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第12話 車の中は静かである方いい
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映画やドラマなどで、友人が事故にあった知らせを受け、病院にたどり着くと、そこには既に昔の仲間が数人いたりするシーンをよく見かける。
だが、現実的にはそれぞれが仕事や家庭を抱えている為、そう簡単に集まる事は出来ない。ましてや、病院のオペ室の前に控える事など、不安な気持ちで待っている家族に余計な気を使わせる為、遠慮するべきであるのは当たり前の事だ。
さっきからコレについて、散々、円詩子に説明しているのだが、まるで分かってもらえない。
だいたい、正樹が少し前にメールで知らせてくれた続報を読む限り、事故も車との軽い接触で尻餅をついた程度なのだ。
「友達なんでしょ! すぐに病院に向かうべきだわ」
いつも携帯をいじりながら友人と楽しそうに話をしていた五十里優梨子の姿が思い浮かぶ。
「だから、今すぐ向かうのは迷惑になるんだよ。怪我も大した事なさそうだってメールをキミも見ただろ? それに何よりキミを病院に連れて行くわけにはいかないよ」
「馬鹿にしないで! 何もあたしも図々しくアナタの友達に紹介して貰おうなんて考えていないわ! 病院の隅で待っている事位、心得ているわ」
頭の回転は悪くないのだろうが、どうにもこのヒステリーを起こすと周りが見えなくなる所は勘弁してもらいたい。
「自分が今どういう服装なのか分かって言っているのか? 」
ようやく動き出した車の列。アクセルを踏み込みつつオレは出来るだけ静かにそう告げた。
「・・・・・・ ここで、あたしを降ろせばいいじゃない」
顔を赤くしつつトーンダウン。少しは冷静になったのだろう。それに一応は喪服で病院に行くと言う事がどういう意味なのかは分かっているらしい。
「キミを駅で降ろしたら、仲間と連絡を取りつつ動くつもりだよ」
「だったら、ショッピングモールで降ろして」
「はぁ? 」
「急がなくていいのは分かったわ。だから、ショッピングモールに行きたいの。あるでしょ、ショッピングモールくらい」
おそらく、光木茜音と同じように長期の海外留学をしていたのだ。ある程度、お嬢様なのは分かる。だが、この言動・・・・・・
「買い物なら、家に帰ってからにしてくれ」
「家に帰る? アナタ何を言ってるの? 今から電車で横浜になんて帰ったら、7時を回るわ。それじゃあ時間の無駄。だからショッピングモールに行くんじゃない」
今の言葉で分かった事と言えば、コイツの実家が横浜にあると言う事くらいで、あとはさっぱり意味が分からない。
「面倒を掛けるつもりはないわ。モールの手前で降ろしてくれるだけでいい。降ろしたらアナタは直ぐに五十里さんの所に向かって」
既に十分面倒だが、本人が大真面目に言っているうえ、気を使っているような気配まで見せているため、下手にツッコミを入れる事が出来ない。どうやら、少しズレているらしい。
「山をひとつ越えた所に、『オリオンモール』ってのがある。そこで良いか?」
オリオンモールまではココからなら抜け道を使えば20分もあれば着くことが出来る。時間的にも適当なハズだ。
「構わないわ。それとさっき、アナタの携帯に私の連絡先とメールアドレス入れておいたから、何かあれば連絡を頂戴」
多分、コレにも突っ込んだら負けなのだろう。オレは黙って頷いた。
「ドライブに音が無いので寂しわね。ラジオ入れてもいいかしら?」
「遠慮してくれ」
「なぜ?」
「車の中が煩いのは苦手なんだ」
「・・・・・・ そう。ならいいわ」
あっさり諦めてくれた事に驚きながらも、オレは右にウィンカーを出し、海を背にして『オリオンモール』に続く抜け道へと車を飛ばした。
だが、現実的にはそれぞれが仕事や家庭を抱えている為、そう簡単に集まる事は出来ない。ましてや、病院のオペ室の前に控える事など、不安な気持ちで待っている家族に余計な気を使わせる為、遠慮するべきであるのは当たり前の事だ。
さっきからコレについて、散々、円詩子に説明しているのだが、まるで分かってもらえない。
だいたい、正樹が少し前にメールで知らせてくれた続報を読む限り、事故も車との軽い接触で尻餅をついた程度なのだ。
「友達なんでしょ! すぐに病院に向かうべきだわ」
いつも携帯をいじりながら友人と楽しそうに話をしていた五十里優梨子の姿が思い浮かぶ。
「だから、今すぐ向かうのは迷惑になるんだよ。怪我も大した事なさそうだってメールをキミも見ただろ? それに何よりキミを病院に連れて行くわけにはいかないよ」
「馬鹿にしないで! 何もあたしも図々しくアナタの友達に紹介して貰おうなんて考えていないわ! 病院の隅で待っている事位、心得ているわ」
頭の回転は悪くないのだろうが、どうにもこのヒステリーを起こすと周りが見えなくなる所は勘弁してもらいたい。
「自分が今どういう服装なのか分かって言っているのか? 」
ようやく動き出した車の列。アクセルを踏み込みつつオレは出来るだけ静かにそう告げた。
「・・・・・・ ここで、あたしを降ろせばいいじゃない」
顔を赤くしつつトーンダウン。少しは冷静になったのだろう。それに一応は喪服で病院に行くと言う事がどういう意味なのかは分かっているらしい。
「キミを駅で降ろしたら、仲間と連絡を取りつつ動くつもりだよ」
「だったら、ショッピングモールで降ろして」
「はぁ? 」
「急がなくていいのは分かったわ。だから、ショッピングモールに行きたいの。あるでしょ、ショッピングモールくらい」
おそらく、光木茜音と同じように長期の海外留学をしていたのだ。ある程度、お嬢様なのは分かる。だが、この言動・・・・・・
「買い物なら、家に帰ってからにしてくれ」
「家に帰る? アナタ何を言ってるの? 今から電車で横浜になんて帰ったら、7時を回るわ。それじゃあ時間の無駄。だからショッピングモールに行くんじゃない」
今の言葉で分かった事と言えば、コイツの実家が横浜にあると言う事くらいで、あとはさっぱり意味が分からない。
「面倒を掛けるつもりはないわ。モールの手前で降ろしてくれるだけでいい。降ろしたらアナタは直ぐに五十里さんの所に向かって」
既に十分面倒だが、本人が大真面目に言っているうえ、気を使っているような気配まで見せているため、下手にツッコミを入れる事が出来ない。どうやら、少しズレているらしい。
「山をひとつ越えた所に、『オリオンモール』ってのがある。そこで良いか?」
オリオンモールまではココからなら抜け道を使えば20分もあれば着くことが出来る。時間的にも適当なハズだ。
「構わないわ。それとさっき、アナタの携帯に私の連絡先とメールアドレス入れておいたから、何かあれば連絡を頂戴」
多分、コレにも突っ込んだら負けなのだろう。オレは黙って頷いた。
「ドライブに音が無いので寂しわね。ラジオ入れてもいいかしら?」
「遠慮してくれ」
「なぜ?」
「車の中が煩いのは苦手なんだ」
「・・・・・・ そう。ならいいわ」
あっさり諦めてくれた事に驚きながらも、オレは右にウィンカーを出し、海を背にして『オリオンモール』に続く抜け道へと車を飛ばした。
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