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手を繋いで、湖の畔を歩く。表面上はまるで恋人の様に……とは言っても恋人などいたことがないし、外から恋人同士に見えてるかの保証も出来ないが。
そして私の内心は荒れに荒れていた。なにせ今現在進行系で関係のないことに巻き込まれているのだ。しかも悪い事もやっていないのに牢獄に入れられそうになっているのを回避するためという意味の分からない理由で。
「本当、厄介なことに巻き込んでくれやがりましたね」
「でもやってくれるんでしょう?なにせ僕ら、恋人ですもんね!」
ポツリと小声で独り言のように呟いた言葉にオルフェが反応してくる。返し方ひとつにもイライラする男だ。巻き込んでいることに対してお礼や謝罪の一言すら言えないのかと呆れた。
「そうね。恋人、だもの!」
「っ――」
繋いでいる手を引き寄せ、そのまま思い切り力を込める。痛かったのか表情を若干歪ませている彼を見ると、心がスッと晴れる――のを感じたその瞬間、まるで恋人同士だと言い合うタイミングを計っていたかのように水面に水柱が出現した。……今の行為で恋人同士だと認められたのだとは思いたくない。
「ッセイレーン」
甲高い声で泣き叫びながらいくつもの水の弾丸を打ち込んでくるその異形。オルフェが咄嗟に口に出したその名称、セイレーン……一見女性のような姿だが、その体躯は人間の数倍はある。その時点で人間ではないのは明白だが、耳は貝殻の様なものがついており、瞳も金色、そして足も人間と違い一本の尾びれで形成されているところも異形の色を強めていた。
美と恐怖が交じり合ったようなその存在。
その美しさに瞳を奪われる。その恐ろしさに足が竦む……。
「エルカさん!!ぼさっとしないでください」
「!!」
いくつもの水球を叩き斬りながら、声を掛けてくるオルフェによって意識が呼び戻される。
相手の姿形に完全に圧倒されていた自分をなんとか奮い立たせて、一番得意な風の魔法を放った。かまいたちの様にセイレーンの手元に浮かぶ水球を一気に落としていく。
オルフェも同様に周囲に浮かぶ水球を魔法や剣によって撃ち落としていた。
「ヴォアアアアアアァァ」
身体から魔力が漏れ出し、咆哮が痛いくらいに鼓膜に突き刺さる。先程とは似ても似つかない醜く歪んだ形相でセイレーンは更なる水球を作り出し、此方を仕留めようと打ち込んでくる。
一つでも当たったら、無事ではいられないだろう。その緊張感の中で向かってくる水球を切り刻んだ。
「……一つ提案に乗っていただけませんか?」
「内容に、よるわね」
「悪いものではありませんよ。貴女の魔法を見込んでの提案なので」
セイレーンの攻撃に対応しながら聞いたその作戦は事実悪いものではなかった。オルフェがセイレーンの気を引き誘導している間に、私が湖全体に結界を張ってその中に風のフィールドを作り出す。
そして最後に彼がフィールドの中に最高火力の炎を送り込み、セイレーンを湖ごと焼き尽くす。少々乱暴な方法ではあるが、今のままそれぞれで水球を撃ち落としていたのでは埒が明かないのも事実。だから彼の方法に賭けてみることにしたのだった。
「では、行きますよ」
その掛け声と共にオルフェは敢えてセイレーンの気を引きに行く。火球をぶつけたり、剣で敢えて水球を打ち返してみたり……魔獣に対して伝わっていないだろうに煽り文句を口にする姿には若干呆れたが。
けれどそうして一人で囮になってくれたおかげでかなり魔法の構築も進んだ。後は術を放つだけ……となる直前、セイレーンがふとした弾みにこちらに視線を向けた。
人間とも獣とも言えない瞳が此方を見つめる。恐怖に体中の毛が総毛立つ。その巨大な尾を払うことによって攻撃を仕掛けようとしてきた……筈だった。しかしこちらに向かってきていたソレは目の前で止まり、私は大きい背中に護られていた。
