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11.
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次の日。
出勤して暫くして、職場がざわつき始める。
今日はメイは休みだったので、隣の席に座っていた同僚に何があったのかと尋ねてみれば、どうやら騎士の一人が命に関わるほどの大怪我を負ったらしい。
街の方に現れた魔物が暴れ出したのだという。今日は城にいた第二師団は元々演習の予定だったため、団長・副団長以下の騎士は訓練用の武器しか持たされていなかったのだが、急遽街に向かって対応しなければならなかった。装備を整えさせる暇すらなかったという。
まず訓練用の武器しか持っていな騎士たちは論外。だから彼らは街の住人の避難誘導に徹する。そして第二師団の団長、副団長の二人だけで魔物の相手をすることになったのだという。怪我をした騎士は団長なのか副団長なのかそれともそれ以外の者なのか……要領を得なかったが、確定でどちらかが怪我を負ったらしい。
そこまで聞いて嫌な予感がした。なにせ第二師団の副団長と言えば、あのオルフェだったはずだ。
ずっと離れたいと思っていた筈なのに、突き放したいと、彼から逃げたいと思っていた筈なのに――。
もしかしたら。
その予感だけで身体は魔導士長に一時的に仕事を抜ける話を通して、騎士団宿舎の前まで来ていた。
しかし心配になってここまで来たはいいが、オルフェのいる場所なんて知らない。なにせ彼は毎回私を訪ねてくる側だったのだ。今更ながら自分から彼の元に行ったことがないことを初めて自覚した。
入り口で悶々と悩んでいると、目の前の扉が急に開く。驚きすぎて尻餅を着きそうになるが、目の前に現れた手によって腕を掴まれたため、そんな情けない状態は何とか回避することが出来た。
「おい、大丈夫か?」
「ごめんなさい!あと支えて頂き、有難うございます」
ふわりと目の前を掠める蒼銀の髪、空の様に青い瞳は驚いたのか大きく見開かれていた。
「……別に構わない。見た所王宮魔導士のようだが、この宿舎の誰かに会いに来たのか?」
「っええっと、はい。あのオルフェウス=ノーツグリアっていう人に。その、ちょっと確認したいことがあって」
宿舎内から出て来たこと、そして見覚えのある紋章があしらわれた制服からして、彼はきっと騎士団の人間なのだろう。丁度良いと考え、早々に誰に会いに来たのかを明かす。少しでも早く彼の無事を確かめたかったこともあるのかも知れない。
「ほう……お前まさかエルカって名前だったりするか?」
「そう、ですが。それが何か?」
「なるほど。お前が奴の――」
何故自分の名前を一発で当てられたのかと驚きながらも、その言葉を肯定する。彼は考えるように顎に手を当てながら、ぶつぶつと何かを呟く。彼の言う奴というのはもしかしたらオルフェの事なのかもしれない。そう考察しながらも、彼が口を再び開くのを待った。
「よし。お前を今からあの男の部屋に連れて行ってやろう」
出勤して暫くして、職場がざわつき始める。
今日はメイは休みだったので、隣の席に座っていた同僚に何があったのかと尋ねてみれば、どうやら騎士の一人が命に関わるほどの大怪我を負ったらしい。
街の方に現れた魔物が暴れ出したのだという。今日は城にいた第二師団は元々演習の予定だったため、団長・副団長以下の騎士は訓練用の武器しか持たされていなかったのだが、急遽街に向かって対応しなければならなかった。装備を整えさせる暇すらなかったという。
まず訓練用の武器しか持っていな騎士たちは論外。だから彼らは街の住人の避難誘導に徹する。そして第二師団の団長、副団長の二人だけで魔物の相手をすることになったのだという。怪我をした騎士は団長なのか副団長なのかそれともそれ以外の者なのか……要領を得なかったが、確定でどちらかが怪我を負ったらしい。
そこまで聞いて嫌な予感がした。なにせ第二師団の副団長と言えば、あのオルフェだったはずだ。
ずっと離れたいと思っていた筈なのに、突き放したいと、彼から逃げたいと思っていた筈なのに――。
もしかしたら。
その予感だけで身体は魔導士長に一時的に仕事を抜ける話を通して、騎士団宿舎の前まで来ていた。
しかし心配になってここまで来たはいいが、オルフェのいる場所なんて知らない。なにせ彼は毎回私を訪ねてくる側だったのだ。今更ながら自分から彼の元に行ったことがないことを初めて自覚した。
入り口で悶々と悩んでいると、目の前の扉が急に開く。驚きすぎて尻餅を着きそうになるが、目の前に現れた手によって腕を掴まれたため、そんな情けない状態は何とか回避することが出来た。
「おい、大丈夫か?」
「ごめんなさい!あと支えて頂き、有難うございます」
ふわりと目の前を掠める蒼銀の髪、空の様に青い瞳は驚いたのか大きく見開かれていた。
「……別に構わない。見た所王宮魔導士のようだが、この宿舎の誰かに会いに来たのか?」
「っええっと、はい。あのオルフェウス=ノーツグリアっていう人に。その、ちょっと確認したいことがあって」
宿舎内から出て来たこと、そして見覚えのある紋章があしらわれた制服からして、彼はきっと騎士団の人間なのだろう。丁度良いと考え、早々に誰に会いに来たのかを明かす。少しでも早く彼の無事を確かめたかったこともあるのかも知れない。
「ほう……お前まさかエルカって名前だったりするか?」
「そう、ですが。それが何か?」
「なるほど。お前が奴の――」
何故自分の名前を一発で当てられたのかと驚きながらも、その言葉を肯定する。彼は考えるように顎に手を当てながら、ぶつぶつと何かを呟く。彼の言う奴というのはもしかしたらオルフェの事なのかもしれない。そう考察しながらも、彼が口を再び開くのを待った。
「よし。お前を今からあの男の部屋に連れて行ってやろう」
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