世で最推しだったのに最後までTRUE ENDにたどり着けなかった苦い思い出があるキャラ改め兄と従者である二人をガン見する。
あぁ、流石私の最推し達。やっぱりリアルになってもすごい美形……眼福だわ。尊い。
何も答えないくせに推しをガン見する捕食者の様な私の眼光の鋭さに一瞬たじろいだ二人だったが、私の様子が何やらおかしいと感じたらしく、医者を呼ぼうとし始めた。
それに私の思考は一気に冷静になり、事の重大さに気付いて焦る。
「お兄様、ジル。私は大丈夫です!元気です!!今のはちょっとお兄様たちの美しさにに見惚れていただけですから……ほら、この通りすごく元気です!!」
私は、ベッドから一気に起き上がり、少し不自然なくらいにアピールした。
このアピールの時に若干余計な本音が出てしまったのは、仕方がないだろう。私も興奮していたのだ。
だって、二人ともこんなにイケメンなんだよ!!?
言っちゃなんだが、私は面食いだ。だから普通に興奮しないわけがない!それにこんなにもに不自然にアピールしたのにも意味がちゃんとある。
このゲーム内で本当に体調が悪いわけでもないのに病人認定されると、とんでもないことになるフラグが立ってしまうことがあるんだもの!!……このゲームはそういうゲームなのだ。
そう。この世界は確実に18禁乙女ゲーム『魔界の華は淫らに咲き乱れる~愛欲の日々~』の世界だ。私は既に確信している。
そして私のジュリエッタという名前と兄がキース、従者がジルベルトという時点で、私がヒロインのジュリエッタ=フォルティシアであるという事実は否定のしようがない。
しかも、ジュリエッタとして生まれてからの記憶と感情もあるし……。まあどちらかといえば、ジュリエッタとして生きてきた記憶と感情に前世の記憶が薄いヴェールのように重なっているような感じなのだが、あるものはあるのだ。
そして気を付けなければならないのがこのゲームのBAD ENDだ。このゲームは、小さな失敗でとても恐ろしいBAD ENDに行ってしまうのだ。
改めて思い出してみる。『魔界の華は淫らに咲き乱れる~愛欲の日々~』略して、『マカミダ』というのは、魔界を舞台にした18禁乙女ゲームなのである。このゲーム何が恐ろしいかというと、まずはBAD ENDの多さ。シナリオライターが実はヒロインのことが嫌いなんじゃないのかという位に酷いENDが多い……というか、ジュリエッタにとって理不尽なENDしかない。
ヒロインなのに、共通ルートの時点で肉便器END、触手でイかされすぎて頭がおかしくなって廃人になるEND、急に不治の病にかかり物語の途中で死ぬEND、医者だと思っていた者が実は快楽殺人者で、それになぶり殺しにされるEND、原型が分らなくなる位に拷問されて壮絶な死を迎えるEND、酷い事故に巻き込まれて、一生植物状態なENDもあった。
そこまで考えてみて、さっきまで推しを見てテンションが上がっていた自分が一気に落ちるのを感じた。
あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ、なんでよりにもよってこのゲーム!!?確かにキャラはめっちゃ好きだったよ、いやむしろ愛していたといっても過言じゃない……ただし一人を除いてという言葉が付く。
でもさ、でもさー、このBESTENDにたどり着くのが滅茶苦茶大変な上に、その苦労したBEST ENDでもBAD ENDとほぼ変わりないようなキャラもいるマカミダ!!!?今、私の顔からは血の気が引いていることだろう。
……最悪だ。私の人生(人間じゃないのに人生かはわからないが)詰んだわ。
******
用語解説
・TRUE END……正史と呼ばれる。BEST ENDでは描かれなかったその世界の真実やキャラの本当の姿などが描かれることが多い。
私はある時、自分がゲームの世界に転生したのだと気づいた。そう、多くの乙女たちを恐怖に貶め、心に消えない傷を付けたあの18禁乙女ゲーム……『魔界の華は淫らに咲き乱れる~愛欲の日々~』に。
***
思い出したのは19歳のある日、なんでもない日常の中でだった。
兄の部屋に遊びに行った時のことである。兄が丁度読んでいたらしい魔界の新聞である『魔界タイムズ』と呼ばれる紙面の一面を見た時に一番大きく記載された記事が目に入った。
新・魔王エルティナ=サクリフィス様 魔王就任
その名前が脳に入ってきた時に、前世の記憶が一気に溢れて私はそのまま倒れたのだった……。
