初恋の幼馴染に再会しましたが、嫌われてしまったようなので、恋心を魔法で封印しようと思います【完結】

皇 翼

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「……はあ、処理が面倒」

放課後。今日最後の授業の教師の近くに座っていた故に頼まれた『お願い』と言う名の雑用を完遂してきたせいで、教室に帰るのが遅くなっていた私は教室で溜息を吐いていた。

予想通りというかなんというか、ゼルクのファンの女生徒たちからの嫌がらせによって私の机は文字通り消し炭になっていた。今日持ってきていた教科書類も持ち帰らず自身の机に置きっぱなしにしていた教科書も、何一つ残らず炭になってしまっている。持ってきていたバッグなどの私物は身に着けていたので無事だったのが不幸中の幸いだ。

まあ私は座学が大っ嫌いだから問題ないと言ったら問題ないのだが、教師に怒られるのが面倒くさい。私が何をしたというのだ……。
だからこそ目立つ場所では極力ゼルクに関わらないようにしていたというのに。別に機嫌の悪いゼルクの相手が面倒だという理由だけではなかったのだ……一応は。

こういうことをしてくるから、基本的にこの学院に通っている人間はどいつもこいつも嫌いなのだ。どうせやるなら正面から堂々とくればいいものを、裏でこそこそとこういうせこい事をする。ゼルクに話しかけられた時点で、もう諦めていたから何も言うことはないが、予想通りに事を進めてきたので、犯人に対する呆れの方が大きかった。

「さて、やるか!」

私はやられっぱなしと言うのが大嫌いだ。こんなことをしてきた人間には報復が必要だよねって話。炭と化している机だったものの一部を拾い上げ、指先に意識を集中させる。

(魔力分解……解析)

魔法の痕跡を消そうとした後はあれど、完全に消すことが出来ていないなんて、魔術師・魔導士共に失格だな。こんなんで同じ学院の生徒なのだから笑える。魔導士だった時に身に着けた魔力解析をしたら、数秒経たない内に犯人を特定できた。

同じ魔術師クラスのアリーン=ストレイナー子爵家令嬢と魔導士クラスのチェルシー=デミゾイド公爵家令嬢か。両方のクラスにいた故、両クラスのほぼ全員の魔力を覚えていたのが幸いした。
基本的に魔力解析は解析後に結果と照らし合わせながらその人間を割り出すのだが、魔力の質を覚えていれば話は別なのだ。
私は座学で用語を覚えるのは苦手だが、魔力の質を人間を覚えるのは得意である。貴族として必須のスキルだから身についているのもあるが。

「ふふ、目に物見せてあげるわ」

犯人の二人が死なない程度の魔法罠トラップを彼女らの机に仕掛ける……勿論魔力の痕跡はきちんと消す。殆どの生徒がもう帰っているので、それなりに強力なものも簡単に仕掛けられる。にはぴったりだ。

きっと今、最高に悪い顔をしているであろう私の気分は今頂点にまで高まっている。明日の朝が楽しみで仕方がない。
なに、大丈夫。この椅子に彼女らが座ったら心臓が止まりそうな程に強力な電気が流れる魔法を仕込んでおいただけだ。この学院の教師、そして保険医はかなり優秀な人間達が雇われているので、問題ないだろう。
今度から、自身の机には防護魔法をかけておくために、ディリアにちょっとお願いしようと思った。
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