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壊された日常

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母様の呼び出しから数日。
私はレイに学園を辞めて、実家で婚約するということを一向に言えないでいた。怖かったのだ。言っても、何も反応してもらえないのが。……いや、きっと反応はしてもらえるだろう。ただし仲のいい昔からの幼馴染として。むしろ、私の幸せすら祈ってくれるかもしれない。だから私は正確には彼に反応されるのが怖かったのだ。やはりただの幼馴染なのだと、所詮は彼の特別な女性になどなれないのだと再認識させられるのが怖くて仕方なかった。


「イリア、一緒に昼食を――――」
「ごめん、私もう友達と約束しちゃってるから」

だから、基本的にレイと摂っていた昼食の時間も気まずさ故に全て断ってしまっていた。こんなの駄目だと思いながらも、彼と向き合うことができない……。それはもう数日間にわたって続いていた。そんなことを続けていれば、ずっと一緒にいた彼に不審がられるのも当然の話で。

「待ってくれ」
「……どうしたの?レイ」
「イリア、最近俺のことを避けていないか?」
「っ気のせいよ」

最近は、こう聞かれることも増えていた。そのたびに誤魔化すのだが、もう……苦しい。
そろそろちゃんと諦めないと……。レイに母様から言われたことを話さないと。そう思えば思う程に決意が濁り、言えなくなっていく。

迎えたこの学園で過ごす最後の一週間。
私はある決意をする。

”レイに抱いてもらって、彼を諦めよう”

正直、自分でもかなりやばい発想だとは思うが、こんな気持ちでは嫁いだとしても、絶対に幸せになんてなれない。

それに私と彼ではどうせもう、幼馴染として会える機会自体が殆どなくなるだろう。会ったとしてもこんな風に毎日ではなく、社交界でたまに会うくらいだ。
それだったら、一夜の過ち程度で抱いてもらっても問題ないだろう。きっと私はその思い出で全てを諦められる……いや、諦めて見せる。だから…………。
私はその日だけレイの幼馴染としての自分を捨てようと思う。
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