意識が醒めた時、私の目の前には私の手を握ってとても心配そうな顔で此方を見つめている兄・キースと、従者・ジルベルトがいた。
「ジュリエッタ!!目が覚めたのか!」
「ジュリエッタ様、何処か具合の悪い部分はございますか?」
前者がキース、後者がジルベルトだ。
……そういえば、この二人、一緒に住んでいるせいなのか血の繋がりなどないはずなのに似ているな。美形というのは近い顔になってくるものなのだろうか。
そんなことを思いながら私は前世で最推しだったのに最後までTRUE ENDにたどり着けなかった苦い思い出があるキャラ改め兄と従者である二人をガン見する。
あぁ、流石私の最推し達。やっぱりリアルになってもすごい美形……眼福だわ。尊い。
何も答えないくせに推しをガン見する捕食者の様な私の眼光の鋭さに一瞬たじろいだ二人だったが、私の様子が何やらおかしいと感じたらしく、医者を呼ぼうとし始めた。
それに私の思考は一気に冷静になり、事の重大さに気付いて焦る。
「お兄様、ジル。私は大丈夫です!元気です!!今のはちょっとお兄様たちの美しさにに見惚れていただけですから……ほら、この通りすごく元気です!!」
私は、ベッドから一気に起き上がり、少し不自然なくらいにアピールした。
このアピールの時に若干余計な本音が出てしまったのは、仕方がないだろう。私も興奮していたのだ。
だって、二人ともこんなにイケメンなんだよ!!?
言っちゃなんだが、私は面食いだ。だから普通に興奮しないわけがない!それにこんなにもに不自然にアピールしたのにも意味がちゃんとある。
このゲーム内で本当に体調が悪いわけでもないのに病人認定されると、とんでもないことになるフラグが立ってしまうことがあるんだもの!!……このゲームはそういうゲームなのだ。
そう。この世界は確実に18禁乙女ゲーム『魔界の華は淫らに咲き乱れる~愛欲の日々~』の世界だ。私は既に確信している。
そして私のジュリエッタという名前と兄がキース、従者がジルベルトという時点で、私がヒロインのジュリエッタ=フォルティシアであるという事実は否定のしようがない。
しかも、ジュリエッタとして生まれてからの記憶と感情もあるし……。まあどちらかといえば、ジュリエッタとして生きてきた記憶と感情に前世の記憶が薄いヴェールのように重なっているような感じなのだが、あるものはあるのだ。
そして気を付けなければならないのがこのゲームのBAD ENDだ。このゲームは、小さな失敗でとても恐ろしいBAD ENDに行ってしまうのだ。
改めて思い出してみる。『魔界の華は淫らに咲き乱れる~愛欲の日々~』略して、『マカミダ』というのは、魔界を舞台にした18禁乙女ゲームなのである。このゲーム何が恐ろしいかというと、まずはBAD ENDの多さ。シナリオライターが実はヒロインのことが嫌いなんじゃないのかという位に酷いENDが多い……というか、ジュリエッタにとって理不尽なENDしかない。
ヒロインなのに、共通ルートの時点で肉便器END、触手でイかされすぎて頭がおかしくなって廃人になるEND、急に不治の病にかかり物語の途中で死ぬEND、医者だと思っていた者が実は快楽殺人者で、それになぶり殺しにされるEND、原型が分らなくなる位に拷問されて壮絶な死を迎えるEND、酷い事故に巻き込まれて、一生植物状態なENDもあった。
そこまで考えてみて、さっきまで推しを見てテンションが上がっていた自分が一気に落ちるのを感じた。
あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ、なんでよりにもよってこのゲーム!!?確かにキャラはめっちゃ好きだったよ、いやむしろ愛していたといっても過言じゃない……ただし一人を除いてという言葉が付く。
でもさ、でもさー、このBESTENDにたどり着くのが滅茶苦茶大変な上に、その苦労したBEST ENDでもBAD ENDとほぼ変わりないようなキャラもいるマカミダ!!!?今、私の顔からは血の気が引いていることだろう。
……最悪だ。私の人生(人間じゃないのに人生かはわからないが)詰んだわ。
******
用語解説
・TRUE END……正史と呼ばれる。BEST ENDでは描かれなかったその世界の真実やキャラの本当の姿などが描かれることが多い。
87
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
rita
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる