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第17話 ハンカチを差し出すのは紳士の嗜み
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「九角くんって、気が利かないって言われない?」
どの位時間が経ったのだろう。
不意に顔を上げた円詩子がオレに向かい文句を言い出した。
「言われるよ」
昔、お袋に何度か小言を言われた記憶があるので指摘自体は間違っていないのだろう。
「やっぱりね。普通、あれだけ女の子が泣いていたら『大丈夫だよ』とか『ボクがついている』とか声を掛けて、ハンカチを差し出すのが紳士なのにね」
そう言うと円詩子はオレが首にかけていたスポーツタオルを抜き取り、自身の涙を拭った。
「そういうのはイギリス男に任せるけど、一応は覚えておく」
「それに、勘違いしないでね。九角君の前では泣いてばかりいるけど、あたしは本来、強いのよ。当然、泣き虫でもヒステリーでもないわ」
強い事は肯定。だが、後の全てを否定したいのは、オレがイギリス男より、女性を見る目が無いからだろう。
「それも一応は覚えておく」
「九角君はこれからどうするの?」
確か円詩子は、自分に付き合いなさいと言っていた気がするが、ココは紳士的に指摘しないようにしよう。
「取敢えず、ホテルに行く」
「えっ!?…… ホ、ホテル!? あたしと? 」
「他に誰がいるんだよ」
「そんな急に言われても・・・・・ 」
「急だからだよ。宿泊先、決まってないだろ?」
「えっ!? 泊る所? ・・・・・・あたしの? あっ…… うん。決まっていない」
「取敢えず、さっき電話でお隣のシティーホテルを2泊3日で借りておいた。シングルなら安いし、商工会とお隣のよしみで格安にしてくれるらしい。構わないか?」
「あ…… はい。構わない。ありがと」
「さすがにウチに泊めるわけにもいかないからな。飯くらいならウチで喰うのは構わないけど、お袋と親父がいない時間にしてくれ。質問攻めにはされたくないだろ? 」
「あっ、それは・・・・・・ はい」
「じゃあ、行くけど荷物はこれだけか?」
「…… はい」
オレは顔を真っ赤に染めている円詩子の荷物も担ぎ、お隣さんである「ホテル仙波屋」へと向かった。無論、彼女が何を勘違いしたかは、分かっているがソコはジャパニーズ紳士として、気がつかないフリをしておく。
どの位時間が経ったのだろう。
不意に顔を上げた円詩子がオレに向かい文句を言い出した。
「言われるよ」
昔、お袋に何度か小言を言われた記憶があるので指摘自体は間違っていないのだろう。
「やっぱりね。普通、あれだけ女の子が泣いていたら『大丈夫だよ』とか『ボクがついている』とか声を掛けて、ハンカチを差し出すのが紳士なのにね」
そう言うと円詩子はオレが首にかけていたスポーツタオルを抜き取り、自身の涙を拭った。
「そういうのはイギリス男に任せるけど、一応は覚えておく」
「それに、勘違いしないでね。九角君の前では泣いてばかりいるけど、あたしは本来、強いのよ。当然、泣き虫でもヒステリーでもないわ」
強い事は肯定。だが、後の全てを否定したいのは、オレがイギリス男より、女性を見る目が無いからだろう。
「それも一応は覚えておく」
「九角君はこれからどうするの?」
確か円詩子は、自分に付き合いなさいと言っていた気がするが、ココは紳士的に指摘しないようにしよう。
「取敢えず、ホテルに行く」
「えっ!?…… ホ、ホテル!? あたしと? 」
「他に誰がいるんだよ」
「そんな急に言われても・・・・・ 」
「急だからだよ。宿泊先、決まってないだろ?」
「えっ!? 泊る所? ・・・・・・あたしの? あっ…… うん。決まっていない」
「取敢えず、さっき電話でお隣のシティーホテルを2泊3日で借りておいた。シングルなら安いし、商工会とお隣のよしみで格安にしてくれるらしい。構わないか?」
「あ…… はい。構わない。ありがと」
「さすがにウチに泊めるわけにもいかないからな。飯くらいならウチで喰うのは構わないけど、お袋と親父がいない時間にしてくれ。質問攻めにはされたくないだろ? 」
「あっ、それは・・・・・・ はい」
「じゃあ、行くけど荷物はこれだけか?」
「…… はい」
オレは顔を真っ赤に染めている円詩子の荷物も担ぎ、お隣さんである「ホテル仙波屋」へと向かった。無論、彼女が何を勘違いしたかは、分かっているがソコはジャパニーズ紳士として、気がつかないフリをしておく。
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