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私に嫌がらせをしてきた主犯格達が、魔法のせいで風が吹くだけでも怯えるようになって数日。
私はこれ以上ないくらいに快適な生活を送っていた。なにせ最近は下らない事で嫌がらせをして来た人間に対して、やられたら数倍以上のものでやり返しているのだ。彼女らも教師に訴えようにも、自分達が元々仕掛けてきている負い目があるのか泣きつけないようで無様だった。仕掛けるまでは力量の差も分かっていなかったのが余りにも愚かで、最近では可愛らしいとすら思ってしまう。
それとあれからは、ゼルクと会う度に敢えて自分から話しかけに行っている。なにせもう女子たちに目をつけられてしまったのだ。どれだけ話しかけようと同じであろう。好きにさせてもらう。
お互いまだ婚約者がいない。きっとこれは好きな人に好きなタイミングで話しかけられる最後の期間だろう。
けれど、ゼルクの方はなんだか様子がおかしかった。
前回のように話しかけてくるようなことはなく、女の子に囲まれていても助けを求めてこない。それどころか囲んでくる女の子たちのことも丸っきり無視していて、なんだか上の空の様な感じがする。
どうしたのだろう?と疑問に思ったが、少し期間が経過すれば、私から話しかけるほどの暇はなくなっていた……課題が出ているせいで。
合同授業では一度ペアを決めると、課題が与えられる。
ついでに私は既にディリアとペアを組んでいるので、私達ペアには既に課題が与えられているのだ。
他の女の子たちが騒いでたから知った事だが、ゼルクも既にあのフェリクスとペアを組んでいる様だ。それでも女の子に囲まれているのだから、なんとも哀れだと思うが。
まあでもゼルクの事だ。そんな面倒な状況にあったとしても、課題なんてきっとすぐに終わってしまうのだろう。昔から彼は実技だけでなく、座学もかなり得意だった。
とにかく私はディリアと共に課題を終わらせなければならない。それに加え、四年に一度開かれる魔導祭の準備もある。この魔導祭では、学生だけでなく、魔導士・魔術師の名家も参加し、それぞれの家の魔法を披露し合う。これは国民にも人気の行事で、私の伯爵家もゼルクの公爵家も毎年参加している。
私とゼルクの家は古くからの魔導士の家系なのだ。だから昔から面識もあったし、親同士が友人ということで昔から交流もあった。私が昔から一方的にライバル視して、ゼルクにはうざったく付きまとっていたが、もう私と彼はライバルではない。だって私はもう家を継ぐことなんてないのだ……少し前、丁度前回の魔導祭が終わった直後に弟が産まれたから。
私だってもう家を継ぐことはないと分かった時は、それなりにショックだった。だって産まれて此の方ずっと家を継ぐためだけに魔導士の修練を積んできたのだ。実のところ、一時期は両親すら恨んで、出奔してやろうかとすら思っていた。しかし色々あり、なんとか持ち直して現在に至る。
今年も私の伯爵家は参加するが、私はもう伯爵家時期当主でも、当主自身でもない。とにかく今回は、父が参加する故に伯爵家としてはノータッチである……のだが、代わりに今年は学生としては参加しなければならないので、出された課題による地獄をそれなりに味わっていた。
私はこれ以上ないくらいに快適な生活を送っていた。なにせ最近は下らない事で嫌がらせをして来た人間に対して、やられたら数倍以上のものでやり返しているのだ。彼女らも教師に訴えようにも、自分達が元々仕掛けてきている負い目があるのか泣きつけないようで無様だった。仕掛けるまでは力量の差も分かっていなかったのが余りにも愚かで、最近では可愛らしいとすら思ってしまう。
それとあれからは、ゼルクと会う度に敢えて自分から話しかけに行っている。なにせもう女子たちに目をつけられてしまったのだ。どれだけ話しかけようと同じであろう。好きにさせてもらう。
お互いまだ婚約者がいない。きっとこれは好きな人に好きなタイミングで話しかけられる最後の期間だろう。
けれど、ゼルクの方はなんだか様子がおかしかった。
前回のように話しかけてくるようなことはなく、女の子に囲まれていても助けを求めてこない。それどころか囲んでくる女の子たちのことも丸っきり無視していて、なんだか上の空の様な感じがする。
どうしたのだろう?と疑問に思ったが、少し期間が経過すれば、私から話しかけるほどの暇はなくなっていた……課題が出ているせいで。
合同授業では一度ペアを決めると、課題が与えられる。
ついでに私は既にディリアとペアを組んでいるので、私達ペアには既に課題が与えられているのだ。
他の女の子たちが騒いでたから知った事だが、ゼルクも既にあのフェリクスとペアを組んでいる様だ。それでも女の子に囲まれているのだから、なんとも哀れだと思うが。
まあでもゼルクの事だ。そんな面倒な状況にあったとしても、課題なんてきっとすぐに終わってしまうのだろう。昔から彼は実技だけでなく、座学もかなり得意だった。
とにかく私はディリアと共に課題を終わらせなければならない。それに加え、四年に一度開かれる魔導祭の準備もある。この魔導祭では、学生だけでなく、魔導士・魔術師の名家も参加し、それぞれの家の魔法を披露し合う。これは国民にも人気の行事で、私の伯爵家もゼルクの公爵家も毎年参加している。
私とゼルクの家は古くからの魔導士の家系なのだ。だから昔から面識もあったし、親同士が友人ということで昔から交流もあった。私が昔から一方的にライバル視して、ゼルクにはうざったく付きまとっていたが、もう私と彼はライバルではない。だって私はもう家を継ぐことなんてないのだ……少し前、丁度前回の魔導祭が終わった直後に弟が産まれたから。
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今年も私の伯爵家は参加するが、私はもう伯爵家時期当主でも、当主自身でもない。とにかく今回は、父が参加する故に伯爵家としてはノータッチである……のだが、代わりに今年は学生としては参加しなければならないので、出された課題による地獄をそれなりに味わっていた。
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