今度は剣でセイレーンの尾を受け止めているオルフェと目が合う。頷く彼に後押しされて、魔法を放った――。
そして私の内心は荒れに荒れていた。なにせ今現在進行系で関係のないことに巻き込まれているのだ。しかも悪い事もやっていないのに牢獄に入れられそうになっているのを回避するためという意味の分からない理由で。
「本当、厄介なことに巻き込んでくれやがりましたね」
「でもやってくれるんでしょう?なにせ僕ら、恋人ですもんね!」
ポツリと小声で独り言のように呟いた言葉にオルフェが反応してくる。返し方ひとつにもイライラする男だ。巻き込んでいることに対してお礼や謝罪の一言すら言えないのかと呆れた。
「そうね。恋人、だもの!」
「っ――」
繋いでいる手を引き寄せ、そのまま思い切り力を込める。痛かったのか表情を若干歪ませている彼を見ると、心がスッと晴れる――のを感じたその瞬間、まるで恋人同士だと言い合うタイミングを計っていたかのように水面に水柱が出現した。……今の行為で恋人同士だと認められたのだとは思いたくない。
「ッセイレーン」
甲高い声で泣き叫びながらいくつもの水の弾丸を打ち込んでくるその異形。オルフェが咄嗟に口に出したその名称、セイレーン……一見女性のような姿だが、その体躯は人間の数倍はある。その時点で人間ではないのは明白だが、耳は貝殻の様なものがついており、瞳も金色、そして足も人間と違い一本の尾びれで形成されているところも異形の色を強めていた。
美と恐怖が交じり合ったようなその存在。
その美しさに瞳を奪われる。その恐ろしさに足が竦む……。
「エルカさん!!ぼさっとしないでください」
「!!」
いくつもの水球を叩き斬りながら、声を掛けてくるオルフェによって意識が呼び戻される。
相手の姿形に完全に圧倒されていた自分をなんとか奮い立たせて、一番得意な風の魔法を放った。かまいたちの様にセイレーンの手元に浮かぶ水球を一気に落としていく。
オルフェも同様に周囲に浮かぶ水球を魔法や剣によって撃ち落としていた。
「ヴォアアアアアアァァ」
身体から魔力が漏れ出し、咆哮が痛いくらいに鼓膜に突き刺さる。先程とは似ても似つかない醜く歪んだ形相でセイレーンは更なる水球を作り出し、此方を仕留めようと打ち込んでくる。
一つでも当たったら、無事ではいられないだろう。その緊張感の中で向かってくる水球を切り刻んだ。
「……一つ提案に乗っていただけませんか?」
「内容に、よるわね」
「悪いものではありませんよ。貴女の魔法を見込んでの提案なので」
セイレーンの攻撃に対応しながら聞いたその作戦は事実悪いものではなかった。オルフェがセイレーンの気を引き誘導している間に、私が湖全体に結界を張ってその中に風のフィールドを作り出す。
そして最後に彼がフィールドの中に最高火力の炎を送り込み、セイレーンを湖ごと焼き尽くす。少々乱暴な方法ではあるが、今のままそれぞれで水球を撃ち落としていたのでは埒が明かないのも事実。だから彼の方法に賭けてみることにしたのだった。
「では、行きますよ」
その掛け声と共にオルフェは敢えてセイレーンの気を引きに行く。火球をぶつけたり、剣で敢えて水球を打ち返してみたり……魔獣に対して伝わっていないだろうに煽り文句を口にする姿には若干呆れたが。
けれどそうして一人で囮になってくれたおかげでかなり魔法の構築も進んだ。後は術を放つだけ……となる直前、セイレーンがふとした弾みにこちらに視線を向けた。
人間とも獣とも言えない瞳が此方を見つめる。恐怖に体中の毛が総毛立つ。その巨大な尾を払うことによって攻撃を仕掛けようとしてきた……筈だった。しかしこちらに向かってきていたソレは目の前で止まり、私は大きい背中に護られていた。
今度は剣でセイレーンの尾を受け止めているオルフェと目が合う。頷く彼に後押しされて、魔法を放った――。
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