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「自動追尾式の雷とかどう?この闘技場いっぱいの規模で魔法陣を展開して、魔力追尾で対象に雷を落とし続けるの」
「魔法コストを考えろ。んなもん展開したら、俺達数日は動けねえぞ。出来なくはねえけど、研究期間が圧倒的に足りない」
「えー。じゃあ攻撃系から一転、敵をマリオネットみたいに操る魔法とか?」
「……そんなもの組めるのか?」
「原理的には、身体だけだったら操れるよ。流石に精神を操る魔法は禁止されてるから、使えないけど」

私のその一言で全てが決した。
学生の誰も作った事がない、否、作れない魔法。
これできっと彼も見返せる……そこまで考えたところで疑問符が浮かんだ。私が見返したかった人って誰だっけ?
なんだかここだけ抜け落ちている気がする。最近、とても悔しい思いをした覚えがあるのに、さっきまでは覚えていたはずなのに、思い出せない。
思い出そうと思えば思う程に、霞になって消えていくような不思議な感覚。
でもなんかそこまで考えたところでどうでもよくなってしまった。忘れるということは、大したことではなかったのだろう。

私は気持ちを切り替えて、ディリアと共に魔法式の構築を始めた。

******

魔法式の構築を始めて3日。
昼はいつも通りに面白くない座学に出席して、それ以外の時間は全てディリアと魔法式の構築に充てるという生活を続けていた時の事だ。
昼を食べる時間すらも惜しいとばかりに私とディリアは食堂でご飯を食べながらも一緒に魔法式の細部について話し合っていた。

「ここにある人体の事前分析部分、周辺を全部包み込むよりも、最初に人体の範囲を魔力で計測してから範囲を収縮させた方が効率がいいんじゃないか?」
「でもそれをしてしまうと、式が複雑に――」
「……テレスタシア」
「あら、ゼルク様」

この幼馴染の研究バカをなんだか久しぶりに見た気がする。
まだ生きていたんだという軽いトーンで敬語を使いながら、名前を呼び返すが、なんだかいつものゼルクではない気がした。彼の背後では、フェリクスが頑張れと肩を叩いていた。何を頑張るつもりなのだろうか。

「様付け……いや、違うな。この間はすまなかった。酷い、ことを言ってしまった」
「え?」

何の話をしているのか全く分からなかった。そもそもゼルクの言葉が無神経で酷いことなどいつも通りだし、過去を遡って見ても心当たりがありすぎて、何を謝っているのか全く理解できない。
でも珍しく謝られているので、シンプルに考える。きっと彼は何かを考えすぎているのだろう。疲れているのかもしれない。

「よく分からないけど、別に気にしてなんていませんよ。ゼルクの言葉選びが最低――いえ、あまりよろしくないだなんてことは昔からでしょう」
「だがお前はあの時――」
「えっと……今ディリアと魔法式の構築理論について話してる途中なので、後ででも良いですか?普通になんとも思ってない話をされても正直困りますし、私達ちょっと焦っているので」

そう言った瞬間、何故かゼルクがとても傷付いたような顔を一瞬見せた気がした。
しかし、他人に全く興味・関心がないゼルクが傷付くなんてことあるわけないだろうとすぐにその考えは打ち消される。
そうして少し引っ掛かりながらも、ディリアとの話し合いを再開させたのだった。

******
あとがき:
近いうちにこの話は完結する予定です。ちょっと賛否両論ありそうな終わり方になる予定ですが……。
追記:
・ゼルクの名前の誤記載を修正しました。
・一部セリフの誤字を変更しました。
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